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俺のユニフォームはロッカーに入れっぱなしなのでいいんだけど。ほんとこのユニフォームって得意じゃない。千秋〜と情けない声出すと、お前は体操服でもいいんだぞ。と言われるので、よし。と小さくガッツポーズ。俺忘れたわけじゃないもん。千秋が勝手に言っただけだしー。勘違いはさせておくといいだろう。うんうん、のたのたジャージを着て体育館に入るとあんずもジャージに着替えてた。お前着替える必要ないだろ、というと、ほらマネージャー気分!と笑ってるが、お前ほんと仕事しすぎだからな?とぎろりと睨んでおく。

「有、俺と一緒に高峯と練習しようぜ」
「おっけー。どうせ明星と千秋でやってるだろ。いいよ俺をドナドナした奴なんてしらねえ」
「ドナドナ……一之瀬先輩と衣更先輩なら安心して組めますからね、俺は願ったりかなったりですけど、いいんですか?俺はルールの基本も知らない初心者ですよ……?」

まぁ、ボール持って2歩以上歩かなけりゃいいんだよ。と言ってやると、あってるけどほかにもいろいろあるじゃん。と言われる。うん、俺基本球技嫌いだから覚えたくない。正直な話。顔の前てないない。と手を振るといやいや、覚えておいてください。それに高峯は何度かバスケしたことがあるんだし、まったくの初心者ってわけじゃないだろ。ルールの基本を覚えないのはともかく、推しえなかったのは俺たちの責任だし、有も動きたくなさそうだし、いい機会だから一からきちんと説明してやるよ。
怒られたりたしなめられたりするけど、衣更超いいやつ!と俺の中で衣更の株が上がっていく。ストップ高間近。ルールおぼえてない俺最高!と絶賛俺を自分でほめる。

「行くぞ明星!あの星に向かって全速力だ……!」
「うっせー!千秋!昼間に星なんか見えるか!」
「お前に見えないだけだ!有」
「見えるか!!」

声高に叫んでる千秋に声高に俺が反論していると翠が「ははは、一之瀬先輩楽しそうですね」なんて笑ってる。部長スバルのことが大好きだから相手にされて嬉しいんだろ。スバルも苦手だ〜って逃げ回ってるけど、嫌ってるわけじゃないし、それは有……はともかく、高峯だってそうだろ?…俺は『流星隊』でもあの人と一緒ですから、毎回あのテンションに巻き込まれて勘弁してほしって気持ちはありますよ。居心地は悪くないし、なんだかんだであの人のそばにいるのは嫌いじゃないかもしれません。一之瀬先輩が助けてくれるし。感謝はしてますよ。一之瀬先輩。
翠の言葉に俺はうんうん。と頷く。衣更の言い分も全うで答えなのだが、毎回一年3人と結託して説得するのは骨が折れてるのだ。あきらめる部分も多いけど、あれの明るさに助けられてるのは事実だよな。行動派馬鹿は。っていうか、俺?予想外の飛び火を喰らって、いや、あの。と言葉が濁る。

「どうしたんですか?一之瀬先輩」
「おいっ、からかうな。翠ィ!!」

ちょっと待った顔俺絶対真っ赤。うっわ。と言いつつ視線を逸らす。ついでに距離もあける。開けたって顔が赤いのは変わらないのにね。人間ってこんな瞬間に湯沸かし器みたいに真っ赤になるんだな、とか俺自身に対しての斜め横の思考が飛ぶ。有始めるぞ!と衣更に言われて、自分の顔を仰ぎながら衣更の方に寄る。多分明星のことだから、なんかあったら俺を呼び出してくるだろうと判断して、そのまま衣更の練習と説明に混ざる。話を進めていると、休憩するぞーなんて号令がかかる。おつかれさまーとほわほわした笑顔であんずがタオルを配っていく。そんな間にスバルが飛びついてきた。

「有って、苦手なことないの?球技もできるでしょ?」
「なんだよ、急に。熱い」
「今ねーめちゃくちゃボール投げられてそれを」

わかったわかった。とりあえず離れてくれ。なんて言いつつ実力行使。俺の髪の毛何本か持ってかれて痛いけど、暑苦しいのと比べると痛いのは致し方ないだろう。あとでやろ!って言われて、それ終わったら俺もう動かねえぞ!って強く言うと終わり5分でやろうね!って言われた。なんだよ、ああ言えばこう言うヤツ!!がっくりと肩を落とすと、千秋が円陣になって語れと言い出した。とりあえず疲れさなそうなことなので、千秋の隣に座り込む。楽しいことはまってること、と言われて俺は何かと考える。勉強にはまるという言い方は違うしなぁ。ぼーっと考える。

「有は?」
「俺?……寝ること。だらだらすること。」
「それ、いつもじゃないですか?」
「ははは。そだねー。どうせ家でもバカスカ働かされてるし」

飯食ったら寝る。それ以外は体を動かしてるような家だからなー。と言いつつ俺はうらやましいぞ!と千秋に言われる。あの作品の殺陣なんだがな。と力説してくるのはいいが、唾は飛ばさないでくれ。そっと千秋と距離を開ける。そんななかでも俺は周りを見つめながら話の行く先を見つめながら、飲み物を飲む。ちょっと持ってたからかぬるくなってるが、それでも体を動かした後なので、冷たく感じる。

