演舞 天の川にかける思い 3 





とりあえず、ぼくの城。ともいえる録音室。ここは防音にもなっているので、四六時中音を鳴らしていても問題はない。小さな部屋でおおきなぼくの世界。そこでぼくは一通り楽器の練習をしていると、人形遣いがぼくのもとにやってきた。口早に理論を展開して帰ってったんですけど、まぁ見事に嵐のように言葉を吐きますねぇ。怖い怖い。書類一式をぼくにおしつけて、さっさと人形遣いは帰っていきます。珍しくぼくの体調も確認することもなくつぶやいて消えていきました。…はたから見たら怖い人に見えるのがどこか愉快にも思えますね。おおきな音で扉が閉じられて、無音が耳に痛いですね。仕方ないので、手近なメトロノームで拍を刻みつつ耳が音を拾いすぎるのをある程度抑えて、慣れたころに手渡された書類に目を通す。書類は生徒会に恐らく提出しただろうと思われるもののコピー。そこにしたためられてたのは、今回の【七夕祭】で使う演目の一覧でありました。思ったよりも難しいパートもありますがまぁやれないことはないですね。だてに長いことぼくのこえのように振り回してませんからね。しっかり丁寧に録音して、ぼくも合流しなければまたあの癇癪持ちはどう変化するかわかりません。ですから、ぼくは二重にも三重にも保険をかけておくのです。

「央兄ィ!」
「録音中です!侵入は許しません!」

だとか、いろいろありますけど、音に余計なものは乗せたくはないですからね。入ってきたばかりのみかに何時には戻る。と連絡を入れて時間のかかる録音を再び行います。音さえとってしまえば、あとはタイミングとミキシングですからね。…このあたりの話は難しいですから、今回は横に置きましょう。
楽曲をCDに焼き落として、部屋を片付けてから録音室を出れば、目の前には人形遣いの幼馴染とばったり出会いました。お互い足が止まりましたが、すぐに彼は口を開きました。

「おお、朔…晦か。」
「似てるといってごらんなさい。煮て食ってやりますよ。鬼龍くんや。」
「怖いこというよなぁ。顔に似合わず。」
「えぇ、比較的根本は血なまぐさいほうなので。」

止まっては通行の邪魔だと声を掛けましたが、彼とぼくはどうも同じ方向なので、この会話を歩きながら続けていきます。
あれが浴びなかったものはぼくが浴びるのですよ。ふふん。と笑いながら言ってのければ。お前は案外暴力に頼るほうなんだな。と驚かれた。ぼくは暴力をふるいませんよ。傷つけるのは精神的な方によりますけどね。

「そもそもぼくには替えがあるので、多少荒事をしても問題ないのですよ。」
「アイドルがそういうことを言うんじゃねえよ」
「替えの替えを務めたことがあるので、大丈夫ですよ。ぼくは中途半端に討伐されてるだけなので。いくらでも交代はできるんです。」

案外しぶとく強いのですよ。ところで、話をもどしましょうか。めずらしいですね、このあたりをうろつくだなんて。
ぼくの城は比較的人通りのないところにある。小さな音ですら集まれば騒音となるからこんな場所にあるのだと思っていますが、あまり人の歩かないこの場所で知っている人だからこそ、珍しく沸いた興味に投げかけてみむしたが、本当に通りがかっただけのよう。…ぼくの気にしすぎでしょうけれどね。まさか録音室に入って録音機器を故障させるとかになれば、大問題でしょうしね。学院の備品ですし。

「猫にはいくつも命はあるようなので、鬼に食わせたってって不思議ではないでしょう。」
「もうちょっと自分を大事にしてやれっての。」
「君に言われたくないですね。」

ぼくの目的地へ向かう曲がり角で、あちらなので。と断って、彼と別れて部室に戻れば、まだぶつぶつつぶやいている人形遣いが見えました。まだ終わってない様子なので、ぼくは一度休憩としていつもの指定寝床からタオルケットをもって日当たりのいい場所に移動します。太陽はそこまで嫌いでもないので、時折こうしておきます。基本的に血行の巡りも悪いぼくなので、こうしておくことである程度体調を無理に整えるのです。…真夏にもこうするので、よく驚かれるんですけど。太陽にあたらなければぼくはたまに体調を崩すんですよね。まぁ熱中症間際までいくので、人形遣いには怒られるのですが、まぁ集中してますから気づかないでしょうね。起きて練習したらまた情報を集めなければなりませんね。ある程度、人形遣いの動向を抑えなければいけませんしね。
そろそろまた晦の家が、朔間さんの情報を寄越せと言ってきそうだと思い浮かべながら、眠るためにうつらうつらしてたのですが、人形遣いが煩くて目を覚ましました。睨んでもぼくに気づきはしないので、ぼんやりと人形遣いを観察するとみかが帰って来たので、そのままぼくたちは練習になるのですが、まぁ人形遣いが煩いこと煩いこと。先ほどのやつあたりもついでにおこなっておきました。どうも気づかれてない様子。



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