俺とスカウト!荒野のガンマン 2e 





ずるずる引きずられた先に瀬名が立ってた。なに、青葉も連れてきたの?あぁ!と瀬名と守沢が話している時点で、二人は先に約束してたのだろう。ほら、ダンスゲームやるよ。青葉もするでしょ?と言われて視線を瀬名の向こう側、筐体に向けると昔よくやっていたダンスゲームの筐体があった。

「バージョンアップしてるなぁ。」
「なに、経験者なわけ?」
「高校は居る前はよく抜け出して遊んでただけだよ。」

まぁ俺中学も小学校もまともに通った覚えないけどな。へぇ中学から、と瀬名が勝手に勘違いしてくれるので、俺はそのままそー。とだけ答える。二人プレイ用の筐体が2台並んでいるので瀬名と守沢が一台を使いその隣に俺が立つことにした。連動はされていないらしく、二人が決めてから俺が後を追うように曲を選べば問題ないだろう。

「ほら、お金入れたら身長登録してー」
「なんだ?身長?」
「ん、そー。こいつらセンサーで反応するからね。」

さっさとやってー。と促して俺は俺の筐体にあとからコインをいれる。隣の守沢や瀬名が困惑してる隙に俺は俺の筐体が稼働しはじめるのでそのまま登録をする。こーやるの。と見せれば二人はおどろおどろしく操作していく。登録が終わったのでそのまま俺は隠しコマンドをいれてアクションマーカーのでない設定にしてしまう。

「楽曲は……」
「前のスイッチでも上に手を上げるアクションでもいけるよ。簡単なやつから始める?」
「知ってる曲の方が楽しいよな!」

喜び余ってか守沢が手を高く上げたので、センサーが反応して曲の決定が押されてしまった。瀬名がばか!と罵るのを聞きながら俺もその曲をいれる。わずかなズレはあれどほぼほぼ同じタイミングで終わるだろう。ゲームでしか流れないようなオリジナル楽曲がほどなくして流れ出す。杖は筐体に引っ掻けて俺はセンサーが反応するエリアに立つ。守沢越しに瀬名が俺の方を見た。

「青葉は踊れるの?」
「俺にこのゲームにおいて不可能なんてないさ。」

にやって笑ってやると、音が流れだす。画面のキャラクターが踊りだすので、それを見ながら振りをつける。マーカーもないので躍りが見やすく、踊りやすい。俺は聞き慣れていた音楽なので、平然と踊っているが、守沢も瀬名も踊りなれてないからか一瞬の迷いがあったが、すぐに慣れたようだ。古豪の『流星隊』隊長と、『Knights』のトップだろう。普通にこんな姿お金取れるぐらいなんだろうなぁ。とか思いつつスコアの点数を叩き伸ばしていく。数年前にやったときはいくつだったっけなぁ。なんて思考を巡らせていると、一曲目が終わった。コンボがすべて繋がったこともあり、点数は背と守沢を足しても叶わないぐらいに位置した。

「ダブルスコアとか信じらんない。流石一閥だねぇ」
「まぁ、難易度違うからしかたねえよな。」

一番難しいやつだし。と言うと一瞬のにして瀬名と守沢の顔つきが変わった。上等、おんなじやつやってやるっての。と瀬名がこぼしたのを俺は聞き漏らさなかった。はん、やれるもんならやってみなよ。と俺は瀬名たちの筐体の設定をマーカーの出ない設定に変更して、ほら、つぎ選べと促す。青葉あんたのとくいは?と聞かれたので、俺側の筐体を使って選んでやる。即行即決でケルト調ハイスピードポルカ。ちなみに『Diana』の収録楽曲。情報が筐体にかかれてて、やってやろうじゃん。と瀬名が挑戦的に笑った。ふと一つ大事なことを思い出したので、俺はそのまま口を開いた。

「あ、そういえば立ち位置的に瀬名が女役だから気を付けろよ。」

は?と言う間に瀬名の指は演奏を選び終わったようで、決定ボタンを押した音が耳に入った。おそかったか、と思う間に画面にはスイス系の民族衣装を着たキャラクターが並び初めた。ライブじゃないのにどこか楽しくなって、俺はすっと息を吸い込むと、考えることすらやめた。あとは体が勝手に覚えてるからだ。本来ならばたっぷりのレースとスカートで構成される女役とタップちかい男役の構成で画面には二人写っている。
振りを考えたのは俺だし、相も変わらずどっちの振りだって、間違えたことはない。
音が鳴ると最初のエイトフォーは男女共通で、大振りのサイドステップとグレープバインド。ゆるやかに一瞬なってから変調。音を聞いてたら歌いたくなってそのまま歌詞をなぞらえる。楽しくて仕方ない。一年ぶりのゲーセンだけれど、今も昔も気持ちは変わってないようだ。3分ほどの短い高速足技のオンパレードは瞬く間に終わった。結果は相も変わらずフルコンボで、理論値越えの最高得点記録!名前を入れてね。と書いてあって、俺はほっと胸をなでおろした。足が動くことが嬉しくて、踊れている、と判断する機械がいて、民族衣装に身を包んでいるキャラを見ながら、踊れているという実感だけが堪らなくてニヤニヤしそう。

「流石一閥って感じ。」
「すごいな、青葉!」
「踊ることが好きだったから。な。」

目を盗んで抜け出してたときはいつもここだった。逃げる先だった。ここには、踊ってるだけで人の心も迷いもなにもかったのだ。一部の救いは俺だったらしいが、俺の救いは音だったし、正確に言うと踊りだった。寝る前に聞かされてたトランス用のCDだってどこかアンデス調がかかってて、すきだった。音だけが違う世界に連れていってくれるから。ちょっとずつ貯めたお小遣いを握って、抜け出すことに成功した俺は、家の近所のゲーセンまでよくいってた。1クレジット2曲の筐体でも、俺にとってはその時間だけが楽しみでずっと頭のなかでは踊ってたのだ。つぎにあの筐体でなにをしよう。とずっと考えていたこと。だけは小さな頃からよく覚えてる。

