3e





着替えを終わらせて出てくると、息を切らせたなずなが立っていた。

「に〜ちゃん?」
「登良ちんまで!ていうか、雪!?いや、雪は降ってるけど、この短時間でこんなに積もるわけないし…」
「『2wink』のCMが雪遊びだから、雪がないと…ねぇ。」
「あぁ、そういうことか、ほかにもたくさんの人が出るっていってたけど…ここにいる全員CMに出るのか?」
「に〜ちゃんもやろ?」

そうやって登良は上目づかいでなずなに聞く、ぐっとなずなが止まったが、レオがナズも参加するんだろ?お前の衣装も用意しちゃってるし、たまには子供らしく遊んでもいいだろ、ナズも3年生だけど大人ってわけでもないんだからさ。と援護射撃が入ってなずなの参加も決まり、光と二人でハイタッチして喜び合う。いえー!と声を上げると、「登良!」と声がしてそちらを向くと、「ふぐっ!!」という声と柔らかな衝撃が顔面に来た。一瞬よたっとしかけたが、「登良ちん!」となずなに背中を支えてもらってなんとか踏みとどまる。

「大丈夫か!」
「平気…。」

ふっと前を見ると、クスクス笑っているひなたとゆうたが遠くに立っていた。その時点でぷつっと一瞬はじけ飛んで登良はにっこり笑ってひなたとゆうたに声をかける。にっこりなんていうが、目が一切笑ってない。

「……ひなた、ゆうた…。お前ら、覚悟しろよ?」
「登良ちん、落ち着け!落ち着け!!」
「雪玉に石詰め込みありの雪合戦して、真っ赤な血を流したろかゴルァ!親直伝の技みしたろかぁ!!」
「落ちちゅけ!!登良ちん!!!!なんか違う人格になってるんらろ!!」

手近な雪を二つ作ってひなたとゆうたに投げつけると、真っ直ぐ雪玉が飛んでって二人の顔面にさく裂する。やわめに作っているのでダメージはない。登良ちん!と怒られたが、登良はすぐに「おあいこね!」と遠くの二人に笑いかける。さっきまでの凶暴な怒声もなく、いつもと同じ顔をしている。

「大丈夫だよ、もうそんなに切れないから。飴と鞭は使いようだよ?」
「いや…それは使い方違うような…」
「司、ゆきだるまつくーろー。」

ネズミの王様的なやつのアニメソングを口ずさみながら、なずなに登良ちん!とか言われたけれど、気にする素振りもなく足元で小さく雪玉を作ってころころと転がしながら、司のほうに寄っていく。「つーかーさー、つーくーろー!」と声をかけると、登良くん!?とちょっと驚かれたが、「えいぎょーよー…なんちゃってね。」こっそり笑ってやると、さっき怒ってらっしゃりませんでしたか?と言われたが、なんのことだろうね?と登良はすっとぼけていると、鉄虎がやってきて登良の後ろに隠れる。

「おやぶーん!助けてください!」
「わぶっ!!」
「あ、やば!登良くん大丈夫!?」
「……司、ちょっと、待ってて。ひなたとゆうた、しめてくる。鉄虎、ちょっとここでゆきだるま作ってて。ひなた、ゆうた。今度こそ覚悟しろや。」
「わわっ!アニキ、登良くんガンガンに怒ってるんだけど!?」
「ゆうたくんが投げたから!」

にげろー!とひなたゆうたが逃げ出して、登良が迷うことなく雪を踏みしめて、脱兎のごとく消える二人を登良は一気に駆けて追いつく。二人の襟首を掴んで、勢いを止めて二人の耳元で「ゆうたくん?ひなたくん?覚悟できた?」と猫なで声で囁く。二人の悲鳴が高々と響いてなずなに諌められて、ちえーと唇を尖らせると同時に、登良を怒らせてはいけないという『Ra*bits』内での暗黙の了承と共に『一年生の首領』という不名誉な名前を得るのであった。




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