俺とスカウト ブティック 1 





昼休みにあくびをこぼして寝る体制をとるために辞書を机の上に出していると、出入り口に丁度居た瀬名が視界に入った。俺を指差したので、ん?と思うと瀬名が横にずれて、あんずが入ってきた。

「青葉先輩!!お願いがあるんです」
「踊りならなんでもいいよ?なに振り?原案?踊る?」
「アンタは踊るなって言われてるでしょうに」
「えーいいじゃん。どうせ俺公式ドリフェスとか出れないんだからさー。お前らのやった臨時ユニットとかうらやましいって思ったよ?」

俺はしてないから。とたしなめられて、あんずから手渡された企画書を眺める。スーツ特集だって。ハロウィンパーティってS1扱いだから俺は出れないし、どこかと突っ込むにしても踊れないのだから不要だろう。S1出れないし、こっちならどうかな?って提案しつつあんずが首を傾げる。

「ユニットとしては存続してるんだけどな。去年の実績があるから1年は延命していいよって生徒会が言ってくれてるんだけどなぁ。いかんせん、やる気がでない」
「やる気がでないって、あんたねぇ」
「え?でもDDDは出なかったんですよね」
「あれは、別問題な。あれの優勝者がSSだし、あれ基本2人以上が前提だから、出れねえんだってば。しっかりしろよプロデューサーちゃん。」

あ。そうだね。とあんずが納得する、S1はどこも出るから俺は校内バイトの稼ぎ時なんだよな。まぁ雑誌の撮影だろ?企画元がしっかりしてるところだし、勿体ないから受けるよ。と言うと、ほんとですか!?とキラキラした目を俺に向けてくる。うん、そういうところ君明星に似てきてるよね。『Trickstar』色になじんでるねぇ。と思いつつそれは黙っておく。

「スーツなぁ。シングルでカマ―がいいな」
「カマ―……ですか?」
「ほら、バーテンダーとかが来てる背中空いてるやつ」

あぁ、あれですか。先輩スーツって持ってたりします?あーユニットでやったけど、あれどこやったけなぁ。一番最初の楽曲だった気がするからもしかしたらサイズ変わってるかも。最近まともに動いてないからなぁ。肉付きやすいんだよなぁ。
ぼやきつつ自分の腕回りを確認する。足回りの筋肉が落ちた分腕回りはついたような気がする。一時車いす生活してたしなぁ。

「どうしてその形のスーツを選んだかってインタビューもあるので、昔ユニットで使ったものはちょっと…。」
「まぁ、そろそろ必要だし買うか。式あるし。」
「それで、今日にでもテーラーショップに行くんですけど、一緒にどうですか?」

まじ?というか明星くん今日しか空いてないんですよね。明星か。一番最初に話したので。そかそか。賑やかなインタビューだな。
あんずと話し込んでると羽風がたんぽぽちゃん!とやってきて瀬名が煩いと俺を叱る。はいはいわかりましたよーとやさぐれつつ、ちょっと夕方の特殊イベントが楽しみだなぁ。と俺は浮足立っていた。ライブとかの仕事もそんなにないが、こういうイベントって昔やってたな。あの時の雑誌にやったっけな?朔間に貸して…?…それから?
無い頭をひねっても仕方ない。っていうか、今から合流前に朔間と会うとしよう。朔間と同じクラスのつむぎくんに朔間がいるか連絡を問い合わせてみる。っていうかアイツにいろいろ貸してたよなぁ。と思い出したので通話をかける。機械音の後に伸びた声がする。

「つむぎくん、今日朔間来てる?」
「零くんですか〜?朝から見てないですね、もしかしたら軽音部じゃないですかねー」
「軽音かー。いっちょいってみっか。」

あんがとねー。と返事をして、朔間さんのところにいくの?夕方は用事とかいってたきがするけど。ほうほう。と頷いてから杖を取り出す。軽音部って遠いよなぁ。なんて思いながら俺は杖に気を付けながら歩く。



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