俺と不羈!女神のトラブルライブ 6 





ライブ当日からトラップばかり仕込まれてた。PAが居ない、VJが貰ったデータと微妙に異なってる。事務所で手配するという人員は事故で間に合わない、ステージ寸法が多少足りてない。エトセトラエトセトラ。仕出し弁当俺の分がないとかまで数え上げるときりがない。弁当は別にいい、コンビニに走るから。走らせるから天満を。ステージ寸法は仕形ないので微妙に全部のフォーメーションを変更するで手を打つ。PAは仕方ないので、放送委員の伝をたよる、VJは頼み込んで練習と同じぐらいのに再生速度を変更して貰う。人員は俺の私兵を使う。あとで事務所に払わせるからいい。俺は全部のことに対応していると近くの私兵のスタッフが俺を呼んだ。なんですか、と歩いていった瞬間に、ステージの柱が俺の方向に倒れてきた。とっさの判断で避けたが杖ついてた俺はとりわけハデな音をたてて柱の下敷き。軽い柱だけどさ!!っていうかこういうのって土台しっかりしてない?っていうかこれもトラップだろ!とか思いつつそこから抜け出す。

「青葉さん!」
「青葉先輩!」

ゆらぎくん大丈夫ですか?と真っ先につむぎくんがすっ飛んできた。俺がビックリだよ。セコム。つむぎくんの手を借りて立ち上がると。左足に鈍い痛み。どうも挫いたっぽい。一瞬の歪みも見逃さないセコムは俺を睨む。俺は視線を合わせない。見つかったら即効中止の提言も出てくるのだろう。しかし先方は、俺をご所望なのだ、俺が引くことは出来ないのだ。騒ぎを聞き付けたあんずも救急箱を片手にやってくる。一旦先程のスタッフに内容を聞くと物販関連だったので、あんずに投げる。

「あんず湿布頂戴。で、こっちのスタッフ対応宜しく。物販関連だって。お前の方が明るいだろ。だれかに湿布はってもらってなんとかするから。」
「絶対ですよ!ゆらぎ先輩そういうの誤魔化すでしょう!」
「大丈夫、大丈夫。他の人に張ってもらうから。」

青葉先輩、おねがいします!とあんずはつむぎくんに湿布を託してスタッフの方に動いていった。とりあえずつむぎくんに肩を借りてひょこひょこ控え室に戻れば一年生たちが心配そうに俺を覗く。天満が突っ込んでこようとするのを真白に止めてもらって、俺は椅子に腰を掛ける。だいたいの事情を聞いた仁兎が俺の足を見て噛みまくるので、落ち着けと軽くチョップ。どうせ軽度の捻挫だし、これぐらい想定の範囲だと告げると、仁兎が真っ青な顔色をしていた。お前も事故でやられたもんな、とか喉から出掛けたが飲み込んで仁兎に笑い掛ける。大丈夫、俺一閥だぜ?アイドルは裏なんて見せないもんさ。と笑って、つむぎくんに湿布を張ってもらい、夏目に俺の鞄からテーピング用のテープを受け取って俺はさっさと張っていく。
佐賀美ちゃん直伝のテーピングを施し、立ち上がる。それなりに痛いが動けないほどでもない。膝は無事だし、右足は通常運転だ。いける。と俺は判断を下して、今回一番激しい動きのモーションを降ってみる。靴に多少の違和感はあれど、踊れないことはない。ごりっとむりやりやるだけだ。とりあえず湿布を張ってもらったことに礼を言って、そろそろ着替えるかと思ったら、あんずからのヘルプコールがスマホに入る。俺も対応するべく部屋を出ると、夏目に呼び止められる。

「ゆらぎにいさん。」
「なんだ?」

にいさんはもっと回りを頼りなよ。と言うが、大丈夫に、俺は今回決めたことをしてるだけだから。苦手なことはあんずに投げてるから問題ねえよ。今回お前らに救われてるから、安心しろ。んなことに魔法とか使ってるなら、お前もそろそろ衣装に着替えとけ。と笑って部屋を出た。そうだよな、俺は救われてんだよ。と自覚したよ。たぶん、あいつらだったらそのまま対外的なポーズしかとらねえもん。知らねえけど。

「あんがとな、みんな。ちょっとあんずが呼んでるから行ってくる。」

ちゃっちゃか行けねえけど、あんずの元に着いたら、物品が思った以上に多すぎるらしい、詳細を確認すると誤発注をかけていたようだ。勿論事務所が。どうするか、余った分は夢ノ咲学院で買い取って貰うかユニットで買い取る……『Switch』と『Ra*bits』か……『Knights』とかなら問題なかったんだけどたぶんこの量。わかった、俺のユニット活動費で一旦支払って、そっから考えるぞ。収益の原価分はあとで俺に還すようにしておいて、あとは余ったら学院に送り返してあとで生徒会と一緒に抗議かけっぞ。と指示を出して、俺は衣装に着替えに戻るけど、何かあったらすぐ連絡宜しく。とあんずに礼を言ってから来た道を戻る。腕時計を見るともうすぐ幕が上がる。急いで着替えなければなんて思いながら俺はふと顔をあげるとあいつらが立ってた。俺を処刑台に送ると言った5人だ。

