お手紙企画!






登良は今しがたもらった企画書を見て、首をかしげた。ESビル、四大事務所全員を巻き込んだ企画。アイドルに手紙を送ると抽選でアイドルが自らレターセットを選び当選者に手紙を書く。という企画であった。事務所に集合と言われてやってきた登良は、メンバーと共に企画書を見て登良は頭を抱えた。
この企画、参加者側に最初に送るアイドルを選ぶという行為が発生している。大御所から新規参入まで考えておおよそ人数は100を下らないに近い数がいたと記憶している。先日『NEWDIMENTION』の副所長が企画したアイドルの掘り起こし企画の前に人数を確認したからある程度の変動はあるだろうと思うが、近似値であることに間違いない。それほどの人数の中から一人を選ぶだとか、正気の沙汰でもない気がするし、もしも、仮定として選ばれなかったら事前に書いた手紙はどこに消えていくのだろうか。書いた手紙は無駄になるのかもしれない、なんて考えると無性に胃が痛くなって胃を押さえると、友也がどうかしたのかと声をかけるので、登良は素直に事のあらましを伝えるとなずなはため息をついた。

「きっと、選ばれる。よね?」
「そんな吐きそうな顔で言うなよ。大丈夫だから、落ち着け登良」
「う、うん」
「大丈夫ですよ!登良くんの応援団扇も見たことありますし!」
「そうだよね、、きっとくるよね。」
「だから、フラグ作んな」

あぁ、俺。そういえば、夕方空いてるからレターセットとペンを買いに行こうと思い浮かぶ。事務所から支給だとあまりにも無機質だからと、レターセットも個人で買いに行くようにとのお達しが出ているので、早々に予定を組み立てる。ぼんやりと何を書こうかとか思い浮かべては消してを繰り返していたが、あとで考えようと思って思考をそこで切って、当面のスケジュールや打ち合わせを進めた。
じゃあお疲れ様、と声をかけて変装用の薄い色付き眼鏡とマスクをしてESビルから出る。目指して歩くのは一番近くの繁華街。昔から小道具や細部のものを買いに来ることも多いので、勝手知ったる自分の庭のようなものだ。
ユニット色に合わせた青がいいかな。と思いながら店をめぐる。この際だからとペンを新しいものを一本買おうと足を向けてる間に壁にかかったレターセットが目に入った。

「……ウサギのお尻……」

それを見て思い浮かんだのはユニット曲の一説。柄に出てくるウサギは三匹。前を向いたのと後ろを向いたの。後ろを向いて寝そべっているもの。その三匹の色合いやキャラクター性が光と創と友也に似てる気がして、小さく笑ってしまった。きっと喜んでくれるだろう。一つを持って、改めてペン売り場に向かう。いろいろとシールを探していると、似たウサギ柄を見つけたので、それと近くに売っていた小さな花がフレークとして売られてるものを一つ手に取って、ウサギの毛色に似たセピア色のペンを買い込み、領収書もしっかり貰う。早く色々書きたいな、なんて思いながら店先を出ると、もうすぐ夜が近い。星奏館までの道のりで明るい場所を通ろう、とか考えながら登良は急いで寮へと向かうのであった。



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