ルドルフ | ナノ



そんなこんなを経て、彼女の声が出るようになってまた一つ年を経る。
そんなこんなの記憶を団長は問いかけたが、持ち合わせてはないらしく、そんなことあった?と笑うも、時稀に寂しそうな表情を浮かべ、落ち込んだようにも見える。
が、落ち込んでは居られない。生きるために、戦い、料理、商売、覚えることはまだまだ有るが、毎日楽しそうにサメラは生きている。

野に入り草を得て薬に変え。
薬を売り芸を嗜みて金を得。
生きる為に魔物を刈尽くし。
幼き様に似合わぬ名を得る。

「サメラ、団長。」
「…なぁに。」

団長とサメラは肩慣らしの戦闘を繰り広げつつもあなたはダルそうに返事をする。戦いの手は止まらない。

「そろそろ止めにしないと、今日中にエブラーナに着かなくなるわよ」
「ん」

短い目の返事を一つし、サメラはグッと団長の懐に踏み込み顎を蹴って二人の間に距離を開けた。それが一区切り。というように、副団長が終わりを知らせ、サメラは武器を収めて馬車を操舵する団長の横にちょこんと腰を据えた。

「そういえば。お前とは随分一緒にいるなぁ」
「だね」

あん時は、お前も随分ちぃこかったんだがな。いまじゃこんなに大きくなって。頭を無理くり撫でられサメラは不満げに唇を尖らせていたら、右手側の茂みが風もないのにざわついた。
首を傾げ、うごめくそこを見ていた。団長もそれに気が付いたらしく馬車を止めて、伺おうとした刹那、森から魔物と人が飛び出した。
クアール種がしなやかに駆けて獲物として人間を襲ってるのがすぐに伺え、サメラは躊躇いもせずに飛び出した。

「おい、サメラ。」

背丈ぐらいの大刀を取り出して駆け出した。足掛けしやすそうな木を見つけ、ひょいひょい上がり、木のしなりと体中のバネをつかいサメラは空を駆けるかの如く跳びクアール種の背中に刃を突き立てた。

キャンと泣いたクアール種に躊躇うことなく、手荷物の瓶をクアール種の額で叩き割る。瓶の液体が空気に触れると、小さな火が立ち上がりクアールを焼き焦がした。
まだ動くクアールの首を叩き切って、サメラは息をついた。

「サメラ、無事か?」
「平気」

団長が駆け寄ってくるのも放置し、追われていた人影を見る。白でも銀でもない雪色の髪をした少年が口を開く。

なぁ。お前強えんだな。俺を弟子にしてくれよ!



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