俺とスカウト 悪魔の館。 3e 





「転校生も青葉の上のお兄ちゃんも俺の後ろに居てね。さっきから不審者が徘徊してるから。」
朔間に抱きつかれて、俺は朔間の中でどうやら代理凛月らしいのかもしれないが、本人の目の前でやめてくれません?とか思考を飛ばす。いやだって、俺にはこの事態をまとめる能力ないよ。強豪『Knighs』と『UNDEAD』とか、元トップの『Diana』が納めれるわけないじゃん。もー朔間と凛月で会話広げて。しらねえ。凛月の声を聞きながら、はやくひなたもつむぎくんも帰ってきてくれと、俺は心の底から声を大にして願う。あんずの使い物にならない。つむぎくーん助けてー。微かに声を出せば、やっと二人は帰ってきた。よぼよぼの俺を支えながら、じとーと朔間兄弟を見つめている。

「な、なんでちょっと目を離した隙にゆらぎくんはぼろぼろですし、険悪な感じになってるんですか?」
「なんでつむぎくんは俺が五奇人の一人と相手取って、平和にできると思ったの?」
「俺が全力で信頼してるゆらぎくんですからね。」
「仲良くしましょ〜。ほら、みんなで一緒にゲームとかしません?」

あああああ!!!弟の願いを叶えれないクソ兄でごめんって!!俺が泣きそうだわ。弟が尊い、期待に応えれない兄でごめんって!!俺、つむぎくんの腕の中なら死んでもいいかもしれない。とまじで考える10秒。つむぎくんの腕の中で、生まれ変われるなら青葉つむぎくんの息子になりたいとか思考が飛んでってる間に、よくわからないけど、ゲームすることになった。まったくもって意味がわからない。副審俺と主審あんず。チームは、ひなたと朔間。つむぎくんと凛月。年上が弟に、年下が兄を演じて、上手かったほうがーなんかするらしいけど、わかんねえ。俺必要なところ全部聞き逃してるんだもん。
とりあえず点数つけるのはわかったよ。うん。

「ゆらぎ先輩もきっちり参加してもらいますよ。乗り掛かった船でしょう?」

わかったから、まとめると。だよ。
弟朔間と兄ひなたチームと、弟つむぎくんに兄凛月。の2チームで上手に兄弟を演じれた方が勝ち。っていうけど、なんかどちらのチームも嫌な予想しかできない。五奇人の朔間と『Knighs』の参謀。絡み手どうしの戦闘になるしかない。そう思えない。どうすんだって。ちらりと隣のあんずをみると、キラキラした瞳で四人を見てる。だめだ、こりゃ。とガックリ肩が落ちた。

「勝っても負けても、『約束』は守る。神の子には誓おうかね」
「神様なんか信じてないくせに、めんどくさいなぁ。」
「ははは。」

ばっちり俺を見て宣誓しないでくださーい。とかこっそり思いつつ、凛月ものってきたようだ。勝手にしてくれと言わんばかりに近くの椅子を引っ張ってきて、一旦腰をおろす。となりにあんずを座らせて、兄弟ごっこを進める方を見つめる。まともに兄を見てるからか、凛月の兄の図がまんま朔間ぽいけど、そのまま黙っておこう。つむぎくんも楽しそうに。話をするのを眺めていると、凛月にだんだん瀬名が混ざってきてる。最後完全にチョ〜うざぁい。はいてる。完全に瀬名だ。遊木にご執着の瀬名だ。ブックフェア的なので見たけど、完全に今の瀬名だろ。なんて俺はおもう。参考にする相手間違ってるぞ。なんて喉から出掛けたが、押さえ込む。瀬名もとい、凛月は弟に強要するが、つむぎくんを俺も、いままで弟らしいことさせてないなぁ。なんてぼんやり思った。助け合いの家みたいな図だよな。なんて思っていると、よからぬ顔をした朔間と目線がばっちりあった。

「ねえねえ『お姉ちゃん』」

甘えた声が聴覚に届いて、気管に唾が入った。ごほごほむせて鞄の中から水を取り出す。なんだ、今の攻撃的な甘えた声だな。と視線を朔間に向けると、きっらきらの瞳が俺を通り越してあんずを見てた。飲みかけの水が俺の制服を濡らす。衝撃的な光景だった。言語化できないほどのダメージだ。男の俺にしたらな。ま俺は副審だし、主審はあんずだから、俺を狙わずに、あんずにしぼったらしい。何をしたかなんていうと、猫なで声で、あんずを買収。きらきらした目で、上目遣いで、うるうる泣き顔で、あんずを見上げてる。一瞬で俺はこっそりそんな朔間をスマホに納めておく。

