団長の裾を掴んだサメラはただ下を向いてだんまりを決め込んでいた。しばらくしないうちに森を抜け町が見えてきて、人の姿を見えるようになる頃に団長は町の空気が違うと悟った。 でてけ。 どこかで誰かがつぶやいたのを団長は聞き逃さなかった。そんな音を口火に、次々に音を紡ぎ、小石が飛ぶ。 投げられた石がサメラの額を切った。だらりと滴る赤にサメラはただ住民を見つめた。 「森の魔女の娘がまだ生きてるのかよ。」 「死んだんじゃなかったの?」 「…魔女の娘せいで森が…」 「魔女の娘が生きてるから魔物も活発に…」 「魔物は魔女の娘が…!」 昔と同じ言葉が飛ぶ。額の痛みが冷静さを呼ぶ。ギリリと唇を噛んで、ただ耐える。手段として耐えることしかサメラは知らない。 「魔女は死んだのに、娘は生きてるのかよ」 それを聞いて、サメラは我を失った。背後で囁く声に従うように、サメラの中にストンと落ちた。 …コロセ…村ヲ…コロセ… 「…ちが、う…ちがう、の、おかあ、さんは…っ…ち、がうのぉっ。」 隣から、少女とは違う声が聞こえた。確認するように視線を下ろせばサメラが、やっと前を向いたかと思うと一気に駆け出して、跳んだ。猫のようにしなやかな跳躍をしてサメラの倍の背丈をした大男を蹴り倒した。 右手に宿る黒を見て団長は直ぐにその黒が魔法の性質だと理解し、制止の声を張り上げた。 「サメラよせっ」 まるで四足の獣のように低く唸るサメラに、まるで取り付かれたような気迫さえも感じ取れ、団長は持ち歩いていた大刀のミネでぶっ飛ばしてサメラを気絶させることができた。 「…魔物のようだ…!出ていけ!今すぐッ、この町から、二度と来ンな。」 「魔女の娘なんてサッサとくたばれよォっ」 出ていけと連呼される中団長は、サメラを抱え大刀を背負いなおした。投げられてくる石を大刀で凪落として、一回吠えた。 吠えにおののいた村人達の視線は団長に集まり、団長は低い声で再度吠えて、ニタリと笑いまた吠えてから、笑い低く通る声で言った。 群れて弱い人間共よ、今は 今は、出てってやるが、バケモン怒らせたら怖いのを身を持って知らせてやるからな。ガタガタ震えているがいい。 覚悟しろ。 前 戻 次 ×
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