ルドルフ | ナノ


「…あいつ?」
「確か…名前は…ゴルベーザ…だったかな。」

何年か前に、に名乗った名前はそうだった。ぽつりと呟いて、ギリギリ手を握る。力を込めすぎて震えている。

「君もゴルベーザと関わりが?」
「…私が、断ったから……。」
「何を断ったんだい?」
「…傘下に入れと。」

断るから悪いのだ。とゴルベーザが。戦闘の集団も、ああまで形無しだとは…。唇を噛み締め、己の無力をただただ感じて、怒りに任せ太ももを叩く。

「戦闘の集団…もしかして、あなた。銀色の武神事変?」

振られた話題に、そんな名前もついてたな。と呟き銀の彼女は口を開いた。

「サメラ…サメラ・ルドルフだ。」

垂れた銀のお陰で片目は見えないが、きっとどちらの眉にも皺を抱えているだろう、とセシルは感じて手近な方から名前を連ねる。

「その姿…バロンの兵だろう…キャラバンが全滅したのか確認しに来たのか?」
「僕らはゴルベーザからクリスタルを守る為に戦ってる。良かったら、君も一緒に守らないかい?」

ゴルベーザにもいつかたどり着く。一人でいるよりも随分いいと思うんだ。それに僕らも、君みたいな人が居てくれたら心強いしね。

「そうだな…そうしよう。」
「本当、サメラ!」
「ああ。」

悲しく笑うサメラが、仲間の顔を拝んでくると席を立ち、一緒に行ってもいいかい?というギルバートの提案に首を縦に振って二人は森の中に消えた。

「サメラ、消えちゃいそう。」
「じゃあリディア。サメラが帰ってきたら隣に居てくれる?」
「うん。」

リディアは首を縦に振りローザの手伝いに奥に走っていく。「なんだか。嫌な予感がするな。」ぽつりと呟くセシルの声をローザはしっかり捉えた。

「なんだか、噂と全然違う人みたいね。サメラ」

大刀を持った銀色だとしか具体的な噂を聞いていたけど、まさか同い年ぐらいの子だなんてね。困った風に笑うローザは夜餡したくしてくるわね。と残し、奥にリディアを追いかけるように向かって行った。

夜の闇の中でセシルは、ぼんやりと先の事を考えていた。ファブールの後はどうやってトロイアに向かっていこうかと。迷ったらまた、旅慣れしている彼女に問いかけてもいいのかもしれないな。と頭の隅に追いやって、セシルは火の番をし始めた。


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