俺とスカウト 悪魔の館。 2 





放課後、三人で繁華街をふらつく。とりあえず青葉家晩御飯の支度の俺。そしてつむぎくん凛月で別れて行動する。
俺は俺で今晩の材料になりそうなものと、つむぎくんにつくってもらう用の俺の大好物。じゃこおかかちーずの具材をかいこんでる間に、ぼんやり考える。そろそろ『Swich』も活動を始め出すらしいので、俺はひっそりウキウキしてるわけなんだけど。八百屋で必要な野菜を買ってると、青葉先輩!と転校生と双子の一人が声をかけてきた。その後ろを朔間が歩いてきている。なんか珍しい組み合わせだな、と思えば、あんずはいつもと変わらないえがおで、こんにちは。と挨拶をかけるので、俺も、返事をうつ。

「買い物ですか?」
「つむぎくんと別れてあとで合流。予定。」
「ほんと兄弟仲いいですよね。青葉先輩たち。」

カラカラあんずが笑う。きちんと兄弟になったのは最近だけどな。と言うのをやめて、お前ひなたのほうだな。と考える。その奥のさくまをみて、昼間にああ光景を思いだした。

「青葉先輩は、弟さんいましたよね。同じ学年に。」
「ん、俺がダブってるからね。ややこしいし、ゆらぎでいいよ。あ、おじちゃん玉ねぎ追加で頂戴。」
「ゆらぎ先輩ってあんまり、ベタベタしないかんじですか?弟さんとは。」
「いやーうちの家が普通じゃないからなんとも言えないけどさ。」

朔間とか、葵のところが普通だと思ってるよ。最近出来た兄は、家にもなかなか帰ってこない。俺とは血は繋がってない兄は、よく知らないし。黙っててもいいだろう。小学校中学まともに通ってないし、中学から高校に入るまで一年空いてるし。頭のやつ以外全部飲み込めた俺偉い。朔間は朔間で暴走するように己を抱いて、弟について好き勝手話している。その間にあんずから行動の目的を伺うと、合同ライブの下見と買い出し。だと言う。ふーん。と返事をしておれは、あんずの持っていた地図を奪い一個丸をつけて返す。

「じゃあ、下見に行くならここも寄っとけ。ここならある程度の原案も出やすい場所だよ。世間を知るにはちょうどいいと思うから一回時間があるなら寄れば?」
「え?」
「買い物いくんだろ、見てやるよ。」

値切りから何から何まで、だいたいやってたし、見てやるよ。どうせ、俺んとこ後輩いねえし、一年かけてあんずにわけてやるよ。そう伝えると、あんずが嬉しそうに目を輝かせた。あ、この感覚なつかしいかも。とか思うと、あんずは俺の手をひいて繁華街を歩きだした、待って!俺は杖ついてるの知ってるよね。慌てて声をかけると、思い出したのか真っ赤になったあんずがひたすら頭を下げた。平気だからいいんだけど、後ろから視線がぐさぐさ刺さってる気がする。振り替えるのが怖い。そっと見るとつむぎくんと凛月がこちらを見てた。怖いんだってば、路地裏から見てんなよ。
まぁ、とりあえず俺のお抱えやらの引き渡しかねえ、繁華街ツアーごあんなーい。なーんてな。
パン屋から衣装屋、人材派遣とタクシーまで教えたところであんずがパンクしそうだと朔間に言われたので、今日のツアーはおしまい。

ひととおりのざっくばらんな紹介ツアーをすませて、買い物はすべて俺のコネクションを使って学院に送る。時間も余ったこともあって、ひなたの誘導でゲームセンターにやってくる。なんだかんだいいつつも、息抜きが必要ですよ!と主張するひなたに、賛同するわけでもないが、まぁ、たまにはいいんでねえの?朔間がグダグダ抜かすので、後輩力をフル活用して、遊びましょう!と彼は言う。荷物番をするという朔間だが、いいだろ。と俺は朔間の手をとって、店の中を歩く。

「ゆらぎくんは、強引じゃのう。お主は兄らしさはないのかえ?」
「俺もともと一人っ子だったし、いいだろ。たまにはさ」
「そうですよ。今日は俺が朔間先輩と転校生さんの『弟』になってあげます」
「それ、ただの後輩力じゃね?」
「もう、ゆらぎ先輩は!反抗期の本物の『弟』のことは忘れて、今日は俺をたっぷり甘やかせてください!」

後ろで、なんか壊れる音がしたんだけど、怖いんだってば。後ろ。ひっそりそんなことを思っていると、朔間は気が乗らないとか抜かすので、やれやれと俺は首をふる。なんでこんなに朔間兄弟はややこしいのかね。とあぐねたが、ひなたが説得に成功したらしい。楽しそうな声が聞こえてくる。……ちょっと、スキンシップ激しくない?とか一瞬思ったが、俺にはふつうがわからないので、ほったらかしにしようと決めて近くの椅子に座る。

「ゆらぎくん。」
「んあ?つむぎくん?やっぱりいたの?」
「はい、転校生さんとご一緒するぐらいに見かけたんですけど。」

ど?と語尾につられて、つむぎくんが指差した先を見ると、こわーい顔した凛月がひなたの後ろに立っていた。悲鳴に似たひなたの声が発された。乾いた笑いを浮かべて、あれやこれやいいわけをし出した。やべえな、と思って席を立つがひなたがそのままつむぎくんを連れて離れる。ゆらぎ先輩、転校生さん、朔間先輩のこと頼みます。とか残してどっかに離れた。
残された俺達はなにもすることができずに、沈黙が降りたのだが、どうすると転校生と目配せ。どうしましょう?と返ってたので、凛月に飲み物を買いにいかそうかと声をかける前に、朔間が行動に出た。
凛月やー何やら内緒話をしておる青葉くんたいが戻ってくるまで、お兄ちゃんとその辺のゲームで遊ぼうぞ。喉が乾いたならトマトジュースを買ってきたから、飲むがよい。お兄ちゃんの驕りだぞ。……あ、すいません。知らない人から何かをもらっちゃ駄目って、学校の先生や両親から言われてますので。
一刀両断すぎて、瞬間ブリザードが吹いた気がした。俺とあんずは朔間兄弟に視線を向けれなかった。

「敬語やめてっ、何かグサッて刺さる感じがする。知っとるじゃろ〜おぬしのお兄ちゃんじゃよー。ほおれ、記憶の底を浚ってお兄ちゃんのことを思い出し「うざい」つれないのおおお!ゆらぎくんや凛月がつれないのおおお!」

諦めて俺に泣きつかれた。いいんだけどさ。弟とか兄とかそんななにも思ってないから。うん。わかったから、凛月。警察に電話するのはやめなさい。そして締めに兄は死んだなんて言うな。おれらは代理で癒してもらってます〜。と俺らに油をぶっかけないで。生きとる!我輩の胸はどくんどくん脈をうっておるぞ!って俺に聞かせるな朔間。「そういう痴漢みたいなことやめてくれません?通報しますよ」って凛月それは俺の台詞!!被害あってるの俺!!助けてつむぎくんと心の底から願うし、あんずはわらいつぶれてる。ダメだ、神もなにも助けてくれない、っていうか、救いの子俺だよ。見事な着地点に俺は地面に倒れたくなった。



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