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「さがみん、……ここわかんねえ。」
「どれどれ……俺もわからん」
「えーさがみん、大人なのに!」

移動時間が勿体なくて保健室で問題集を解いてさがみんに質問したら、わかんねえ。って突っぱねられたので、仕方ない。数学の先生に問い合わせに行こう。あの先生話長いから困るんだよなぁ。またあとできまーす。くんなー。と軽口叩きあって保健室を出る。外の気温があちーとうだりながら歩いていると、廊下の衣更と忍が歩いてきた。あれ、お前らレッスン中じゃねえの?と思っていたら向こうも俺に気付いたようで、忍に手を引かれて衣更がこっちにやってきた。ちょっと血相変わってない?と思うと一之瀬殿!なんてしかもお前半泣きじゃねえか、どうした。

「どうした?」
「大変でござるぅう!」
「よし、わからん。」
「ちょっとマジやばい感じなのでござるっ!資格勉強でお忙しいのは重々承知でござるが、衣更殿と共に一緒に来ていただきたい。」
「……あいつら、ほんと喋る隕石だな。」

初日からこれかよ。一旦顔だしに行くから。とりあえず行くぞ。内容によっては全員拳骨を心に決めて。俺たちは押さえていたレッスン室に向かう。衣更、お前大変だよな。と俺と衣更でお互い慰めるように肩を叩いて慰めあいながらレッスン室に入ると、衣更が状況確認の声を求めるのを聞きながら、俺は回りを見回した。部屋の隅で体育座でこっちを恨むような目で翠が見ているし、鉄虎は鉄虎でぶすくれているし、どっからほどいていくのが適任かと視線をさ迷わせる。

「氷鷹、説明して。どういう経緯でここまでの空気になってる?。うちの子……いや、鉄虎は後で聞いてくから。衣更、お前も聞いてくんない?。」

順番に俺と衣更は話を聞いていって、要点を摘まんで思考する。そもそもの時点で噛み合わせが可笑しかった。『流星隊』も『流星隊』で落ち度もあった。元来の寄せ集めでできたうちのユニットは、『守沢千秋』という共通の敵もとい『点』で収束していたからなんとか方向性があった。というだけで、あれがグイグイくるから、というべきか夢を叶えてきただけで。ほぼほぼ『守沢千秋企画』として動いてるのが裏目になったというか。一年同士で情報の共有もとれて無かったのもあったせいで、悶着が始まったようだ。どうも熱量の差というか、『守沢千秋』舐めてた。俺の予想を『守沢千秋』が全部かっさらっていった。もう!あいつ……。いや、俺も手を出しすぎてた部分はあるな、と聞いて思った。まぁ、そのあとの明星も色々謝ってるけれどさ。
とりあえず俺は氷鷹と鉄虎の話を全部聞いて、翠と忍の思考も聞いててから抱えてたノートを丸めて、氷鷹と明星と遊木の頭を軽く叩く。すまん遊木ちょっと力入れすぎた。

「今回の目的にお前らの練習だから言ってやるけど。持ってるもんは後輩に還元しろ。」

最初は顔合わせと一週間のスケジュールぐらいざっと決めろ。何をやる、どうする。じゃねえよ。うちの悪いところも一杯見えたから俺も順番にあとで対象するけどさ。お前ら身内だけだからなんとかなってるけどさ。もうちょっと気をつかってやれよ。まだ半年も過ぎてないんだぜ?そりゃああの頃と今との環境は違うけどさ。もうちょっとお前らの当たり前を押し付けんな。念入りに確認はしろ。被ってても問題ねえ、意識を組み合わせる。方向性を決めるのが顔合わせの目的だろう。一回会って踊って仲良くなってハッピー!なんて漫画じゃねえんだよ。現実なの、現実。どぅーゆーあんだーすたん?ついでに確認込めてきいておくけど、お前たち上からそうやって対応されてたか?されてたか?一応年上の俺はした覚えないぞ??比較的甘やかしてたつもりだけど?上からやってたことそっくりそのまま押し付けるのなんざ間違ってっぞ?なんのための練習だ?うちの子、基本千秋の理不尽と無茶ぶりと『五奇人』奏汰の奇異なのには比較的慣れてっけど、潰させる練習はしてねえぞ?こら。


