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千秋から場所の連絡が来たので俺は教室を閉めて最後にくぬぎんに採点してもらうようのテストを出してから、指定された場所に入ると衣更と明星がそこに居た。千秋が俺に気づいてこっちこっち!と大きく手を振った。

「こっちだぞ、有。」
「うっす。部活おつかれさん。」
「あっあっくんお疲れー」

千秋の隣に座り込んで、適当に飲み物と食べ物を頼むと、明星にえー?動いてないのに食べるの?と言われたが、帰ったら夜中まで勉強すんの。と返事を返して早速俺は本題に踏み込む。どこまで話したの、と。今からだ。と言われてそっか。と俺は返事をして向かいに座る衣更と明星を見た。

「改めて有も来たし、相談したいことについて話すぞ。」

お前たち『Trickstar』に『流星隊』の後輩たちの面倒を見て欲しい。
そう切り出した千秋は、俺に説明した内容をそっくりそのまま順番を追って説明して言う。体調がわるいから、週末に病院で検査が入っていること。検査の結果にもよるが、場合によっては静養が必要なこと。その間を休ます訳にもいかないこと。回りが活発化しているからこそ、踏ん張りたいのに踏ん張れないという千秋に、俺は申し訳なくなった。頼まれてスタントの伝を俺経由で回してたりするのだが、外部依頼にしてるので立派な校内アルバイトなのだが、とってきすぎてたのかもしれない。と俺は思う。

「そういったって、あっくんもいるじゃん。どうしてあっくんが立たないの?」
「俺は今、欲しい資格があってそれの勉強中。来月試験、家の手伝い、ここに『流星隊』リーダー代理なんて俺にはできない。」
「資格なんて来年でもいいじゃん」
「いいや、今年じゃないと意味ないんだよ。お前らの【SS】が年末にあるのに、来年に回せるか?」

明星に例えてやれば、それは。と口ごもる。お前らの【SS】が俺のこの8月だ、と告げれば納得したようで、衣更があの、どうして俺達なんですか?と問いかけてくる。だから、俺は素直に思った思考をすべて開示する。
俺はお前たちがいいなと思ったから、千秋に伝えた。『Trickstar』はメンバーが同じ学年だから、上や下の付き合いがないだろ。今後アイドルをするならば、一つ上や下どころでない相手と出会う。後輩指導なんてやったことないだろ?経験だよ。うちの子にも、お前らにも。必要だな、って思ったから俺が進言した。芸能界って思った以上に狭くて話は早い。下手こいたらすぐに仕事を干される可能性だってあるぞ。ついでにうちの子一人は片方バスケ部でお前らも顔を見知ってるし、一人は衣更とよく喋ってるのを見るから、お前らなら安心できるな、って思ってから託せるから俺は言っている。だから俺は千秋にお前たち『Trickstar』を押した。俺らにもお前らにも将来を見通していくならどちらにもメリットのある話だし、俺も完全に放置するつもりはない。出来る限り時間はないけど顔を出そうと思ってる。お前らに一切合切全部の負担を任せるつもりはないし、ヤバそうなら止める。年長者……っていっても引きこもり歴ある俺だけどさ。お前らよりは一年多く生きてるし、聞かれたらノウハウぐらいはある程度持ってるから教えれるからさ。
そう俺のスタンスと思考を全部のぶちまける。

「仕事相手としての上下関係に慣れてないよね。」
「今回お試しみたいな感じで『流星隊』の一年生たちを世話をして見て欲しい。指導し教育しうまく管理してみろ。」

きっと将来、お前たちの財産になる。うちの子たちはみんな真面目な子だしな。扱いやすいはずだ。こんな俺にもついてきてくれるような子たちだから。
そう笑っていう千秋はなんとも言えなくなって視線を落とす。俺の頼んだ飲み物と食い物が来たので、俺は順番に食べていく。千秋の話を聞きながら、だんだんと胃がいたくなってきた。千秋も奏汰も居ない『流星隊』なぁ……。最悪の最悪俺が面倒を見るとは言ったが、大丈夫だろうか。思考を飛ばしながら、食事を進めていくが、考えれば考えるほどいい方向に思考が進まない。

