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兄を選んだ理由から交換留学生をするにあたっての話を聞いていると、今後色々と為になる話がきけた。少し古いものになるからの、使える手は今と異なっておるかもしれんが、そのあたりは一度三毛縞くんに教えてもらうのも一つの手じゃと思うぞい。今年で三毛縞くんも卒業するから、交換留学生や国外の活動のノウハウを持った子は誰もいなくなるのは、あまり良くないかもしれん。兄の思考を追ってみたいならば、その後を継いでもいいとは思うが……まぁ、決めるのは登良くんじゃし、時間の猶予は多少あるから、一度ゆっくり考えてみてもよいかもしれんぞ。
そんな言葉で、朔間は締めて、そろそろご飯じゃ、こんな与太話はつまなかったかの?と問われて、登良は首を横に振る。
俺から見た兄と朔間先輩から見た兄とで多少の差分はありそうですし、一回どこかのタイミングで考えてみます。と言えばそういうところは似ておるのと笑われた。なんとも言えない表情に一瞬なってしまってふと空を見上げると夕暮れの空に移り変わっていた。

「ちぃと話しすぎたようじゃわい。ほれ、よい時間潰しになったわ。」
「いえ、朔間先輩に話ばかりさせてすいません。でも、かなり勉強になりました。」

今後、誰も持たないスキルが出てくるならば一つ選んでもいいかもしれない。ただ、そう選択するにはかなり考えておかないといけないことはたくさんある。語学、文化の違い書類の手続き、『Ra*bits』のこと。一つあげれば芋づる式に引き上げられてくる問題点ばかりで、本気でやっていくなら一つづつ潰していく必要は出てくるだろう。おそらくあの兄ならば、と無意識に自分で比較してしまうことに嫌気が差して、ため息をついてしまう。登良は見上げていた視線を朔間に戻せば、「まぁ、もしもそういう道を選んだのなら、兄でもなく我輩も頼ってみるのも一つの手じゃからの。」とぱちんとウインク一つ。登良はそれに一つ頷いて、朔間先輩ありがとうございます。と立ち上がって一礼と礼の言葉をを言えば、朔間は我輩はもう少しここにいるから、登良くんや行ってくるとよかろう。と彼は笑った。登良は失礼します。と再度頭を下げてから、時計を確認する。そろそろ創が夕御飯の調理を始めているかもしれない。と思い浮かべて、調理場まで歩き出す。手伝うといって、思ったよりも時間を過ごしてしまったようで、創と光と友也がそこにいた。

「登良ちゃん、遅いんだぜ!」
「ごめん、朔間先輩と話をしてた。友也は具合悪いの?」
「たぶん、レッスン疲れだと思いますよ。」
「友ちゃん、ご飯を食べて元気を出して!ほら、お米が炊き上がったんだぜ!」

飯盒からしゃもじで僅かな量を掬い上げて、光が友也の口の中に叩き込む。炊きたては蒸らさなきゃダメだよ。と登良はしゃもじを取り上げ、創は炊き立てのご飯を口に詰めちゃ火傷しちゃいますよ!と光を注意する。友也の火傷も心配なので、とりあえず水を用意しつつ、残りの火から下ろした秤の飯盒をひっくり返して蒸らし始めていると、羽風がカレーの準備が整ったよ。そっちはどう?と様子を見に来た。

「あ、羽風先輩。ちょうど炊き上がって最後の蒸らしのところです。」
「じゃあ、こっちにカレーを持ってこようかな。それぐらいになれば、蒸らしも終わるでしょ。」

にこやかに笑って、創と二三の会話を繰り広げているのを横目で見ながら、ふうと思考を巡らせる。もうすぐ夜だな、明かりがないのはちょっと怖いな。と夜が怖い。と言うのもちょっと子どもっぽくて、言いにくいなぁ、とがっくり項垂れる。さっさと寝てしまおう、とか一人思うのだが、きっとそうはいかないんだろうなぁ。きっと光が騒いで友也が怒ってそれから……、と考えていると「おい!」と声をかけられる。

「場所開けろ!カレー持ってきたぞ。」
「あ、はい。」

そろそろ蒸らしも終わる頃だろうか、とおもいつつ蓋を開けてみると問題はなさそうでそのままカレーの用意をする場所を作り上げて、登良は淡々と皿に米を均等になるように皿に盛っていくと、あんずが手伝いを買って出る。ので、そのまま配膳をお願いする。登良は空いていく飯盒を順番に水につけて、あとで洗い易いように整えていると、光が登良ちゃん、カレー出来上がったんだぜ!と声がかかる。わかったよ、と返事をして切りのいいところで作業の手を止めて、残りの飯盒を全部水を張ってからみんながいる方に歩みを向けると、創からはいどうぞ。とカレーを受けとる。ごろごろした野菜と、ちょっともったりとしたカレーの臭いが空腹を誘う。手を合わせていただきます。と呟けば、めしあがれ。と声がかかって、登良はぱくりと一口。

「美味しい!」
「そうですか?」
「う、ううっ、つらいレッスンを乗り越えたかいがあった、ばんざ〜い……!」
「友ちゃん、おかわりいる?友ちゃんが元気になってくれてほっとしたんだぜ」
「友也くん、ぼくのカレーも食べてください」

……俺のも食べる?と差し出すが、そんなに食べれないから。でもまぁそれだけみんなに心配かけちゃったってことだよな。悪い、もう大丈夫だ。まぁあと寝るだけだけど。ぽつぽつと会話を繰り広げていると、大神が「あれだけ扱いてやったのに飯を食える元気があるみて〜だな、地味顔」と笑っていうと、友也は悲鳴をあげて勘弁してください。と体操選手もビックリな綺麗な土下座が決まった。そんな様子に、大神もやるかよ。と笑っている。どうやら登良が朔間と話をしていたように、友也は大神と一緒に行動したみたいだ。とカレーを食べながら、判断する。明日からが本番だからな、と笑う大神に、登良はよかったら俺も一緒にしていいですか?と問えば、友也が顔を真っ青にして止めとけ。ととめたが、大神はお前は走り込んでからな!女顔!と返事をもらう。じゃあその間にいろんな事を考えようと思いながら、登良はとりあえず今日は夜が怖いからさっさと寝たい。そんな願いも、叶わないのは30分後のまた別の話。



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