「ゆらぎ、」
「俺の面でも眺めに来たのか?」
「お前の失敗を見に来た!」
「そ、じゃあ残念だ。今回は成功させっから。」

お前たちがなに仕込んでも俺は交わして今回の俺の子たち全員を無事に終わらせてやんよ。時間だし俺は行くけど、ま、成功する様を見て行けばいいんじゃないの?事務所に言って関係者席とってんでしょ?俺の足の治り具合見てびびってけば?そう相手の怒りを撫でておく。扇動させるのは俺の十八番。煽るのはお手のもの、昔とった杵柄というか、やってたことって変なところに繋がってくるよな。とか思いながら、あいつらの前を通って、控え室に戻る。外面いいやつばっかだからあれだけど、暴力的な奴等じゃなくてほんっと良かった。と思いながら控え室に帰ると俺は急いで着替えをする。ユニットカラーをふんだんに使ったクルテに各ユニットモチーフの刺繍。俺は葉の模様がふんだんに入ったイエローの衣装に袖を通してインカムをつける。回ると揺れる衣装の裾はピルエットしたら綺麗なんだろうな、とか考えつつステージ脇に皆で移動する。真白が『Diana』の衣装を、と絶賛してるので、お前が『Diana』が好き。って言うから一曲目にアルカナイにした。って言うと、めちゃくちゃ泣き付かれた。始まる前からそんな顔すんな、歌って踊って楽しめ、アルカナイの本質だ。そう言ってやれば、嬉しそうな顔して精一杯楽しみます。と笑ってくれた。

「真白、もっと笑え。せっかくのステージ楽しんでけ。」
「勿論です!」

そのまま視線を動かして、隣の紫之を見る。ちょっとクルテに慣れてないのか、そわそわしている。俺が声を掛けるとちょっとびびってか体を震わせてから俺の目を見た。緊張してるのか視線がチョロチョロ動いている。ほんと小動物って感じだな。なんて感想を俺は持った。

「はい、ゆらぎ先輩どうしましたか?」
「頑張ってるの見てたから、自信もって歌ってけ。そしたら体もついていくる。」

そういえば首が取れるんじゃないか、って言うぐらいに首を縦に振って頷かれた。視線があって俺はふっと笑うとその隣の天満を呼ぶ。あんまり交流出来なかったが、こいつはひたすら高く飛ぼうとするので困難だったが、最終的に両隣と合わせる事には成功してるので身体能力は多分一年の中でもかなり抜けてる方だと思う。呼べば、嬉しそうにニッと笑うので俺もニッと笑って、胸を張る。

「俺の『Diana』のパートで我慢させてごめんな。その分『Ra*bits』パートで思いっきり跳べよ。俺も一緒に跳んでやるから。」
「勿論だぜ!青ちゃん先輩のおにーさんも一緒に飛ぶんだぜ!」
「みっちゃん、うれしそうなのな〜」
「宙、俺の色どんなの?」
「せんぱいのせんぱいは、今とっても水彩みたいで嬉しいとありがとうの色でいっぱいでキラキラしてます!」

そっか、俺今、キラキラしてるの。お前たちのお陰だから、あとになると言いそびれるから先に言わしてくれ。ありがとう。
そう伝えると、一年たちはみんな顔を見合わせてから声を揃えてありがとうございました。と頭を下げられた。ちょっとそんな卒業式みたいなのされると困る。まだ、半年以上あるっての。と思いつつ、たじろぐ。俺の様子を見て夏目がくすくす笑ってる。お前、楽しんでるだろ。と睨んでやれば、さぁね。としらを切られた。ちぇ、つまんねえの。

「にいさんがにいさんであるのは、今まで歩んできた道だよ。どんな道を通ってきても今がある。」
「魔法とか使うなっての。ま、あんがとな。」
「今回はゆらぎにいさんのため二って言うよりもモジャ公がぶれないからネ。」

仕方なくの体をとり続ける夏目に俺は苦笑を浮かべて、夏目の背中を叩く。痛いとか言われたけど、そのまま俺は笑って奥に進む。仁兎が落ち着かないのか、体を揺すってリラックスを計ろうとしているのだが、あまり効果が無さそうで繰り返しの動きをしていた。俺は仁兎、と呼んでやればあんまり動くなよ。とお説教が始まるのではいはい。と受け流して、な、と話しかける。

「志願してくれてありがとな。助かったよ。」
「おれらも色々あったけど、新しいことも覚えれたし、『Ra*bits』で使ってくよ」
「振り原案なら任せろってな。」
「こういうところちゃっかりしてるよなぁ」
「事故は起こさせねえよ。安心しろ。」
「背中はかりるよ。ゆらぎちん。」

今日はよろしく。そう声をかけて、最後につむぎくんを探して声を掛ける。『Switch』で固まってたらしく、夏目にぐちぐち言われてた。つむぎくん借りていいー?と声をかければ、こんなモジャモジャいらない。とつむぎくんが捨てられた。というか蹴られてた。ほんとお前らにバランスいいよな。とくつくつ笑えば、笑わないでくださいよ。とちょっと悲しそうに眉を下げた。

「『Diana』パート、よろしくな。パートナー。」
「もちろんですよ。俺で勤まるかわかりませんが、精一杯頑張りますよ。」

俺、実は『Diana』の一番最初のライブ見に行ってたんですよ。友達からゆらぎくんのブロマイド見せてもらって、ファンになって。偶然が重なって家族になって、同じステージとか夢物語描いたりしましたけど。ゆらぎくんは事故で半分引退みたいになってましたし、いつか同じステージに立てるのがって思ってました。今日それが叶って、そしてその相手がゆらぎくんで俺は嬉しいんですよ?
あれ、俺ありがとう。って言いに来ただけなのに、逆に誉め殺しされて顔真っ赤になるパティーン。ステージ脇で照明が薄暗くってほんとに良かった。つむぎくんに見えないように顔を仰いでいると、「つむぎちん、ゆらぎちん、そろそろ幕が上がるから円陣組もうぜ。」と仁兎が寄ってきて助かったよ。ほんとありがとう。



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