「青葉、はじまるよ。」
「あ、わりぃ。」

ぼんやりと懐古してる間に守沢が俺側の筐体の楽曲も決定したらしく、薄暗い画面からだんだんと女の子が浮かんでくる。さんきゅ。と声をかけて画面を見ると踊り始めてるので、それにならって体を動かす。ちょっとまわりがざわついて来ている。どこかで情報がもれてファンが集まってきてるのかもしれないな、とか思いながらのターンがはいるのでついでに周りを見ると確実に、ギャラリーが来ていたので、これぐらいが限度だろうな。と思う。やっぱりお金とってもいいレベルだよな、とか思いを馳せていると楽曲が終わったようだ。3連続フルコンボ獲得、オールパーフェクトとか歴代にもあまり見たことないスコアを叩き出して、俺は流れてくる汗を腕で拭き取る。観客が大きく沸いて、喝采を得る。ステージみたいだな、とか思いつつ腕を両方上げる。思った以上に足に負担をかけすぎたのかうっすら膝が笑いかけてる。崩れ落ちるわけにもいかないので、そのまま杖をとりにいって、鞄も回収する。守沢が連コイン仕掛けてたので瀬名と二人でお前はもっと周りをみろと説教して、逃げるように退散した。瀬名と協力して守沢を移動させて他のクラスメイトのもととに向かうと、羽風がこっちこっちと手を振っていた。どうやらシューティングをやるようだ。一時期通ってた時代からバージョンアップした新作らしい、話を聞くと二人一組でチームを組んでバトルロワイヤルをやるらしい。へぇ、と声を出せば制約があれど一人でも対戦できると記憶している。『Diana』のメンバーの一人が教えてくれた気がする。

「俺も参加していい?」
「二人一組のゲームだけど、それでもいいの?青葉ちゃん。」
「ま、こっちはユニットに鍛えられたからなぁ。」
「経験者って訳だ。ハンデにもなるし、青葉ちゃんは一人でやるのがバランス良さそうだね。転校生ちゃんは俺と組むからね!」

まーなんでもいいよ。というと、青葉ちゃんは物わかりがいいよね。と適当なことぬかされた。いいんだけど。天祥院と守沢、転校生と羽風。瀬名は斎宮。そして俺。うーん人数的にぼっちになるのちょっと悲しいよね。とか一瞬ぼやきつつも一癖も二癖も強い奴らだからねえ。どうなるかわかんねえけど取り敢えず斎宮が天祥院殺す。とか物騒なこと言ってるから、とりあえずのんびり遊ぶことにしようかね。筐体にお金を入れてコントローラーの銃を二つ手に取る。思ったよりもずっしりしてる銃を握ってると、目の前でぱしゃり。なんて音がした。カメラに撮られてたようだ。取り直しの余裕さえも与えられず、画面は次に次にと変わっていくので操作方法を思い出す。ユニットの一人が好きだったやつじゃん。とか思いながら次の設定に進むカウントダウンが始まる。天祥院が遺影でいえい。とかしょうもないことを言ってるのを聞いて、死んだら祝詞でもあげてやると俺が言うと、ゆらぎには読んでほしくないかな、と煽ってくるので俺も斎宮に相乗りさせてもらうとしよう。天祥院と守沢を絶対殺すマン青葉の誕生だ。となりでシャッター音が聞こえたので見ると、瀬名がポーズをとっていた。

「撮影となると完璧なポーズをしちゃう俺の習性が憎いっ。一人だけ格好つけた感じで写って逆に浮いてて恥ずかしい!」
「瀬名らしくていいんじゃないの?写真とって鳴上にでも送ってやろ」
「馬鹿、なるくんに送る必要ないでしょぉ?」

そしたら朔間の弟のところ行くだろ?と言ってやれば、やめてよね。と俺のスマホを取り出すのを阻止される。ちぇっ。自分の筐体を見ると荒野が広がって、そこからぽつぽつと的キャラが動き出してくる。俺は左を意識しながら照準を順番につけていく。二三個越えた辺りに武器強化ポイントがあったはずだと思い出して、俺は打ち始める。守沢がなんか言ってるのを聞きながら、俺はライブの最中みたいに話すよな。お前ら。なんて思いながら、粛々と敵をなぎ倒していく。ちなみに一人だと。武器の選択肢が増えると言っていたので、颯爽とマシンガンかバードショットでも手に入れたいところだと考える。ワンコイン目は俺は三位という位置に収まったが、二クレジット目に優勝を手中にすると、天祥院が『優勝したチームには最下位のチームに何でも一つ命令出きることにしよう』とか言い出したので、絶対に最下位はなるべきじゃない。と頭の中で警報が鳴る。ユニットの移籍とかおっそろしい単語が聞こえたので、俺も本気を出さざる得ない。

「一閥の本気は伊達じゃないよ。」

最後に教えてもらった奴よりも遥か上手くなって、店舗大会優勝とかしてるのに、負けると思ってんの?と挑発的に一人でこぼす。一人の方が気持ちは楽だ。倒れても朽ちても誰も見向きもしないのだからね。ポイント最高記録目指して見よかねー。と言いつつ10分後ほんとに俺は3A大会で優勝してしまうのだった。ちなみに4戦目はワンハンド縛りをされたのがだ、根性でいい武器を引いたのであっさりと優勝してしまうのでした。大人げない?のんのん、俺は誰にでも本気出すタイプ。おーけー?ちゃんちゃん。



[*前] | Back | [次#]




×