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レッスンを終えて、グラウンドを突き抜けて帰宅しようとしていると見慣れた背中があったことに気がついて、そっとそこまで寄って背中を叩く。「光。」鈴の鳴るような声がそういう。光と呼ばれた背中が振り替えって、「登良ちゃんだぜ、おはようだぜ!」と笑う。登良はつられて、おはようと笑顔をこぼし、どうしたの?と問いかけた。
レオちゃん先輩と雪だるまが作りたかったんだけど、グラウンドも除雪車が入ったみたいで全然雪が残ってなかったんだぜ…。光が肩を落とすので、登良はその肩を慰めるように叩く。明日には振るよ、てるてる坊主作る?と声をかけてそうだぜ!と明るさを取り戻す光に安堵する。寒いし、レッスン場所にいこうと、促そうとすると向こうから大晃牙が何かを探すそぶりでやって来た。

「あれっ、晃ちゃん先輩だぜ!何でこんなところにいるの?晃ちゃん先輩も雪だるまを作れるかなと思ってグラウンドに来たの?」
「あぁん?天満に三毛縞じゃね〜か、何で俺様が雪だるまを作るためにわざわざこんなところまでくるんだよ」

一緒にすんなと、光の眉間をつつきながら、俺様は大吉がいると思ってきたんだけどよ。お前ら見つけたら教えてくれよ?と付け加える。大吉?アイドル科にそんな人がいただろうか、歩くフレンドリーシップマンの兄から聞いた覚えもない名前だな、と考えていると犬だと教えられた。どうやら、その大吉というのは、ひとつ上の先輩の犬らしい。飼い主のその人が『SS』で忙しいからと様子を見に来たらしい。光が先輩は怖いと思ってたけどちゃんと話したらそうでもなかったんだぜ!あっけらかんと笑う。これも行き合った縁だろうと考えて登良も手伝いをかってでた。が、まっすぐ帰れといわれて確かにそうだと納得する。俺が疲れたら一緒に帰ろう?と光を説得し、口約束を取り付けるが、そのまま走り出そうとする光の首根をつかんで晃牙が、お前は犬かと声をあげた。飼ってる犬がーと言う話を登良は聞き流しているが、光は真面目に聞いているらしく。「じゃあ、晃ちゃん先輩も雪が降ると嬉しいの?」なんていう。

「じゃあってなんだよ。俺様は犬じゃなくて狼なんだよ。雪が降ってもうれしくね〜し。」

むしろ降ったら交通機関が麻痺するから嫌だという。雪が降ると体感温度が下がるような気がして、登良はぶるりと震え上がる。あぁ、いやだ。と首を振ると、登良ちゃんも雪だるま作れると嬉しい?と振られて、どうだろうかと考えるが、答えは簡単だった。自分が外にでなければ問題ない。「窓の外でみんなが作ってるならうれしいかな。寒いからやだ。」えー。と口をとんがらせる光に、どうやったらこの子は動くだろうかと考えたが、その思考もすぐに壊された。

「親分!大神先輩見て…いた!!!大神先輩見つかってよかったっス!俺がモタモタしてるから、どっかいっちゃったのかと焦ったッスよ!」
「その辺を散歩してたら、三毛縞と天満に出合って少し話し込んじまったぜ」
「親分と、天満くんが大神先輩と一緒にいるのは珍しいッスね、親分天満くんチィ〜ッス」

黒と赤のストライプマフラーをした鉄虎が手を振るので、登良と光が手を振り返す。鉄ちゃんと晃ちゃん先輩がそんなに仲がいいとは思ってなかったぜ。二人してどこにいくの?オレも混ぜてほしいんだぜ!な登良ちゃん。振られたので、疲れたら帰るよ。と前持っていっておく。鉄虎は気にすることなく、俺と大神先輩は待ち合わせ場所に早くついちゃっただけッス。そっちはなにしてたんスか?さっきまでレッスンがあったんだけど、終わったんだぜ!鉄ちゃん待ち合わせ場所に早くついちゃったって言ってたけど、他にも誰か来るの?残りは『流星隊』のメンバーと『UNDEAD』のメンバーっすから、まだほとんど来てない状況ッス。まぁ待ち合わせより一時間以上早いッスから、早く現場入りしてる隊長や仙石くんもさすがに来てないッスよ。
そう考えると、鉄虎も大神先輩もはやいのはどうして?と聞くと、犬の散歩で時間が余ったから来たという晃牙にそんなものなのかな。と納得する。

「お仕事ですか?」
「俺たちはMVの確認に来たんスよ」
「【スタフェス】で作った曲?」

俺たちもね〜ちゃんにMVをつけるからって言われて撮影した覚えがあるぜ。光に言われて、登良もぼんやりと先日の撮影を思い出した。いつも通りのパフォーマンスができていない気がして気にしていたら、大丈夫だよと創がいっていたのはよく覚えている。過去を思い出していたら、光に疲れた?と聞かれたので登良はふるふると首を振った。

「二人ともこどもかよ。三毛縞を見習え。ほら、校門前に戻るぞ。」

はーい、三人で返事をして、お前もガキだな。と言われて上からがっしり撫で付けられたのだった。





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