玉響、逢魔ヶ時ライブ 3
残り6日。
時間は限りあるのと比例してぼくの体調は悪くなるばかりだ。サプリメントの残りも少ないが飲むと悪循環をもたらすので、こまりものだ。相変わらず血の気のない顔なのだろう。廊下をすれちがう人々の顔がそう物語っているので、ぼくはそっと人気のない道を選んで歩くことにした。体調のよろしくないぼくは、廊下の途中で目を回りだす。貧血気味らしく、倒れないように壁に手をついて一旦地面に座り込んで息をしているとぼくに誰かが呼び掛けた。
「央兄ィおった!!」
「みか…ですか?」
「みかですか?じゃないねん!」
声色に怒気を持っているけれども、ぼくはそれをも交わす余力がない。なにに怒ってるかも判別がつかないので、ぼくは黙ってみかの話を聞く。
「なんで、『Valkyrie』辞める言ったん!」
ちょっと話が飛躍してませんか?ぼくは辞めるつもりなんてないのですし、次のライブ以後出れないと言っただけで。辞めたくはないですよ。ぼくだって続けていけたらどれだけいいのでしょうか。口にする前に思考する。彼の縁にある鳴上くんは凛月さんと同じユニットであることを思い出して、やめます。
「人形遣いに聞きましたか?」
「せや、お師さんから聞いたわ!なんでなん?おれらになんかあった?」
子どもがだだをこねるかのようにぼくに詰めよってみかは問う。あなたたちには非はない。むしろ問題があるのはぼくのほうだ。
「なにもないです。悪いのはぼくですから、すべて押し付けて嫌いになってください。それで構いません。」
居なくなるならば、その陰を恨んでもたどり着くことはない。ただ罪と言う服を押し付けてくれればいいと思います。物理的に会えないひとになるのですから。それでいいんですよ。
「なんでなん……なんでなん央兄ィ、あんたも…最低や!!」
決められてしまったから。ですかね。そう伝えるのも伝えれずに、みかは走り去ってしまった。みかの背中を目で追いなが、残りの日程をぼくは、彼らや朔間さん凛月さんの幸せのために残していこうと思うことにした。録音もそうですけども、音はいずれ廃れる。ですから、彼らを助けるように周りがいてくれるように頼むだけですけど。
今までなにもできなかったぼくから、貴方たちにぼくなりの返礼のやり方です。
「さて、6日ですから。残りの時間に余裕はないですね。」
さて、どうしましょうか。あまり働かない頭を働かせながら、ぼくはぼんやりと宙を見つめる。なにから始めようだとか頭のなかでこねくりまわして行動予定をたてる。まぁ、音源が最優先ですけど、あれらにどうやって渡しましょうかねぇ。だなんて悠長なことを構えながら、ぼくはとりあえずここにとどまっても仕方ないですから、これからまた録音部屋にでも籠ろうと決める。
「ワルキューレはきっとぼくを救ってはくれないでしょうけれどね。」
戦わないのですから、拾われることもないのですよ。そんなぼくが『Valkyrie』をやってるなんて可笑しい話ですよね。
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