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事実から言おう。俺が逃げた事実は、心が折れたからだ。夢ノ咲の同じ隊の先輩に。夢なんてここでなくなった。この名前を借りて遊んでいる連中と、俺が一緒の箱に入れられるのが嫌だった。いじめと言えば聞こえはいいがほぼほぼやられてることはリンチや私刑と一緒だった。殴る蹴る。も多少。そうだ。思い出すだけで吐き気がする。そんなゴミ箱みたいな環境で、キラキラしてるのを見るのも辟易していた。いいや、吐きそうだった。っていうか吐いた。クソみたいな環境で息してると俺のメンタルがぶっ壊れそうだったから逃げた。一年たてばあれらは卒業する。ついでに持って俺は二年をやり直すことで接触の可能性だって減る。俺の卒業後はだいたいスタントやアクションで食っていくつもりなのだが、保険のために大学は行きたいと親にも伝えてるので進路もほぼほぼ確定、高校は今年で終わりにするという約束で大学なので、今年かなり勉強をしないといけないことが確定している。
なので、俺はあんまりアイドル活動しないぞ!って心に決めてたのだが、まぁキラキラして夢を持った守沢千秋が今年になってまた人を振り回しだした。…ついでに俺も巻き込まれた。最強の歩く兵器みたいな三毛縞を連れて俺の部屋に入り込んできたのだ。
まぁ今。AV室の大掃除を一日やって、疲れすぎて昔を思い出している訳なんだけど。まぁ大掃除でアクションフィギュアやDVDがでるわでるわ…いや、大体千秋の私物だったので俺は全然悪くない。

「有!大好きだぞ!」
「うっせぇ。コレが終わったら終わりだから、勝手に遊んでろ!」

もうすぐセンターだから俺も殺気立ってるのに掃除だなんてなにいってんだよ。って俺はすでに千秋の頭を叩いてるので俺の人生のルート数度目。千秋にも誰にも言ってないので知っているのは教師たちぐらいで。漏れない情報には感謝している。
千秋は変なテンションだし、奏汰は其処まで使い物にならないので俺が人2倍ほど働くことになる。一年は一年で別のところをお願いしてたので、あれなんだけど。俺の労働割合多くね?俺はひたすら黙々と清掃してたら写真が一枚出てきた。

「…これ…あんときじゃねぇかよ。なんであるんだよ。」

今とメッシュの色が違う頃の俺が苦しそうに笑ってる。よくよく見ると、メッシュの近くに生々しい傷が一つ見えた。…俺が流星隊から逃げる直前だろう。ふと見ていると写真が逃げて行った。

「一之瀬先輩何見てるんですか?そろそろ帰りますよ。…ってこれ一之瀬先輩ですか?」
「そだよ。」

俺の答えが気になってか一年生たちが俺の写真を見ている。黒メッシュ!?っていう声が鉄虎から聞こえたので、俺は昔ブラックだったけど名ばかりだったから被ってないから安心しろ。俺にその色が付いたのも休み始めてからだし。と言えばそうだったんスね。と眉尻を下げた。

「追加の白の方が楽だからいいんだけどね。白っぽい銀色の髪の毛に黒なんて目立つし。これぐらいがちょうどいいから黒貰ってくれてありがとう。」
「いや、オレそんな…」
「有っ!愛してる…ぞぉっ!」

抱きしめる前に俺は見事に反撃に成功する。というか動くのも面倒なので半身ずらしただけなんだけど。ほんと今の環境が不思議な感じ。一年前の千秋と俺の関係もだいぶ違うのでどうしていいか解らないんだけど。なんでこうなったのか、俺にも未だよく解らない。
たまたま同じユニットに入った。俺が先にいじめられていた。むしろ暴力でサンドバックだった。それで怪我をした。それで知り合った。それだけだ。
あのお人好しは俺に会うたびに付きまとわれた。そうだったなと思い出していると、こどもたちをおくるのでいきますよ。と俺は奏汰に引きずられる形で俺は外に連れ出された。難しい顔してたのかなにかんがえてるんですか?なんて言われたが、俺は適当にごまかして思考を過去に飛ばすのだった。

千秋との初めての出会いというのは、何度か殴られてる場面に遭遇したからだ。先生こっちですよ!と言う声を出していじめているやつが消えた時だった。大丈夫かと起こされたが殴られた痛みで俺は荒事には多少慣れてるからなんて適当に返事をしてその場を去ろうとしたら怪我してるだろ。と言われた。知らない顔だったので足早に去ろうとしたら、もしかして一之瀬くんか?と俺の苗字を言い当てた。そんなことに驚く。どうも彼は、アクションスタントの人と同じ苗字と言う事で覚えてたらしい。荒事とスタントを一緒にされて俺は一度怒鳴って去った。これが千秋との初めての会話だった。
それから彼は何度もしつこく声をかけて来た。俺は今と変わらず飛び降りやらで逃げたりすることをしていた。上の言う事は絶対だなんて俺は思ってない。それは、父親や祖父の仕事場を何度も見ているからだ。何度も話し合っていいものをつくるというのはそういうことであって、上からねじ伏せることではない。これで終わるならば、と思ってずっと俺は絶えることにした。一年。一年さえ過ぎれば終わるのだからと耐えていると、問題は起きた。
空き教室に投げ込まれた俺は、運悪く机の角で頭をぶつけた。古ぼけた机だったのか思いっきりいったので、血が止まらなくてそれにビビった先輩たちは慌てて逃げてった。ポケットの中に入れてたハンカチで傷口を抑えるが、血が止まる気配がない。どうするかと考えてたら、教室のドアが大きな音を立てて開いた。音にビビッて俺は一瞬飛び上がったのだが、一之瀬くん!と言われて、その主がいつもの彼だと気づく。俺は彼の名前も知らないので、何と呼べばいいかはわからない。俺が戸惑っている間に、ほら保健室!と俺を保健室に叩き込んだ。

「俺、スポーツドクターなんだけど。」
「額だからそこまで深くないですし、生え際なんで…ただ転んで打ってしまっただけなんで。」
「それでもだ。お前もアイドルの卵なんだから。もうちったぁなんとかしな。」

俺の膝を叩いて、俺の額の治療を始める。横に長い傷なのでテーピングテープを一つ貼って、俺に病院へ行こうと促す。俺を連れてきた彼が、

「守沢。あきやんに連絡してくれ。」
「はい。じゃあなりくん。」
「……えっと、守沢くん?じゃあね?」

佐賀美先生によって病院につれていかれて、俺は五針縫うほどの傷を手に入れた。無理やり保健室に連れ込んでくれたのが良かったな。って父親が笑ってた。どうやら聞くところによると、傷口を見た感じヤバかったらしい。
無駄に守沢に借りができてしまった。が、相変わらず守沢は。俺に怪我はないか傷はどうだと会うたびにつきまとう。……やっぱり借りすぐに、返そうかな。なんて思ったがそこからしばらくして、俺が守沢にこの借りを返すのだった。



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