俺と不羈!女神のトラブルライブ 7e 





え?俺が円陣の音頭とるの?いや、こういうの普通先頭に立つ人でショ?えー俺カリスマ性ないから、あー天満。お前とれ。オレ!?いいから、ゆらぎちん時間ないから、早くやりゅんだぞ!わかったよ。あいあい、全員カタコンベ。誰が要塞なんですか。ごめん、間違えた。酷い間違い!んじゃあ肩組んで〜。

「四部構成、がんばりまっしょ〜い」
「絞まらないなぁ、

なんでもいいからって言ったの仁兎お前だろ。とか思いつつなかなかだらしない珍しい音頭となった。
そのまま薄暗いステージに全員で上がる。所定の位置について、ふっと俺は息を吐いて回りを見る。全員所定の位置についたようで確認が終わって、靴を鳴らす。アルカナイの前の。『Diana』の始まりはいつもこうだった。
俺が四つを鳴らして、ピルエット。四拍ごとに一人づつ増えて、全員で回り出すと音が流れるように指定している。俺が中心になってるので、俺の速度に全員が合わす。スピードが狂えば音楽の入りもずれるので集中力が必要だ。アルカナイ人々の入りはゆっくりなので調整する必要はあるが、失敗することはほぼほぼない。
俺が入って、つぎにつむぎくん。そこから紫之対策でペア毎に回るようになっているので、時間は早い。ぐるりぐるりと回っているとクルテの裾がふわりと浮いた。そろそろ全員が回り出すのでインカムから薄く音が流れ出す。入りに調整をかけて音の出だしと同時四拍前からうたいだしにかけて靴を鳴らす。最後の四拍目で高く飛べば、アルカナイの人々が始まる。
歌おうぜ踊ろうぜ、戦争なんか忘れてさ。そんな感じの歌の始まり。始まる前に一声かけたのだが、観客からの反応が鈍い、おかしい。仕込まれてたか、ゲネまでうまいこといってたのに、マイクの調子がどうもおかしい。ん、と思ったが始まっているので仕方ない。つむぎくんの方を見れば、ちょっとわかんないです。みたいな顔されたので、俺は急遽舵を切る。
どうせマイクが壊れてるなら、俺のマイクは必要ないし、バックコーラスはそれなりにいるのだ。つむぎくんの手からマイクを奪う。君のハモリパートは一緒のマイク使おうな、と声かけて、俺は歌い出す。一曲目にこれを持ってきて正解だったのかはわからないが、男女のコメディチックな動きは観客に受けているようで、ちょっと安心する。つむぎくんのパートが近くなってきたので、二人でマイクを共有しつつ、そのまま問題なく動かすが、2番から男役メインの歌になるので、マイクはこれ以上借りれない。どうするか、と歌いながら思考した結果、ほかの女役とシェアするために、つむぎくんが歌っている間にほかのペアにちょっかいをだして一緒に唄う。
ついでに俺をメインで見に来た人にたいしてのバックのアピールを兼ねる。事情を察したのか、歌ってる間に夏目と俺の壊れてるマイクを交換して、アルカナイの人々をつつがなく終わらすことに成功する。
そのままメドレーでディアーナの騎行のサビから入る。変拍子のこの曲は、魔女の集会が始まるぞ。動物に乗っていくぞ、と歌いながらも最終は火炙りを逃げてなんとかなったぜヒャッハーする歌だ。
ケルト調なので、膝はガンガンに使うが踊ると楽しい曲なんだよ?ラインダンスしてカンカン地面叩いて、飛んで。全員で背中を合わせて踊る、言っちゃえばあれだよ。洋風盆踊り。
ただしハイスピードに倍速的な。そんな曲をむりくり終わらせて、ぶちっと切るように繋ぎの楽曲が流れてメドレー3曲目のペルセポネが流れる。
地獄の神ハデスの嫁(意訳)。となるペルセポネの地上に帰りたいを願う歌。
ケルトの雄大な音楽と共に聞かせる歌なんだけど、俺は歌の方があんまり得意じゃないので、この曲に限り紫之や仁兎の力を借りてこの曲を歌い上げる。ハデス役俺、ペルセポネ仁兎と紫之。声質の問題な。
これさえ乗りきったら、と思っていると、サビ直前でぱつんと照明が全部落ちた。スポットライトだけが以来通りに唄う俺と紫之と仁兎を照らしていた。音はまだ流れてる。ステージ脇からあんずが飛び出していくのがわかった。きっとあんずがなんとかしてくれるのを確認して、俺は、全員の様子をチラ見する。マイクは生きてるのでそのままみんな歌っているし、さすがはアイドル。躍りはやめてない。ほっと胸を撫で下ろしながら、俺はバックダンサーにも光が当たるように緩やかにステージ全体を使って踊る。
歌はそのまま仁兎と紫之に任せよう。彼らの後ろを通るときに、仁兎俺のパートよろしく。と耳打ちしてやれば、一瞬驚いてたがゆっくりリズムに合わせて仁兎が頷いた。それを確認してから、俺はペルセポネになりきって歌詞通りの表現で踊っていく。
やれ激しいものはないので、ゆったりとそのまま体を動かす。次の曲は完全に一人になる予定なので、今の間に最終的に体の可動域を再確認を行っていく。最後の最後にハイスピードケルト足技オンパレード曲するんじゃなかった。と捻挫の足と後悔しつつ、ここまで公に踊れるのも久々なので、日頃のストレスを……主に事務所の担当者。かっことじる。に対する当て付けのように踊ってやろうと心に決める。ピンスポットの光を浴びて目が焼けるほどの光に手を伸ばし落とす。
ふとPA席を見るとあんずがそこに立って俺たちを見ていることに気がついた。どうも、事務所の影響があるっぽいけど、大丈夫ですよ。と言わんばかりに胸を叩いている。
