ルドルフ | ナノ


カインと同じ時間を過ごすことが多くなって、お互いのよりが近くなった。そしてまた時間を経て、サメラがカインの部屋に入り浸るようになって、最終的にサメラが時間の無駄から、なんていう申し出を経てサメラとカインは同じ部屋で暮らすようになった。3年で出ていくと言っていた彼女がバロンで骨を埋めると決めた事にバロン国王夫妻はこの世がよりよいものに生まれ変わるのを知ったかのようによろこんでいた。

「カイン、茶が出来たぞ?」

お前が飲みたい。と言ったから沸かしたんだが?控えめなノックをしてから、サメラはそう声をかけた。二人の共同の寝床でカインは安らかな寝息をたてていたのを確認した。自分の発言ぐらい守れ。とサメラはぶつくさ呟いてから、部屋に入る。
今までの旅の那かでサメラはカインの目覚めがよいことを知ってるので、声を上げたのだがどうも疲れきっているのかまだ目が覚めない。

「どうした?具合でも悪いのか?」

ずんずんとベッドサイドまで詰めよって、カインを揺さぶるために改めておい。と声をかけた刹那、閉じられていた青が開きサメラの腕をつかんで引き寄せた。一瞬バランスを崩したタイミングを突いて、カインは空いていたもう片方の手でサメラの腰に手を回して寄せて、自分の腹の上に跨ぐような形をとった。薄いシーツ越しに感じる腹筋の揺れにサメラはそっと眉をしかめた。

「起きてたのか?」
「お前が部屋に入る前からな」
「質が悪い。」

ぎろりと薄青の瞳がカインを射抜く。大戦の時でもないので、その瞳に鋭さもない。見下ろすことはあれど、見上げることはなかったな。とカインが思った瞬間、ふと脳裏にカインの腹の上で淫靡に踊る姿が一度描かれた。描かれてしまっては脳裏からなかなか離れることはなく、きっと脳裏に描く以上の反応を見せてくれるのではないかと、カインは考える。

「カイン。どうした?反応が鈍いが。」

戦時中でもないので、小手もつけてない小さな手が薄いシーツ越しにカインの腹の上に乗る。きょとんとしたような顔で、サメラがカインを見つめる。カインは一度小さく笑ってから、サメラの首の後ろに手を回して引き寄せて、空いた手を頭に伸ばし、長い銀の糸を耳にかけ直してから、サメラの耳にきちんと届くように小さく囁く。
きちんとその意図を察したのか、火を起こしたように真っ赤になったサメラを見て、カインの欲が、むくりともたげた。

「…あ……火を、…火を、一旦止めてくるから…あの、その…待ってくれ。」
「待つか。」

どうせ釜戸なら、薪がなくなれば勝手に消える。
いまだに慣れない反応をして、つたなく言葉を吐き出すサメラをカインはそのまま自分の腕の中に閉じ込めて、カインはサメラの額に唇を落とす。

ー食べるならお前を食べたい。
サメラの耳元で囁かれたテノールの音が言葉として認識するのにはそこまで時間はかからない。


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