20210228HPB!!!






登良の思考はフリーズした。
電気のついた人気のない事務所に足を踏み入れた瞬間に、人が飛び出して誕生日おめでとうの掛け声が飛び交った事に思考がすべてを消された。事務所の面々からおめでとうと口々に言われても、登良の止まった思考では理解ができない。そのまま一番近くの大きなソファーに促されて座らされた。

「登良くんや、どうしたんじゃい?」
「固まっちゃってどうしたの?オレンジジュースがいい?」
「……えと……朔間先輩?羽風先……ぱ、い。」
「ほら、せっかく誕生日だし?あんまり登良くんって甘えたがらないから甘えてもらおうって零くんがね〜。」
「……せ、んぱい?」
「じゃから、我輩たちの元でたんと三毛縞くんに変わって」

二人の間でおろおろと目線が泳ぐ。ユニットの仲間はケーキや飲み物やとリズムリンクの事務所を走っている。俺も手伝いたいと席を立とうとしたが誕生日の主賓だから駄目だと椅子に座りなおさせられた。年上の先輩に囲まれることに慣れてないからか居心地が悪くて、この場でくつろげる気がしない。
目線をさまよわせていると、ジュースやお菓子の手配を走っているユニットのメンバーが視界に入った。ふと先頭にいた創と目が合って手を振って足を止めると必然的にその後ろにいたほかのメンバーも足を止めた。

「登良くん、お誕生日おめでとうございます。あとでケーキを持っていきますからね、待っててください!」
「創……」
「朔間先輩たち困らせるなよ、登良。お前は今日ゆっくりしていいんだから!」
「友也。」
「登良ちゃん、一緒に後であそぼ!」
「……光……」
「もう、登良ちん泣きそうだな?どうした?」
「に〜ちゃん、おれも、働きたい…!」
「えぇっ!?お前が主賓なんだぞっ!?」

なずなが驚いているけれども、考えれば登良は寡黙に働く方が楽しいとも思えるタイプだったことを失念していた。よく働くからと事務所の面々の総意に近い形だったのだが、本人が頑なとなってしまっては誕生日会としては意味がないのだろう。

「登良ちん、じゃあおれと一緒にお菓子を取りに行こうか!」
「うん!朔間先輩も、羽風先輩もありがとうございます。ほら、に〜ちゃん行こう!俺の誕生日会楽しんでください!」

俺働く方が性に合うので働いてきます!と一言残して走りだした。
残された零と薫は、お互い顔を見合わせて、小さく笑うのであった。



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