5e






衣装合わせから始めたけど、千秋のテンションがめちゃくちゃ五月蝿いので俺たち四人で必死に押さえ込みながら色々あったが俺も急いで着替える。白黒の色彩を反転したもの。背中にメンバーカラーラインを入れている。細身の剣から、流星錘。重りの付いた鎖を使う。動きのベースはカンフー下敷きにしてるけど、俺の家がスタントやってるお陰である程度の動きは押さえているので、そっちから横流しと鉄虎仕込みの拳法を混ぜて見映えも良くしてる。最後に一度通しのリハーサルをして舞台袖に立つ。ちょっとわくわくしてて、またこうしてステージにたてるのが巡視にうれしいと同時に不安を覚える。撮影と一緒だと自分に言い聞かせて、気力を震わせる。
音楽が流れ出して、みんなでステージに飛び出せば俺のテンションは上がっていくのを感じる。大降りなアクションを行いながら視界の端で千秋がマイクに叫ぶ。

「俺は流星レッド!守沢千秋」
「あっ、いちおう名乗りはするんスね?省略してもいいのに〜」
「仕方ないって、レッドだもん。ほら、次々」

えーとか言うなよ。とマイクに入らないように囁いて、鉄虎が忍、奏汰と続いて翠が名乗りをあげるので俺もあげておく。

「流星ホワイト、一之瀬有っ。楽しんでって〜」
「無駄口は叩くな!気合いを入れ直せ!有!ぼけ〜っとしていて勝てる相手じゃないぞ!」
「わかってるって。相手が『Trickstar』だからってテンション上がってない?」
「そんなことはないぞ!そんなことは」

そんなことあるって。俺はケラケラ笑いなながらステージをかける。壁を蹴ってぐるりと一回転。軽い流星錘なので勢いよく風を切る。着地と同意に錘を短めに持ってポイのようにして振り回す。遠心力でスイッチが入ってうっすらと光を放つ細工も済んでいる。ついでに縦もやったので横にも回る技をかけて、パフォーマンスをしていく。千秋も嬉しそうに明星たちを煽っているので俺は笑いながら体を動かせる喜びを身体中で表す。最近試験勉強ばっかりだっtので、これだけ思いっきり体を動かせるのは気持ちがいい。忍とタイミングを合わせてバク転を転回しつつ俺は最後に手をついて反動で高く飛び上がり回転数を降るに回す。成功して忍とハイタッチ。ちょっとやりすぎたかもと忍の体力面を伺いつつ次のやつは威力減らすぞ。と声をかけて俺の出力をあげておく。長い間ステージに立っている必要性もあるのだ。調整する。
威力を減らした分思ったよりも距離が短くなったので、近くの遊木の肩を借りて軽々とその上を飛び越える。遊木はビビってたけど、観客が沸いたので問題ない。

「一之瀬くん!」
「ごめんな、方向がそれちまったよ!怪我ないか?」
「ないよ!」
「んなら良かった。」

平然と嘘をついて、そのままメンバーの元に戻る。司会進行の日々樹の音が入り出したので、俺達の戦いのゴングが鳴る。勝敗を決めるのは観客だし、俺は周りを見ながら動いていくだけだ。千秋も様子がよさそうだし、三年はほっといていいだろう。それよりも気にしておくべきは一年かな、と俺は思う。今日は朝からばたばたしていたので、千秋が来るタイミングと昼飯ぐらいしか休憩がとれてない。俺はべつに慣れてるからいいんだけど、問題はやはり一年だと思うので、目を光らせている必要はあるだろう。そんなことを考えながら、俺は与えられている仕事を順番にこなしていく。

「有。」
「なに?千秋。」
「俺と奏汰が居ない間、本当にありがとう!一年生たちの成長率がすごい」

俺は別になんもしてないよ。そういえば、お前は大体横にいただろう?逃げてた有が真面目に向かってたんだ、それだけで成長だよ。そういわれると、過去の罪が顔を出した。ステージ上なので表情を崩してはないが、内心は複雑だ。逃げていた俺が、褒められるなんて思っていない。僅かに表情を歪めていると
千秋は笑って俺の背中を叩いて「『Trickstar』の面倒も見たんだろう?自信を持て」なんてマイクに入らない様に声をかけてくる。俺は呆れてると有はやってくれると信じてた。と言い切る千秋のまっすぐさに俺はがっくりとうなだれる。