「一生のお願い!なんでもお姉ちゃんのいう事を聞くから、この勝負かわいい『弟』の零ちゃんチームの勝ちってことにして!」
「審判を買収する気だぁあああ!?青葉の上のお兄ちゃん、なんとか」

あんずが壊れた。あんずもつられてキラキラした目で、うんうんとうなずいている。凛月は八百長だと訴えるが、「零ちゃん、年端もいかぬキッズだから、何を言ってるかわからなーい。」としらをきってるが、年端もいかぬキッズは自分を「年端」にいれねえっての。凛月が俺にもなんとかしろ、なんていうが俺は副審、俺を狙ってこないルールには抵触できません。

「ねえねえお姉ちゃん?駄目?零ちゃん、どうしても勝ちたいんだけど、お姉ちゃんは見方してくれないの?」

数時間前ほど見た、自分の弟に対する姿から考えられない世界だった。おいでおいでお兄ちゃんがたっぷり包容してあげゆ!なんて言ってた姿はどこにもない。今日一日の朔間の代わる様を思い返してると、お隣から「そんなことない!」とか叫ぶ声がする。はい、勝負あり、朔間の勝ち。だって、俺副審。
ついでにこの一連はひととおりムービーで納め、あとで日々樹にでも見せようと決める。

そんなこんなで、収集がつかなくなってきて、朔間たちと別れて俺達は帰路につく。
今日はエグかった。と言えば、つむぎくんはわらって、零くんに抱きつかれたりさいなんでしたねー。ラッキーアイテムが役に立ってなさそうですね。と眉を下げた。あったからこれですんでるんじゃない?と言えば、目を輝かせて、嬉しそうに笑う。まぁ、なんでもいいけど君が満足してたらいいよ。と俺は思いながら杖をつく。鞄に晩飯と明日の朝ごはんの重みと他愛な会話をする。僅なささやかなこんな日常が嬉しくて、俺は一人クスクス笑う。

「今日は楽しかったですね〜。」
「つむぎくんが楽しんでたらなにより。」
「ゆらぎくんは楽しく無かったんですか?」
「いんや、そんなことないよ。楽しかったよ。」

朔間の面白い一面もみれたし、こんなバカなのして一日が過ぎるだなんて久々かもな。事故前はそんな日常もなかなったなぁ。とおもいだしてると、隣から名前を呼ばれる。俺、弟ですけど、そんなにどうしていいかわからないんで。俺達は俺達のペースで兄弟しましょうね。とか言われた。綺麗な琥珀色が俺を見える。わずかに薄いアンバー色が夕焼けに染まってきれいだな、とかどうしようもなく思う。

「んだ、ゆっくり兄弟を進めていこうぜ。」

空いてた手を出すと、つむぎくんがその手を重ねてくる。細長い指が嬉しそうに俺の指をなぞる。ちょっとこばくて、ほら、かえんぞつむぎ。
そう声をかけてやると一瞬で大きく目を開いてから、くすぐったそうに笑って、俺の先を歩き振り替える。明日の朝ごはんじゃこおかかチーズのおにぎり作りますね。

「つむぎくんの作るじゃこおかかチーズのおにぎり。なにいれてるの?」
「なんでしょう?塩と具材のじゃことおかかにチーズしか思い入れがないですけど。まさか食べれないものとか入ってました?」

首を傾げられたが、俺にもよくわからないけど。じゃ、俺に対する兄弟愛でも入れてくれてんのかな。と適当に言えば、つむぎくんがどもりはじめた。案外正解だったぽい。なんだよ、うちの弟がかわいすぎて辛い。なんだよらあいつ天使か?いや、天使ってアホほど人殺してるから悪魔か。悪魔はそんなに人殺してないもんな。

とりあえず言わせてうちの弟が正義。まじ。天使いやあくまでもかなんでもいいけど、誰でもいいからうちの弟をよろしく!青葉!青葉!つむぎを!あ。はい。兄バカってこんな感じなんですかね。





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