「ち〜ちゃん先輩、夢をあきらめちゃったの?」
「えぇっ、部長が!?本当なんですか、部長?」

衣更とスバルが二人して千秋に詰め寄る。おいおい、といいつつも千秋は口を開く。成長して夢が変わったんだ。と言った。そんな言葉を聞きながら俺も初めて聞く話だな。と思って興味がわいた。お前たちも幼稚園の頃、将来の夢を文集に画いたことはなかったか?それで、前後の文脈を察して、あぁそういうことね。と一人納得する。

「先日部屋を掃除していたら幼稚園の文集が見つかってな。そこに『将来はパイロットになりたい』と書いてあった」
「今の千秋だと飛行機より戦闘機の方が似合いそうだな。」

3Aの面子と考えると、そっちのほうが似合ってる気がする。かっちりした服よりもアメリカっぽいかんじのほうが似合いそうだよな、とぼんやり考えて、俺はどうだっただろうかと思慮する。いや、俺千秋と逆だわ。幼少のころは特撮ヒーローにあこがれてた事を思い出した。まぁ、家が家だから身近に特撮ヒーローとスーツアクターという存在を知って崩れってったんだっけ。と思い出して、夢じゃなくなった理由というのがすとんと落ちた。

「うむ、パイロットになれば宇宙の平和が守れるからな!とはいえ、地球が灰燼に侵略されないよう守るヒーローの存在は不可欠だ。俺は『流星隊』として仲間とともに地球の平和を守るぞ!」
「ちーちゃん部長特撮番組の見すぎじゃない?まぁ、パイロットだろうとヒーローだろうと、こっちが頼まなくても颯爽と現れて助けてくれそうだけど〜」

楽しそうに会話する3人を見ながら、俺はふふ。と笑って翠の方を見ると、ちょっと視線を落とした翠が居て、自然な流れで動くタイミングを探してるとスッとあんずがうごいた、翠と二人で話している。あっちはだいじょうぶそう。とか思いつつ俺はぼんやりと空中を見つめる。

「有はどうだったんだ?」
「んあ?俺?小さなころは特撮ばっか見ててあこがれてはいたけど。知り合いのおじさんとかがスーツ着て泣き喚いたって聞いてるしなぁ。」

あー。そうだったな。お前の家は特殊だよ。なんて千秋に言われて、んまーそうだね。と適当な返事をする。親についていくと憧れてたヒーローがよくいるんだもんな。ぼへーと肩肘ついてると、「ちなみに俺のもう一つの夢はかわいいカノジョにお弁当を作ってもらうことだ!」聞かなかったことにしよう。

「ね、ち〜ちゃん先輩のどうでもいい情報ってないの?あっくん」
「んー?千秋の〜?千秋はね。かわいい彼女っていってるけど「有!!!!!」耳元で叫ばないでよ」

聞かれたから答えたのに千秋が叫ぶ必要あるの?とじっとり見てやると、顔を真っ赤にした千秋がしどろもどろに言葉を発してる。俺はケラケラ笑うと、お前は適当なことをでっちあげるんじゃない!と俺のジャージを掴んでゆっさゆさ揺すってくれる。えー適当にでっちあげるのが楽しいのに。と言うと、お前は!と顔を真っ赤にするのでははーん。と察する。

「余計なことは言うなよ!有」
「はいはい、隊長さんよォ」

肩を叩いて、千秋の追撃を逃れてハハっと笑ってやれば、照れてるねぇ。と俺はニヤニヤする。あっくんどうしたの?と明星に声をかけられたがのらりくらりとかわしてやる、2on2やるぞ!と俺の首根っこ掴んで動き出すので、千秋と俺VS明星と衣更。それから明星と千秋VS衣更と俺と翠。の二本立て。もう2on2とは、なんていう論争も起きたりしたが。とりあえず俺は負けたら全力ダッシュとか言われたので全力を尽くしてペナルティ回避に奮起する。
全力パスカット、千秋をちぎったり、3Pシュート、エアウォークまでやって、最終的に俺がシュート成功したら俺の点数は全部1点とか言われる改定ルールを持ってこられたりする。
それでも俺は全力で明星をかわしたり翠のバリケードを潜り抜けて、最終的に4VS俺の図式になったりして、俺も抗議の声を上げて、かろうじて衣更明星翠千秋、対俺とあんず。なんていうところに着地させて、それでも俺は価値をもぎ取り周りにすっげーさすが!とか言われたりしたが、家の練習時間が迫ってきたので俺は、現場体育館から逃げるように飛び出して、無駄にペナルティ回避のために全力を尽くしたがために、くったくたになったので家に帰って殺陣の練習はボッコボコにされたのでした。ちゃんちゃん。




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