「んっと、俺は別に問題ないと思いますけど。一応明日にでも北斗や真にも相談してから返事してもいいスかね。今後の活動予定とか、俺らが勝手に決めるわけにもいかないんで。」
「当然だろう、良い返事を期待して待ってるぞ。」
「そういえば、『流星隊』には他にも三年生の人がいるよね?あのひとに後輩の指導とか頼めば良いんじゃないの?」
「奏汰は有と違って、後輩との付き合いに慣れてないようだし、あいつは夏場は忙しいんだ。家庭の事情でな。だから、あいつも満足に動けるかわからない。有同様に活動に参加してくれるようだったら、一緒にレッスンなどを主導してほしい。」

あいつは下手すると一年生より対応が難しいからな、まあ逆に厄介な先輩と付き合う練習にはなるか?と考え込んだが、たぶん俺もそんな気がするので、深くは言わないことにしよう。とりあえず頑張ってみて欲しい。お前たちが本当にどうしても後輩の面倒を見切れなくなったら有が面倒を見るとは言っている。そのあと『流星隊』も『部活』も全部休ませる交換条件も全部俺が取り決めてるから安心しろ。とネタばらしまでしてるので、落ちたら11月まで延長してやるからな。と追加で足して、おくのを忘れない。そう、お前たちが引き取って問題を起こさなければなーんも問題ない話だからな。そうだ、なーんもなーんもだ。

「はーっはっはっは。」
「あっくんの顔が怖い。」
「アイドルにあるまじき無表情で笑ってる……」
「全部聞こえてっぞ。」

そんなやりとりをして月曜日。職員室に数学の質問をして教室に戻ると明星の元に千秋からの電話がかかってきていたらしい。詳しくは知らないが、千秋は奏汰の元に居るらしい。免疫が落ちてどうこう。と言ってるので、一度ある程度【七夕祭】の詳細が決まったら顔を出しに行こう。あいつらの復旧にもよるだろうけれど、ノーレッスンで【七夕祭】に出るのは無謀だろう。電話の内容を一通り聞いてから、そっか。と俺は言葉をこぼす。

「明星、氷鷹、遊木、最低限様子見に行ったりするけど、あんまり参加は出来ない。うちの子たち、よろしくな。」
「ふはは〜、俺達の先輩パワーを見せつけてくれるわ!」
「有くんも勉強頑張ってね」
「ほんと、マジおわんねえ。あいつら片付けても片付けても数式で襲ってくるの。」

なんで数学とか世の中に存在すんだよ。と肩を落とせば、遊木が必要な試験だって言ってたけど、どんなの?と聞かれたので、大学入試と冗談めいて言えばまたまた〜。と乗ってくれた。でもそんぐらい必要なやつ〜。と軽口叩いておく。ちょっと気が紛れた。サンキュ。と礼をいいつつ、とりあえず予めレッスン室借りてるし召集もかけてるから、ほんとよろしく。と明星の肩を叩いて俺は自分の席に戻る。数学が終われば、次は英語だ。ほんとテンプレートに当てはめんの嫌い。しかも一年先の分っていうか普通にアイドル科でやるよりも範囲が広いのなんのって。ほんとまじ、去年引きこもらなかったらよかったな。今さら後悔しても仕方ないんだけどさ。もうやだ、高卒資格勉強やりたくねええええ!!!!!ちょっと離れたところで氷鷹明星遊木が話してるのを聞きながら、俺は26文字のアルファベット組み立て作業を開始するのであった。
歩いて喋る隕石だと思っています。という単語が耳に飛び込んできて、俺は不意に笑いそうになった。




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