キャラバンを放り出されと、二年が過ぎた頃。 通った道は確かに、聞いたとおりだった。ふらりと寄った街の酒場で、キャラバンがサメラを探していると聞いて、団長からのサインだとも思った。 だからサメラはその後を追いかけた。聞いたとおり話だと昨日から森の隅で野営をしていると聞いた。団長が呼んでるならば行くしかないとサメラは思い、足を向けていた。が、急に空が轟々と音を立て赤く裂いた。 行く先が赤く弾けていることに嫌な予感がしてサメラは駆け出した。 脳裏で誰かが警鐘を鳴らす。行くなと本能が叫ぶが、行かなければならない方向であり、すべて杞憂であれと願う。 最後の木を抜けたら、そこは絶望的だった。 赤く発ぜる木々と粉々の馬車荷引き用の馬まで倒れ、黒く焦げた塊が転がる、その真ん中に、黒の魔人がいた。魔人は気配を感じてかこちらを向いた。その魔人に見覚えはあった。闇夜に似た色の鎧を身にまといその鎧に金を走らせた色彩は、前に傘下に入れと言ってきた男だと、すぐに気がついた。 「…お前…」 「武神事変久しぶりだな。」 「うちのキャラバンに何をした。」「お前を手に入れる為、にだな」 「…っ……」 荷物袋の底から、武器を取り出した。背中の大刀を地面に突き刺して、魔人と距離を測る。目測10メートル。力をつけるために背負い使ってきたが、元来私の戦い方でない。 分厚い刃のダガーを突きつけて久方ぶりの重さを懐かしむ暇なくサメラは駆けた。 魔人から繰り出された魔法を足場にしてサメラは飛び、武器を上から振り下ろした。 鎧と刃が当たり火花散り、ギチギチと力が混じる。視界の隅で光を感じてサメラは、魔人と距離を取った。足が地に着いた瞬間に炎が見えたので、地面に冷気が爆発するアイテムを叩きつけ、炎と相殺を測る。 「その戦闘力はやはり素晴らしい。」 その声にサメラの肌は粟立ち、武器を抱えなおして、魔人の様子を窺う。呪う文言は、魔法のものだと把握して、何が飛んでくるのかと、サメラは魔人の手のひらを見つめた。 魔法により闇夜の彩りの球体が膨れ上がり、弾けると同時に視界が世界と確率された。氷の中に落とされたかのように身動きが取れなくなりサメラの意識がそこで途切れた。 前 戻 次 ×
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