「だいたい一之瀬の言う通り。まぁ、落ち度は『Trickstar』だな。」
「いつでもぶっつけ本番になってしまうのは、俺達の悪い癖だ。顔合わせの前に、『流星隊』の状況をきちんと把握しておくべきだった。」
「うちも落ち度は一杯あるから頭下げんな!今度から対策は打つ。鉄虎、翠、忍。すまなかった。」
「いやいや、なんで一之瀬先輩が謝るんッスか!?俺らの考えtが足りなかったんスよ。本当に半世紀したッス。」
「なんで、一之瀬が謝るんだよ。互いに反省って感じで改めて仕切り直したら良いんじゃないか?」

衣更が良い感じで、まるく納めてくれようといてるのが目に見えて解った。衣更ありきの『Trickstar』だな。と思いながら後で差し入れ入れとこ。と頭をひねる。何がいいかな、あとであんずに一回聞いとこ。と思いつつ俺は衣更の説得大会に耳を傾ける。素直に衣更の言葉を聞いて、明星も氷鷹も遊木も納得してくれたみたいだし。俺も一安心。とりあえず忍は衣更と戯れてるので、俺は鉄虎と翠の様子を伺う。

「ほら、翠も鉄虎も。大丈夫か〜?」
「あ……うっす。」
「ごめんな、俺もあいつらときちんと打ち合わせしてなかったから、こんなことになったけどさ。」
「先輩は悪くないッスよ。」
「いんや、悪かったね。『守沢千秋』に頼りすぎてた。これに尽きるね。」

俺ら、あいつを中心として動きすぎてたって痛感したから。俺も勉強だよ。今度から、ゆっくりお前にも鉄虎にも忍にもおんなじ事を教えて、適正ありそうなやつに仕事をわたしてみるよ。そしたら、お前らだって新しい道も見えてくるよ。轍は作れるけど、歩けるのはお前たちだもんな。もうちょっとお前たちの事を考える余裕を作るよ。悪いね。謝るのはここでやめとくけど。あとで四人で打ち合わせして、『Trickstar』に持ってってやってよ。な、鉄虎。俺達四人で意見をまとめて、その意見を合わせて俺にまた教えて。ちょっとチャイムなりそうだから俺、一旦一瞬抜けるわ。あの先生チャイムと同時に帰宅するから今捕まえねえと先にすすめねえんだって。
俺は翠と鉄虎とそう約束して、衣更に再び礼を言って、件の先生を捕まえる終わったら戻ってくる!と宣言してレッスン室を飛び出した。
あと3分で先生たちの定時がくる。それを逃せば質問やら全部シャットアウトして明日に回されるので、俺は廊下を全力でくぬぎんに見つからないように全力で走ったら、職員室3メートル手前で蓮巳に見つかって叱られる。事情を説明しようとした瞬間にチャイムが鳴って、今日の俺のダッシュは水の泡。蓮巳に叱られるし、ついでに蓮巳に聞いたら参考書片手に一緒に考えてくれたけどさ。絶対に先生に聞いた方が早かった。悲しい。一通り公式の当てはめかたを教えてもらったおれは、とぼとぼ来た道を引き返すのであった。
もちろん、帰ってから軽く方向性だけを決め勉強しにて帰ろうと思ってたら、明星にほぼほ強制的にイベント、夏祭りフラグがたてられた。絶対に明日はレッスン室に寄らねえ。なんていう一念で、今日決めるところまで四人で全部決めてやったわ。明日は絶対にまっすぐ帰るか勉強する。




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