ルドルフ | ナノ


まぁ色々と怒涛だった。
キャラバンの団長から旅に出ろ。なんて言われて荷物一式押しつけられてサメラは荷物一つでキャラバンから放り出された。
こんな状態なのに、さてこれからどうしようと考える前に魔物を狩り、ミシディアに帰り旅の支度を始めよう。と算段がついた。なら迷うことも必要ない。

ゆっくりとした足取りでサメラは馬車と間逆を歩き出した。食料はなんとか最低限ある。どうせ一人だ。ゆっくり行けばいい。空は青々と澄み渡り。遠くで魔物が鳴いている。荷物の底に幼い頃に貰った武器が入っているし、力をつけるための大刀もある。戦う事にも慣れ、何が来ても驚く事もない気がする。度胸はキャラバンで培われ舞台で鍛えられている。愛嬌はないが。

大丈夫だと言い聞かせサメラは歩き出した。ミシディアを経てどこに行こうかとぼんやり考えながら。

「ミシディアからファブールに向いて、それから路銀を稼いだら暫くは生活出来るかな…」

変な建物にさえ入らなかったら大体生きれると変な自信を持ち歩き続けた。


そして彼女は、道々でよそのキャラバンの守り手をしたり、魔物を猟り、強さを求め、旅をした。行く先を決め、キャラバンを渡り歩きしていたら、噂だけが一人歩きして、大刀を持つ銀が、鉄壁の守りを働き、武が革命を起こしたかのように窮地を逆転させると、尾鰭がついて尾鰭に噂と嘘が混じり武神事変だなんて名前がついた。

一つ一つ戦うための力をつけて、サメラはふらりと世界を旅した。
偶々寄ったエブラーナでエドワードと鍛錬し、ミさまよいたどり着けたシディアで幼い双子の魔導師に会い、色々な土地に赴いて、たまに異端のキャラバンの名前を聞いて彼らが生きてる事に安堵する。戦う為に世界を転々てしているとも、聞いたので気が気でなかったが。きままな一人旅を続けていたら、サメラに訪ね人が現れた。

どういう意図か解らぬが、サメラを己の傘下に入れて、武力の強化を試みているらしい。
キャラバン以外に入るのも、どこかに組するも群れるつもりもなかったので、サメラは丁重に断りを入れたが、その選択が世界の物語を紡ぐ一つのかけらだと、誰も気付く事はない。


どこかでクリスタルはただ沈黙を保ち、静かに光を放つ。
世界は今から目を覚ます。




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