お前は強いよ。と思いながら最後まで躍り通すと、曲が終わる。仁兎と紫之がぺこりとお辞儀をすれば拍手をもらい、照明が一瞬弱まる。その間にマイクを受け取ったり全員はけていく。彼らを見送って、最後の『Diana』パート最終曲、俺のソロ曲。遠矢射る。が始まる。それと合わせて俺の靴を鳴らす。
月の女神『Diana』は表情を変えていくよ、新しい顔を見せて変わっていくよ。とかそんな感じの曲。その一部を見せたげる。という歌ってる歌詞はめちゃくちゃ怖いこといってるのに、中身はハイスピードで捲し立てる歌だから、俺の腹筋死ぬよね。肺活量死んでるよね。っていう歌。なんでこれライブにいれたのっていうけど。こういうときしか合法的にハイスピードケルト出来ないの!つむぎくんに禁止されてんの。たまにはこういうのもいいよね。っていう、やつだよ。
スポットライトの光浴びて、俺の思うがままに世界を作り替えていく。この感じがひどく好きで、もっと踊っていたいと体が行っているが時間は有限。このあとはバックダンスだし、四部目まで体力と脚はもたすけど。もっと光をあびてたいな。って思うからやっぱりアイドルっていうか、踊ることが好きだな。ってやりながら思う。
今回はかなりどたばたした部分はあるけど。もっと詰めて煮詰めて新しい一面を見せていきたいし、ライブをしたい。依頼うけてやるとなるとたくさんの柵が出てくるだろう。だから、俺はこうやってスポットライトを浴びながら、いつか自腹のソロライブやってみたいな。とか考えつつ足を動かす。元気な右足ばかりつかってたので、右足が痛みを訴えてきた。痛む左足を使いながら、躍り俺の残りを根性でカバーしてなんとか大きな問題なく終わらせることに成功する。
メドレーが終わって、はけていたつむぎくんたちが帰ってくる。
そのままつつがなく『Ra*bits』も『Switch』のもあんずが機材席で見張っているお陰かつつがなく終わって、四部目に入る。『Ra*bits』でくったくたになった俺は一瞬足の痛みで固まることもあったが、上手くカバーして誤魔化すに成功する。
そのまま四部に入るので、俺は三部目から四部目メンバーでラインダンスを組み込んだ。ショー用の映える振り付けだ。左右の足を交互に高く蹴りあげていると、俺の横につむぎくんが来るが反対側を向いて腕を組む。ぐるぐる回りながらリズムを刻む。一瞬腕が離れるので組み直しリズムを叩けば、一人増え二人増えそして全員でラインダンスを踏んで四部目に突入する。
そのままほどけていくように離れて等間隔ぐらいに幅をきかせれば、こらからVJ のお仕事と融合する四部目は最前面に薄い白の布を使ってプロジェクションマッピングみたいなことをするらしく、俺たちの目の前に薄い布が一瞬で、通っていく。
カーテンみたいなのが、一枚通ると、まるで幻想的な空間が一気に出来上がってきた。なにもないところに壁ができてドアができて開く演出が入る。
今までのおさらい。と言わんばかりに白いスクリーンから切り目が浮かんでドアが生まれて、回りには先程のメインパートの写真がはりつけられていく。リアルタイム対応できるというのがこのライブ会場のVJの強みらしい。腕はいいけど性格難あり。だが、事務所の担当者よりかなりましという答えに行き着いてため息をつきながらもそのまま続ける。
練習と同じ絵を流してくれと頼み込んでやっとここまできた。まともに終われる気配が見えてきてテンションがちょっと踊る。
踊らない間は歌唱にかかるんだけどさ、各ユニットは『Ra*bits』に草原と昼。『Switch』に夜と蛍の光。化学物質も使ってやらわかや光を生み出すらしい。幻想的なステージになりそうだ。とおもっていると『Switch』の担当分の映像がゆらりと姿を替えた。『Diana』のは砂漠と夕方だったはずなのに映像が全くない。代わりに写るのは夜のマングローブの森の映像が流れてるのを確認してそれに合うように俺は規程分を踊る腹を決める。
水の上をわたるように身を動かして、水面を踊るように足を動かす。うすい水溜まりに足を入れてしまったような足取りで中央に出ると、そのままクルテを小道具として扱い頭に被る。そのままグルグルと回ってから、砂嵐を表現する。
即興的な躍りなんてあんまりしたことなかったけど、これはこれで楽しいかも。今度やろうと決めて、スポットライトを浴びながら俺は溶けていくような暑さを覚えながら柳のようにしなやかに踊っていく。
俺の持ち分が終わればほぼほぼ終わりなので、俺はリズムに合わせて切なく手を触れはサイリウムが揺れる。きれいな光景に見とれかけた。
ステージで俺一人でなんて、いつぶりだろう。というか初めてかもしれない。目の前に広がる光景を見ていると時代は変わったんだと嫌でも自覚させられて。やっぱり泣きそうになった。俺は暗い場所で待機してるメンバーを全員引きずり出して全員でサイリウムを振るようにリズムを合わせてファンも俺たちも同じように揺れている色とりどりの波はしばらく忘れれそうにないほどきれいだった。
そしてライブはかろうじて成功というところに着地させることに成功し、みんなで何となかったね。と一安心するのであった。



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