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明日もレッスンがあるから早めに帰れ。と言われたが、創の自主練習に登良は付き合うことにした。くるっとターン。と声を出して回るのだが、成功率が低い。よたりとする創の腕を掴んで転ばないように助けると、毎回困ったように創が礼を言う。登良はその度に、考えてアドバイスを出すのだが、うまく行かない。

「創、ここもうちょっと足を開いた方がいいよ。」
「本当ですか?」

少し前からカウントを取っていくのでそれに合わせて登良も動く。くるっとターン。と創が言うのでそこに合わせて回ると、登良の足が絡まった。登良は一瞬よたりとしたがすぐにバランスを取り直す。のだが、創は修正できずに登良の腕を掴んで転ぶ。掴まれてしまったのだ、必然的に登良も巻き込まれて転び肘から崩れ落ちた。

「ごめんなさい、登良くん、大丈夫ですか?」
「平気、慣れてる。創は?」
「大丈夫です、お尻を強く打ちましたけど、さっきから同じところで失敗してますし、鈍くさくって嫌になります。」
「も一回やろ?次は重心変えてみよう?」

そうですね!やってみましょう!と立ち上がるために手を差しのべられるので、登良はその手を借りて立ち上がる。ちょっと強めに打ったけれど、道場でもよく打つので、まぁ大丈夫だろうと肩を動かしながら判断する。音楽のトラックが頭から流れ出すので、通してみよう?と二人で歌いながら踊りだすと、ドアからゆうたが顔を出した。

「創くん、登良くん。」

行きなりドアが開いて、登良はきゃあ。と声が出て、小さく飛び上がった。驚かした?ごめんね?と声がかかって、登良は首がとれるぐらいに横にふった。大きな音に弱いんだ、と付け足せば今度から気をつけるね。なんて返事が来て、登良は困ったように笑うだけに止めた。

「んっと、どうしたんですか?もしかして忘れ物ですか?」
「いや、廊下を歩いてたら、ダンスルームから歌声が聞こえてきたからさ。まだ誰か残ってるのかな〜って見に来たんだよね。二人で練習?」
「創の特訓。あんまりうまいこと行ってないから。」
「ステップを踏むのは何とか出来るようになったですけど、ターンが苦手で」

あれやこれやってわかんなくなってきた、ゆうた。アドバイスない?そうやって問いかければ、創が遠慮がちに迷惑じゃ?声をあげる。乗り掛かった船だし、家に帰っても暇だし、とりあえずは踊ってみようよ。とゆうたが言う。ゆっくりカウントとるから、と登良が言えば、よろしく〜。と手をふられる。

「葵先生、よろしくおねがいしますね」
「先生って、普通に読んでほしいって言うか、下の名前で読んでほしいな俺も勝手に創くんとか呼んでるし。」
「それじゃあ、ゆうたくん。登良くん、よろしくお願いしますね」
「さっきのところからでいいよね。」

やるよー。と声をかけて、登良は手を叩く。拍を叩き出せば、創も体を動かし出す。ステップを広げて、問題のターンに入ると、ぐにゃりと歪んで転んだ。とん、と軽い音を立て創が転ぶ。かけよって手を差しのべれば、ほん僅かに肩に違和感を覚えた。創をたたせてから再度肩を回したが、すこし痛むかもしれない。家帰って湿布張ろ。ひっそり決めて一人頷く。

「今のでだいたいわかったかも」
「ほんとですか?ほんのちょっと見ただけで?」

教える前にちょっといい?おいでおいでと、ゆうたはポケットからなにかを取り出して、創を手招く。創は首を傾げてよっていくと、ゆうたは鼻唄まじりに創の髪の毛を触っていく。ゆうたのよく使う色したヘアピンが創の髪の毛に引っ付いている。創はレッスンの鑑を使って様子を確認している。ユニットの方針で髪の毛を切らない方向になってるので、登良は自分の髪の毛も眺める。長くなったので緩く一つにまとめ片側に流しているが、夏場は蒸すだろうな、とか入学したときにばっさりいっておくべきだったか?と自問自答。

「登良くんもいる?」
「ううん、平気。しっかり結ぶから。」

一度ゆるく結んでいたのをほどいて根元でしっかり一つに纏める。登良くん髪の毛長いね。とゆうたに言われて、入学前に切っとけばよかったね。と笑って過ごす。髪の毛も整ったし、本題に入ろっか。とゆうたが言うので、さっきまでの空気も変わって、三人でああでもないこうでもない、とやり取りを繰り返して、創の練習を再開する。が、途中で兄斑に見つかり強制的に練習終了となるのであった。

「離してください!人拐い!」
「登良くんは軽いなぁ!今日は空手道場の日だろう?」
「それは明後日なんで違います!!」





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