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学校の校門を潜ろうとしていると。司が校門前で座っているし、その前で月永が音符を広げ光が走っていた。混沌とした眼前の光景に登良は一瞬眩暈を覚えて首を振る。

「…朱桜くん?と、月永先輩?光?」
「みけじママの弟くんじゃねーか!…」
「…なに、してるんですか?」

ミッツのために雪を降らせるために考えてたんだよ。お前も考えるか?問われたので、はぁ・・・・と返事を返す。にしても、そもそも雪を降らせる。とは、書類用のパンチ等で穴を開けた後の崩なら雪っぽくなるのだろうか、と思ったが彼は雪だるまが作りたいといっていたのを思い出して、首を振る。それじゃあだめだ。纏まらないのだから。なにがあるだろう。小麦粉とか…いや、小麦粉がもったいないか。と思慮していると。突然光が飛び上がった。その声に登良は少し飛び上がったが、光は登良ちゃんごめんな!と謝って携帯を取り出した。

それはたしか五分ほど前だったと記憶していた。
光に手を引かれて来たグラウンドには一面の雪が積もっていて絨毯のように覆い尽くしている。…さっき雪が降ってたっけ?と思い返しても心当たりはない。登良は首をひねっていると、親分!天満くん!と鉄虎が寄ってきた。

「本当にすぐきてくれたッスね。ちょうど雪を降らせ終わったところだったんで、天満くんたちがお客様第一号ッス!」
「えぇっ鉄ちゃんが雪を降らせたってこと?鉄ちゃんいつの間にそんな特技を身につけたんだぜ?」
「鉄虎、説明。」

いやぁ、マンガじゃないし、特技でも雪を降らせるのは無理ッスよ。ここにあるのはぜんぶ、人工的に降らせた雪ッス。これだけあれば雪だるまも作れるッスよね。
思わぬネタばらしに、ちょっとだけ登良は安堵した。人間がそんな能力は持つはずないのだが、あの兄を見てたらできそうな気もしていたのだから。人知れずほっと胸をなでおろして、隣の光を見ると、夢がかなった様子でとてもうれしそうだ。

「ただ、この後撮影があるんで、雪だるまを作るのはその後になっちゃうッスけど」
「撮影なら邪魔だから、どこう。光。」
「いや、『流星隊』の仕事じゃないッス。これから『2wink』がCM撮影するんスよ」

へぇ。と声を出すと同時に、背中に衝撃が走って登良は踏ん張って何とか転びかけたのを踏みとどまった。親分!と声をかけられたが、登良は平気と答えた。

「ひなたくん、前を向いて走らないと危ないッス、転んだりぶつかって怪我するッスよ。」
「あはは〜、ごめんね、登良くん。危うく登良くんに地面とキスさせるところだったよ〜、支えてくれてサンキュね、鉄くん。」
「さすが親分ッスね、足腰強いッス!」

空手やってると強くなるよ。とだけ言う。光に大丈夫?と聞かれたが、まぁそんなに。なにもない。と答えてひなたの服装を整える。ありがとー登良くん、どういたしまして。と返事をするとゆうたがやってきた。置いてかないでといいながらプリプリ怒っている。

「んん?登良くんや司くんたちもいるね。鉄虎くんが呼び出したのって光くんだけじゃなかったの?」
「いや、グラウンドに来てくれって伝えのは天満くんだけッスよ、天満くん、親分たちと一緒に遊んでたんスか?」
「うん、司ちゃんには雪だるまになってもらったんだぜ!登良ちゃんはばったり校門で出会ったんだぜー!」

え?ちょっと言ってる意味がわかんないッス。でも、まぁ、楽しく遊んでたってことッスよね?親分。…たぶん?と首を傾げながら登良はそう答えた。いきあたりばったりでよくわかってないんだ。と告げると、なかなか振り回されてるんスね。と鉄虎に憐れんだ目をされたが登良はそうかな?と首を傾げた。小さなころから兄に振り回されてたこともあるのでそんなに苦ではないのだが、そもそもそれがおかしいのだろうかと、考え込む。思い返せば、晴れてるから海に行こう!と言って小学生にあがってすぐの兄に連れ出されて親にとても怒られた記憶がある。振り回されてるのは…よくあるなぁ。と考え込みすぎていて肩を叩かれた。ふと顔を上げると、あんずが心配そう登良を見ていた。

「先輩?」
「お仕事しない?」
「お仕事、ですか?」

に〜ちゃんに許可貰わないとなぁ。と登良は携帯を取り出そうとしたら、光が寄ってきて、どん!と体当たりされても登良はそれを甘んじて受けて、最後に落ち着けと光を落ち着かせつつ、あんずから企画書をもらう。一通り通してみると、『2wink』単体のCM撮影と、雪合戦のエキストラを交えた2パターン。と書いてあるので、おそらく後者なんだろうと判断を取る。

「好き勝手に遊んでくれていいからね?」
「…撮影中に雪だるまも作っていい?」
「勿論!!」
「天満君、そういうことッスから、撮影が終わる前に雪だるまをつくれるッスよ!」
「よかったね、光。」

微笑んで、隣の光を見るととてもうれしそうに飛ぶ。これだけあれば大きな雪だるまがつくれるぜ!本番ではレオちゃん先輩も##name_1##ちゃんも手伝って!と##name_1##の袖を引くので、##name_1##はうん。と大きくうなずいて、返事をする。手を引かれて動こうとすると視界にちらっと司が目に入った。

「あのう、お姉さま。私もCMに出演するのでしょうか?いえ、嫌ではないのですけど。」

雪遊びとは、雪玉を投げたり、雪だるまなどを作ったりするのですよね?と問われて、司ちゃんCMに出ないの?と光が首を傾げる。どうしたの?と言わんばかりに登良は同調して首を傾げる。いや、と困惑しながら司は、「作ったことがないから三人で作ってほしい」と告げるので、登良は簡単だよ。一緒に作ろう。と登良は司の手を取る。レオが割って入った。

「馬鹿なことを言うな。雪だるまを作ったことがない?上等上等っ、雪遊びは難しいことは抜きにして楽しむもんだろ?こうして適当に雪玉を作って、その上に雪玉を乗せればもう完成だっ!」
「月永先輩、目と鼻と口がないですけどね。聞いた話によると、日本はだるまの概念があるから2つ、外国はだるまの概念がいないから3つの雪玉で構成してるみたいって聞くけど、光どうしたい?作ってから調達する?」
「んー俺とレオちゃん先輩で一個づつ作って司ちゃんと##name_1##ちゃんで一個作ってー!やっぱりみんなに手伝ってもらわないとなんだぜ!」

そうだよなー、スオ〜もいないとなっ!もうみんなして…いいですけどね。仲間に入れてもらえるのは嬉しいですし、三毛縞くん一緒に作りましょう。と言われて、「##name_1##でいいよ。苗字で呼ばれると兄もいるから。…司、って呼んでもいい?」と登良は司に問いかけると、一瞬驚いてから喜んで!と手を差し出してくるので、遠慮なく登良はよろしく司。と雪だるまを作りかけようとしたが、服着替えてー!というあんずの声に我を取り返して、二人でちょっと恥ずかしくなって笑いあった。




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