俺とスカウト ブティック 2e 





結果論不発だった。今度返して貰わねばと思いつつ時間が流れて放課後。移動に時間がかかるので俺だけ集合場所を繁華街の広場を指定する。授業終了直後に動き出したので、あんずも明星もいない。指定した時間まで余裕があるので、俺はぼっちでベンチに腰掛けてあんずと明星を待っていたのだが、指定した時間にあんずだけがやってきた。

「青葉先輩、お待たせしました。行きましょう!」
「明星は?」
「さっきちょっとファンの子達と出会っちゃって。今ゆうたくんに助けてもらってるので行きましょう。」

お?おん?と返事しつつ、ことのあらましを聞く。そういうこと。と納得しつつ、俺も昔あったけどさーと会話を広げる。あんずは俺の失敗談を聞きながら、相槌をうって、瀬名が遊木以外を構ってるのって珍しいなぁ。とか思う。あいつ大体自分のユニットぐらいしか興味なさそうなのにな。とかどうでもいいことを考えながら、最後あんずが「朔間さんにスーツを見立ててもらおうと思って。」とあんずが言い出して俺はえ?とあんずの方を見た。どうやら軽音部の買い出しについてきたら、日光でダウンして喫茶店に放りこまれたらしい。そんな話をしながら喫茶店にたどり着くと彼らは入り口近くの席を陣取っているらしく、ガラス越しに双子のどっちかが、俺たちに向かって手を振っていた。店にはいると明星たちは今来た頃らしく瀬名に叱られている。俺は面子とならびを考えて朔間の向かいに腰かけて、通路を挟んだ反対側に声を投げる。

「公共の場で大声出すな!あぁもう、さっさと席について!俺たちは頼んだからあんたも頼みなよ」
「よっ、瀬名が世話やきしてるの珍しいね」
「うるさいっての、早く頼みなよ。」

俺決まってるから、あんずは?と向かい側にメニューを差し出すと、あんずは少し悩んでから紅茶かな?と呟いた。そんな間に俺は店員にメニューを告げる。冬に近いこの時期は熱量補給に勤めるとしよう。そのまま明星や双子の……ゆうたもそれぞれ言い出す。

「朔間、何のんでんの?」
「トマトジュースじゃよ、我輩、昼間から出掛けてぐったりしておるからトマトジュースで栄養をとっておるのじゃ。」
「そかそか。あとさー先週貸した雑誌って今持ってたりしない?」

俺のユニット衣装を参考にしたいとか言ってたから貸したやつ。と伝えると、あぁ、あれな。と思い出したようにカバンを取り出して、そこから俺が貸した雑誌を返してくれる。そんなやりとりに興味を持ったのか、明星がすっと俺の手から雑誌を奪って、中身を見ている。アイドル情報誌なので、ユニットで民族衣装インタビューとかわけわかんない企画が組まれていて、そこにドンピシャの『Diana』が表紙をとっていた。俺は英国紳士のピンソロだったが。
「この間借りた雑誌かえ?」
「そー。明星に見せようと思ってー。こういうスーツもあるんだよって。な。」
「なんじゃ、ただの見せたがりじゃのう」

双子の子と話をそのまま話を進めているので、そんな光景を眺めながらぼんやりと思考を飛ばす。明星から雑誌を奪って俺のページを開く、きらきらと仲間と笑いながら写真に写っている俺が居た。

「ゆらぎくんもスーツを選ぶのかえ?」
「んーまぁ、式あるし。ついでに買っちゃえばいいなって。」
「お主はそんな年齢になるんじゃの」
「俺も俺でややこしいんでね」

成人式とは言わないでおいたら、朔間がある程度察したらしい。結婚式と勘違いしてくれないなら何でもいいや。あっちのほうは顔出してくれないからだいぶ楽になってるんだけどなぁ。と思いつつ窓の外を見ていると、飲み物が来出した。

「やっぱりあんずは『Trickstar』が大好きなんだねっ、俺もあんずが大好きだよ〜」
「わっ!」

明星があんずに抱きつく。明星の膝が机を叩いて俺の飲み物が大きく揺れた。なみなみ入った飲み物は一瞬溢れかけたが次第に落ち着きを取り戻している。明星!と落ち着けとたしなめると朔間も頷いてくれるので、明星を力技で押し込む。

「SS出場者が不必要なスキャンダルを出すんじゃねえ。もみ消せるかも知れねえけど、怪しい火もつけんな、あほたれ。」
「だいたいゆらぎくんが言ってるんで何も言うことはないがの。」
「あれこれ遠まわしで言われるより、はっきり言ってくれてうれしかったよ!ありがとね!朔間先輩!青い先輩のお兄さん!」

とりあえず暴れなくていいから。と椅子の上に押し付けるようにしておく。瀬名があきれて首を振っている。俺もこんな後輩面倒見るの…まぁ、いいか。お前ら全員後輩だしな。朔間が明星の頭を撫でてるのを見てると、再度立ち上がりかけたので、今度は瀬名が怒った。さっさと行けと叱咤している。

「青葉のところは悪質なファンとか居たんじゃないの?」
「あーうち?全部俺が対応してから振ってるから、そんなに。居たかなぁ。」
「そういうところがほんと一閥らしいよねぇ」

なんでも一人でやってた割にユニットとして機能してるのだから、まぁ優秀な民だこと。フランス革命かよ。と言いながら、俺は机に伏せる。何か言った?と瀬名に言われたが、あぁなんでもないと。言いながら、机に伏せてもなおがっくりとする。

「様子が変だよ?青葉。変なモノでも食べた?」
「いんや、半年前のうちのごたごたで胃が痛いだけだから良いよ。なんもできねえよ。」

自家製腕枕を片腕だけ逃がして肘をテーブルに乗せて気だるげに振る。やだやだもう半年しか時間無いじゃん。死刑執行まで半年って長いけど絶対仕事してたら一瞬のように感じてしまうだろう。ライブの計画票からでも作ってみようかな。と瀬名に適当に返事しながら、しばらく勝手にいじけてるからほっといてー。と告げるとあんた便利なメンタルしてるわよねぇ。……呆れられた。うっせ、好きで自分の機嫌を自分で回復させてんじゃねえよ。口を開けば、わかったからアンタは自分の機嫌でもとってなさい。っていうか、俺年下扱いされてない!?
心の声で自己突っ込みをせども、声は出てないので、勢いよく顔を上げる形になって、瀬名に不思議な顔をされる。めずらしいな、なんて思ってるとあんずと明星は朔間と話がついたらしく、紹介してもらったオーダーメイドの店に行こうと明星が俺の腕を掴んで立ち上がらせる。雑誌も回収したことだし、俺も満足がいくまでスーツを選べるってもんだ



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