「俺は省エネルギーで生きてるの。いいから、ほっとけ。お前は楽しめ」
「痛い!今全力で叩いただろ。」
「なんのことだかね。」

平然としらをきって翠の方に逃げる。千秋のターンが来るのでしばらくは俺もゆっくりできるってわけ。ど?って聞くと返事は普通に帰ってくるので、まだまだいけそうだと判断する。しっかり端っこまで伸ばしておかないと変に目立つぞ。釘を刺せば、うげぇ。と声を出されたので。俺はそうなるわなぁ。と俺も思って苦笑い。目の前に明星と衣更たちが飛び込んでくるので、俺と奏汰で蹴散らす。

「ほわいと〜」
「あんがと。ブルーいえー。はいピースピース。」

近くのカメラに向かって奏汰と二人でピースサインして二人で肩を組んで二人で笑う。今回千秋のお守りあんがと。と伝えれば、まいにちたのしかったです。と言ってるのでまぁ、これはこれでよし。ちらりと忍を見ればステージの反対側でしんどそうに顔をしてるのが見えた。「おっと、忍がやばそう。ちょっと見てくる」と動き出そうとしたら、奏汰に腕を掴まれた。どうした?と聴けば奏汰はにっこり笑って俺の唇に指をあてた。黙って見てろってことか?一瞬眉間に皺を寄せてしまってあ、今ステージだと思い出して表情を作り替える。

「だいじょうぶですよ〜。なりだけがせおうひつようはないですよ。」
「背負ってないよ。目の前のことを順番に片づけるだけだし。」
「むりはだめですよ。」
「わかってるよ。奏汰」

とんとんと奏汰の肩を叩いて俺は忍の方に違和感を出さない様に気を付けながら俺はそっと移動していく。後を振り返ると翠が不満気な顔して明星を見ているので、あとでフォローいれるかー。と考えつつ後の方をひたすら踊りながら歩いていくので軽い接触はあったが気にすることはない。流星錘を振り回しながら星のイメージでグルグル回しながら移動をしていると、俺の横を衣更が抜けて行ったのでもう衣更に任せることにする。衣更ならなんとかしてくれるだろう。そのまま会場をぐるりと見回せば明星と遊木が暴れ出してるのでそっちに俺は飛び込む。
遊木と肩を並べれば、忍君大丈夫そうだね。と遊木が忍を見ていた。俺は、お前らも成長したんだなと思いながら嬉しくなって、遊木の髪の毛をぐちゃぐちゃに撫でまわしてやると、怒られた。ちらりと残り時間を確認すると、残り時間はわずか。目を光らせておきながら、そのまま時間まで耐えればきっとなんとかなるだろう。最後の数分なら、肩車でもして時間を稼げばいいだろう。とか考えてるので、俺は結局前と変わんねえな、と思いつつ流星錘を思いっきり振り回して大規模な幅をつかったパフォーマンスを決行する。流星錘を持つにあたって調べた3タイムウェイブとかネットで調べた技を使いながら見栄えよく繰り広げる。衣更と二人で何やら話し合ってる様子も見えるし、まだまだ跳ねてるので、まだしばらくは大丈夫だろう。
あぁ若いっていいなぁ。なんてつぶやくと一つしか変わらないのにあっくんって枯れてるっていうか、なんというか。と遊木が苦笑を浮かべてる。お前たちが枯らしてるの。とたしなめて動かない様にしてるんですー。振り回されんのもエネルギーいるの。いい加減に悟って君らも。

「俺は面倒なことを避けるために巻き込まれてんの。」
「え?あっくん何か言った?」
「っていうか遊木も俺の事何時の間にあっくんって呼んでるの?!」

え?駄目だった?いやいいけど。そんなやり取りをしてキラキラ輝く周りを見てると俺自体がちっぽけに見えてきた。やっぱり俺って小市民。ヒーローになんてなれやしない。とりあえずこれ終わって打ち上げしたら家帰って勉強だろうなぁ、明日からもっと本気…でねぇけど。やるしかないよね。




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