ルドルフ | ナノ


まずは、装い。銀の髪では目立つし、一発でばれる。そんな状況で、全く学のない頭をフル稼働して、サメラが取れた手段は一つ。姿かたちを変えてしまうこと。芝居で培った演技力をフルに活用して、そうするしかない。と判断するのであった。夜の間に銀の髪を赤色に近い茶の色に染めた短いカツラをつける。芝居でも使っていたので、だいたいの手入れやらはわかる。家族でわかる銀は世界にひどく少ないのは、世界を回ったサメラが一番知っている。だからこそ、無難な色を選んだのだった。

「いいか、プロム。私は、サメラに雇われた女だ。名前は…ルドルフは使えないからなぁ。」
「ラルフローレン…いや、ラルフ。とか、どう…ですか?」

じゃあ。それでいこう。サメラの信用にたるラルフ。それでいこう。いいな。と念を押して、サメラ…もといラルフとプロムのダムシアンに向かう旅を始める。壁のそばで、立っていれば飽きた頃にはプロムを連れてダムシアンを去ろう。トロイアからダムシアンに向かうには時間がかかるので、ファブールから山越えをしたほうが早そうだとサメラが判断を下す。できる限りいろいろ回って魔物のラーニングをするのが都合がいいし、まとめて行っておけば何度も山越えをする必要もなくなる。サメラ自体が誰かに会う必要もないので、ダムシアンにプロムを送ってから、ほとぼりの冷めた頃にこっそりつれてかえればいいか。とサメラは思慮にふけながらも、様々なことに思慮する。
例えば武器。あのときに見せた大きな刀は一目見れば恐らく誰か解られる。言葉は、どこかの地方からを真似ればいいか。と思いながらも武器をどうするか。ひどく悩む。ファブールで武器を新しくしよう。ついでにふくよかな神の鳥にでも荷物を全部預け入れればいいかと判断して、着るものも武器も一新しようと決める。なにせ鋭い奴ばかりだ、ばれたら一気に撤収しなければならない。それだけはしっかり言い聞かせないといけない。やることが多いとため息をつきながらサメラもといラルフはもうすぐ見えてくるであろう海と同じぐらい広大なため息をつくのだが、プロムは気付かずに、嬉しそうにサメラの回りを跳び跳ねていた。

「ね、ラルフ。さん。」
「なんだ?」
「…なんでもない。」
「パロムたちに会うのが心配か?」

それもだけど。会えば、サメラさんとの旅が終わりそうな気がして…。そう言い淀むプロムは、そこで足を止めた。三歩前でラルフも同じように足を止める。確固たる意思の瞳がラルフを見つめる。

「来たいなら来い。私は止めないし、好きにすればいい。」

一人よりかは、話し合いがいれば多少は気が紛れる。誰が来ても受け入れるし、去るものは追わない。それが、異端だ。まぁ、去るものは亡き者だけだったがな。これを聞いてお前はどうしたい?サメラについていきたいか?答えはすぐには要らない。ダムシアンを出てからでも決めなさい。ゆっくりと考える時間はあるし、助けが欲しいなら、いつでも言えばいい。

「それが、大人の仕事だからですか?」
「あぁ、そうだ。もうすぐ日も暮れる。急ぐぞ。」

一年前より大きくなったプロムを抱えあげてサメラは歩くスピードをあげ、二人は飛び乗るようにファブール行きの船に飛び乗った。


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