ルドルフ | ナノ


先の大戦から、しばらくたって、世界を回っていたサメラとプロムはトロイアに落ち着いた。森もあって景色がいいのと魔物もそこそこ強いこと、そして青魔法の技術取得、ラーニングをするべき魔物が多いことが、選んだ理由でもあったのと、おぼろげな記憶の中の母と共に過ごしていたのは、こんなような森だったというかすかな記憶も要因として組み込まれている。そこで、魔物を倒し、そこからさまざまなものを回収し、不定期的に狩った魔物を売るために町に下り、食料や生活用品と交換したりして、つつましやかな生活をしていた。
ふと気持ちを切り替えるためにか、森を離れ少し先の王国トロイアに立ち寄って、森の野草で作った薬を売る交渉をしている間に、サメラは一つの噂を耳にした。店の旦那が金子をとってくるというので、その話にサメラは耳を傾けていた。

ダムシアン城が、復興し、世界各国の王やその関係者が集まるんだってさ。うわーすげーバロンやミシディアも来るの?そうだって、なんか長老と世界各国の王の知り合いが集まる会合が開かれるって噂だぜ。豪勢な飯とか食べるんだろうな!
そっと近くにいるはずのプロムを見てみると、店に陳列している商品に興味があるらしく、そちらにべったりと張り付いている。噂話は、そっと違う話になっていてそんなころには店主の旦那も奥から顔を出してきていた。おまたせしました!と人当たりのよさそうな笑顔を撒いているその人に、日常の会話に混ざるように投げかけてみる。

「今、さらっと聞いたんだけれども、ダムシアンでなにかあるのか?」
「ダムシアンの城がようやく元通りになったみたいでね、うちの神官様も御呼ばれしてるみたいだよ。」
「へぇ。バロンも…ねぇ。」
「ま、バロンもセシル王になってから鎖国みたいな状態もぬけたみたいですし、ダムシアンの復興に力を貸していたみたいですよ?」

あのお人よしは。と小さくつぶやくと、店主がいったん聞き返してくるので、なんでもないと断って、金子を受け取る。これだけあれば、しばらくの買い物もできるだろう。と判断してから、少し離れたところにいるプロムを呼びつける。はっとした様子で、我に返ったプロムはショーケースから顔を離して、返事をして駆け寄ってくる。

「何見てたんだ?」
「あの杖、パロムのに、似てて。」
「いるのか?」
「今の杖があるから。大丈夫です。」

その杖が小さくなったら考えようかね。と返事をして、行くぞ。と声をかけて店を出る。噂をしていた人たちは、さっきとは違う話題を離していて、話のタネに尽きないやつだな。と思いつつ、トロイアの城下町を歩く。

「ダムシアン、覚えてるか?」
「えっと…カイポの国でしたっけ。」
「…まぁ、似てるからいいけれど、まぁそんなかんじのところだけれども。」

今度、みんなが一度に集まるらしいんだが、プロム。お前はみんなに会いたいか?と問いかける。先の大戦からまだ一年だけれど、まだミシディア近くにもよらず、淡々と世界を巡っているだけだ。その道中で、カインと同じ仕事をしたのは最近の記憶だったりする。が、それは今どうでもいい。そっと視線を下に落とすと、少し迷った顔をしながら、プロムはえっと…と言葉を選んでいた。

「お前はお前の思ったことを言えばいい。」
「それをかなえるように手伝うのが、大人の、役割、ですか?」
「そうだな。大人の仕事だよ。」

ぐりぐりと頭を撫でてやれば、照れた様子で、小さく行きたいです。と言ったのを聞き逃さなかった。行くかと、サメラは言うが、でも、サメラさん。大丈夫なんです?僕、ミシディアを出るときにプロムは預かったって書いたんですけれど…。
その様子にサメラは驚いて、頭を撫でていた手を止める。たしか、ミシディアを立つときに文字の書けないサメラがプロムに「旅に出る」とだけ、書いてもらったはずだが。

「仕方ない。手を打つか。」

小さくこぼした言葉をプロムが聞き逃さず、やった!と喜ぶ。どうやら、この子も、パロムと間違いなく兄弟だな。と痛感した瞬間でもあり、帰宅した瞬間にさまざまなことを思い浮かべて、サメラは頭を抱えた。


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