ルドルフ | ナノ


サメラと触手の間に誰かが入り追撃を捌く、その隙に大丈夫ですか?と小さな騎士が駆け込んでくる。

「サメラさん、無事ですか?ケアル要ります?」
「大丈夫だ。問題ない。」

小さな騎士の目に見覚えがあった。酷く身内に似た目をしていて、大きくなったな。と呟いて、立ち上がる。その声が聞こえてたらしく、え?と少年が音を落としたが、サメラは気にすることもなく、戦場へ走る。

「パロム、プロム。ファイガ行くぞ。」

好機ともつけるタイミングに近くにいた魔導師たちに声をかけて、同じタイミングで魔法をねじ込むことを伝えて、武器を振り回しながら口上を唱える。
行くぞ。のタイミングにあわせて、三方向から赤い矢が飛ぶ。灼熱魔法よりかは劣るが、三連でねじ込むことを、考慮すれば十二分な魔法となって、戦場を燃やす。
爆発する触手をふりきって、止めとばかりに走れば、セシルと見慣れない姿の騎士と獣の皮を被った女と四人で脳天から切り込むように叩きつける。
この一瞬、サメラは不思議な感覚に陥った。強制的に止めることも出来ない映像が、叩きつけるようにサメラの中に流れ込んできた。暴力的な数による映像の流れに、気持ちが悪くなってサメラは小さくうめいて、四人の中でも真っ先に刃を納め、一瞬にして創造主と距離を開く。ざり。と音をならして、ブレーキをかけると、異変を察知してかローザが寄ってくる。

「サメラ、大丈夫?」
「一瞬、違う世界が見えた。」
「起きたばかりなんだから、無茶しないで。」

わかってる。と答え、映像の気持ち悪さが抜けないまま、よたりとたちあがり顔を上げると、騎士たち三人の手によって、創造主が何かを吐き出して崩れ落ちた。

どさり。と大きな物質の落ちる音を聞いて、誰かが終わったの?と呟く。音が虚しく、部屋に響く。沈黙の中に、わずかにからりころりと音がして、獣の皮を被った女が真っ先に隣の騎士を付き倒した。刹那上から人よりも二回りほど大きな石が、降り落ち、地面がなり、どこかからともなく、ぱらりと砂が落ちてくる。

「この星が崩壊する、みんな一旦逃げよう。」
「セシルさん。マラコーダさんが!」

あれは、過去の記憶だ。とプロムに黒衣の男が言い含めて黒衣の男がプロムをつかんで走り出す。……自分の理解力の範疇を越えて、自分の耳を疑う。今、あれはマラコーダといったか?ん?と首をかしげていると、何をしている。と金の髪をもつ騎士が訝しげな目をしながらも、サメラの手をつかんで走り出す。
十年以上も疎遠にしていた仲間の顔が変わっていて、サメラの記憶の中に、こんな知り合いはいなかったと考えながら、地上に向かうために走り出す。


×