ルドルフ | ナノ


一通りのあらましを聞いて一旦青き星に戻るまで解散となった、手持ちぶさたとなったサメラは、若い世代に連れられて最奥にある訓練場で体を動かしていた。

「さすがだよな、姉ちゃん。」

懐に飛び込んでくるパロムを叩き落として、アーシュラの回し蹴りを交わして、プロムをひっくり返してやるとセオドアが足を狙ってくる。軽やかなステップで踊ってやれば、遠くでポロムが終わりを告げた。

叩き落とした者を拾い上げて、ケアルを施しながら骨折等ないかを簡素に確認を行いながら、姉ちゃんまた強くなってねーか?とポロムが言うので、否定して茶を飲むかと提案しだした頃にドアが開いてゴルベーザが入ってきた。

「どうしたんです?」
「甘味が出来たと連絡が来たから、伝えに来た。食べてこい」

ほらいけと若い世代の背を押して、部屋にはゴルベーザと二人になった。さて、どうするかとサメラは思慮を一巡させたが、恐らく兄弟としての関わりなんて、もしかすると金輪際とれないような人。であって、このやりとりをどうしようかとあぐねいた。居心地の悪さに、気付いてかゴルベーザが行かないのかと投げるので、適度にはぐらかす。

「昔、お前にはお前たちには悪いことをしたと思っている」

捨てたことであろうか。それとも、一度バブイルで会った時か。ふむと考えて、そんなに気にてないことを伝えるが、どうも納得していないらしい。だが、と言う様子がセシルと似ていて、昔をふと思い出した。

「……セオドール。だったか。」
「なぜそれを、知っている。」
「森の賢者ティンクトゥラが残した記憶を先の大戦でバルバリシアと見た。」

森の賢者は、ずっとセオドールを心配していた。セシルを連れ出して、その後を追いかけれども私を救って、探したらしいが見つからなかった。と嘆いていた記憶だけは見た。もう、二度と見れないあの人は、酷く誰にでも優しい森の守り手であった。

「たぶん。きっとの。だけれども。」

其れがなかったら、私もセシルもセオドールもこうして会うこともなかったんだろう。と思うと、私はこれでよかったと思っているし、それでいいと思ってる。私は、世界が救われてセオドールがどこかにいてセシルもどこかで頑張っている方がいいと思う。

「サメラ。」

これは、セシルにも言ったんだが。
罪は背負うもんだが、背負いすぎるのもまた、一つの罪だ。人間何かを殺めないと生きていけないんだぞ。知ってたか?負う負わないは自由だが、言うぞセオドール。殺めたやつの分もお前は生きろ。人間は命を貰って生きてるんだからな。
……まぁ、考えるもどうするも自由だが、私はセオドールに思ったままに生きてほしいな。と告げて、サメラは席を立つのであった。


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