1






俺の勝負の夏はもう目の前だ。大学受験をするための卒業資の試験が目の前に近づいている。『流星隊』活動も部活も家のお稽古もそっちのけでかたっぱしから問題集を片付ける。最低限は出てるけど、俺には時間がない。まじで。授業を受けて問題集の内職したりだとかやってると、思考と体力を全部持ってかれる。くぬぎんやさがみんに手伝って貰いながら、俺は勉強漬けの毎日だ。放課後にくぬぎんに小論文見てもらって、俺は再度新たな課題と交換して次の課題に取り組む。日直の戸締まりを代わって、俺は一人で教室居残り問題を取り組んでいたら俺の手元に影が延びる。ふと顔をあげると、千秋が立ってた。

「有!」
「うげ。今日部活だろ?」
「そうだ!有も一緒に」

無理です。お前この間から人のはなし聞いてる??最低限のレッスンは出てるだろ。今度の【七夕祭】に出れる余裕を作るために俺は今必死に勉強してるの。たかが一日されど一日。結局この間の【学院祭】だってほぼほぼ俺が経理系やったので、勉強時間はある程度奪われてるの。回収するために必死なんです。前から言ってるけど、ほんとお前人の話聞かねえなぁ。さっきまでフル回転してた頭を抱える。

「ほんと頭が痛いわ」
「有、風邪か?」
「おいこら。」

前後の文脈に風邪要素どこにあった。さては千秋、国語苦手だろ。呆れていると、千秋は俺の向かいに腰をおろした。真剣そうな顔をして俺を見ているので、一旦ここまでと判断して俺は問題集とノートを横によけた。なんだよ、と口を開くと週末に病院で検査してもらうことになってるんだ。と目の前の男は言う。

「おい、聞いてねえぞ。なんでそんな大事なこと早くいわねえんだよ。んで、お前は去年の今ごろも体調壊してただろ。」
「あぁ、だから念のためにだ。検査の結果にもよるが、場合によってはしばらく大事を取って静養しなくてはんらない。」
「はい?急すぎだろ。お前、この間からいい加減にしろよ!」

がつんと握り拳を机に叩きつける。叩く力が強くて、筆箱が軽く浮いた。筆箱からシャー芯がころりと落ちたが拾うのは後だ。どうして今さら言うんだ。お前が離脱するなんて、うちの仕事を引っ張ってきすぎたのか?と色々思考が回る。目の前のこいつがやりたい。っていうから、家から持ってきたりしてたけど。本格的に止めさせておけばよかったと、今更になって後悔した。

「それでだな、その間の事を、『流星隊』をお前に任せたい。」
「俺が人を引っ張るタマだと思ってるのかっての。俺に頼るのは間違ってんぞ。」
「この間のヒーローショウの時に俺は確信したぞ」

あれは鉄虎を代理に押し上げて、俺がほぼほぼサポートとして動いてた。それに、俺この間から言ってるだろう。8月に欲しい資格の話、三毛縞と一緒にしたよな?覚えてる??もう時間がないの、ほんと頼むよ。あぁもうくそ。と俺は吐き捨てる。俺は引っ張りはしない!お前今後の事も考えてやれ。と俺は言う。お前と奏汰が卒業したら、俺は『流星隊』をほぼほぼ引退するつもりでいるし、少なくともお前らが卒業までに一年生3人でやっていく方向を見つけてやれ。
俺は、お前と一緒に卒業して一緒にスタントやアクションの道に行きたいためだ。なんて絶対に言わない。最大譲歩は今年度は居る。っていう約束だけだ。引きこもって勉強してたのもそのためだかんな。

「今は『流星隊』にとっても重要な時期なのはわかるけどさ。俺も俺で人生かけてる大事な時期なの、そこは理解して。【DDD】でいい感じになってきたところに俺ぶっ混んで、下手にあいつらを崩壊させたくはない。全力で補助はするがメインはしない。これ絶対。」
「有。」
「そんな顔してもダメなもんはダメだっての。どうせならよそと合同練習かなんかつけてこい。」

そしたら俺も多少負担は減る。負担が減るならお前が入院しても、なにしてでもだいたいの連絡だってとってやるよ。俺から出せる最大条件はここまでです。そう主張して、続きの反論を待つが、千秋は真剣に考えて、そうだな。と考えてから俺に「じゃあどこだったらいい?」なんて口を開いた。知らねえよ。そこまでがお前の仕事だってのに。……3年の居ないか少ないところのユニットならどこでもいいんじゃね?と思って、どこならいいだろうかと思考すると答えはすぐそこにあった。仁兎んところ……一年生ばかりだしな。知っているところでってなると。と考えると……。

「明星と衣更んとこ。あそこなら適任じゃね?」

3年が居なくて俺や千秋とそれなりに繋がりがあって、バスケ部で翠もいるし、忍は遊木と衣更と程度面識あるし。明星のとこあそこ同い年ばかりだから比較的下の扱いにも慣れてないだろ多分。あとあとのこと考えるならたぶん。今そこしか思い付かねえや。多分、そこが妥当じゃね?と言えば、そうだなぁと千秋は考える。有にも迷惑を掛けれないし。と溢して、千秋はそうだな。と一度話を持っていってくる。と深く考えて千秋は席を立つ。いや、俺は別にやれって言われたらやるけど。どうもいい感じはしねえなあと思いながら、俺は深いため息をつく。教室から、完全に出る前に俺は千秋を呼び止める。

「どうした、有」
「明星たちと話をするなら俺も呼んで。俺のスタンスも話しておかなきゃ、話がこじれる。」
「そうだな。わかった!また連絡する!」
「様子可笑しかったら速攻で帰らせっからな。」
「任せろ!」
「明星たちで駄目なら俺が引き取って面倒見てやるけど、そんなのしたら8月まで俺絶対活動しねえからな!!絶対にだぞ!!解ったか千秋」

勿論!とか言うが信憑性は薄い。目の前の男は大きく高笑いをして、千秋は部活だからと走っていく。消えていく足音を聞きながら俺は任せれねえっての。なんて小さく吐き出して、脇に置いた問題集を片付け出す。




[*前] | Back | [次#]




×