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雨で暇をもて余した登良たちは、廊下で遊んでいた。大雨が小降りになるのを待っている間、『Ra*bits』の一年で集まり濡れた廊下を使って滑り距離を争っていた。登良は廊下のすのこの上に腰掛けて、仲間たちを見上げてぼんやりとしていた。ぼーっとしていると、友也が登良に声をかけた。

「登良、どうした?具合が悪いのか?」
「このあいだ、兄にライブひっぱり出されて、まだ疲労が抜けきってない。」
「あぁ、お寺のライブの。」

先日、に〜ちゃんからしばらく居ないって聞いてたけど、大丈夫なのか?と問われこっくりと登良は首を縦に振る。この間の休みの日に終わったかっらもう大丈夫だよ。ただ眠いから、ちょっとだけ寝るけど、小降りになったらおこして。とつたえれば、わかったから、大人しく寝てろ。と返事をもらって、登良は壁に身を任せてきゃっきゃと遊ぶ彼らを見る。そっと目を閉じて、聴覚だけを働かしていたが、そうしているとうとうとしてきて、眠る瞬間がわからなくなってきた。ふわふわ浮いてるような感覚に甘んじていると、現実に戻されてゆさゆさ揺すぶられる。

「登良ちん、起きろ!こんなところで寝てたら、だめだぞ!」
「に〜ちゃん?」
「なんだ、寝不足か?」
「ん、この間のライブ疲れたから。」

寝ぼけ眼を擦りながら、あれ二年生三年生しかいなかったって聞いたけど、登良ちんよく頑張ったな!追い付くのに必死で、疲れました。ぐりぐり頭を撫でてくるのをそのまま甘んじて受ける。首に力を入れてなかったので、手と連動して頭も動く。これはかなり疲れてるな、となずなが言うのを聞きながら、登良は眠気を追い払うように頭を振った。意識が覚醒してきたころに、登良は口を開いた。

「で、なんでに〜ちゃんがいる?」
「そうだった、お前たちに朗報だ!『Ra*bits』が遊園地でライブをすることになったぞ〜」
「ええっ、遊園地でライブ!?」

いくらなんでもタイミングが良すぎません?光や友也が口を開く。先程まで寝ていた登良に、創が遊園地行きたいね。って話をしてたんですよ。と耳打ちをして、登良はタイミングが良すぎません。と言った友也に理解する。偶然、と言うならば偶然なのだろうが、そんなことってあるんだなとどこか他人事のように思ったのは恐らくまだ意識が覚醒してないからだろう。

「たしかにすごいタイミングだなってビックリしたけど、おれは嘘なんてついてないぞ〜?」
「じゃあ、本当に遊園地でライブができるんですか?」
「うわぁうわぁ夢が叶っちゃいました!」

みんな口々に騒ぎ出すので、登良は笑顔の仲間を見やる。長いこと行ってないけど、自由時間があれば楽しそうだなぁ。なんて思ってみたりする。ぽつりと伸長制限大丈夫なのかなぁと呟けば、大丈夫ですよ!そのときは皆で別のに乗りましょう!と元気よく創が声をかけた。それもそうか、と納得した。なずなが簡単な詳細を説明し出すので、登良はそっと近くの空き教室かどこかに移動しませんか?と提案すればすんなり受け入れらる。そんな結果に登良はほっと胸を下ろした。
ここで五人集まって話をしてもよいが、込み入るならばよその方がいいだろうと登良は思ったからだった。なずなの雨で滑りやすくなってるから、走らず急ぐぞ〜という掛け声に従って、登良は立ち上がり移動を開始しようとすると、光が元気よく先程までやっていた遊びのやり方で動き出して、登良ちゃんも!と誘われたが、登良は丁寧にご遠慮しておくことにした。転んで捻挫してライブの仕事、穴を空けれないしね。と返事をしておくのだった。



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