俺とスカウト!ビブリオ。 2 





俺が図書室に入ったら、紫之と高峯の背中と「あんぎゃぁぁ!!!?」と赤子よろしく叫ぶつむぎくんの悲鳴が聞こえた。また悲鳴がした!とビクつく高峯と様子を見にきて正解でしたよ!ゆらぎさん!と紫之がこちらを向いた。
ほれほれつむぎくんや。返事をせんかの。とどこかの朔間みたいな喋りをしたがどこにつむぎくんがいるかわかるわけがない。紫之と高峯が音で手繰れないな。うち『Ra*bits』で兎だけど、それはちょっとー。じゃあ匂いは?高峯くんから野菜の匂いがー、とかコミカルな事をしだしてるので、彼らはつむぎくんを忘れたのじゃないかと一瞬思い、人の居そうな山を探すがわからねーっての。紫之と高峯のやりとりを聞いてクスクス笑うと、すみません、楽しそうなのは恐縮なんですけど、たすけてくださーい。とどこかの本の山から聞こえる。

「青葉先輩ですか?」
「紫之くん、知り合い?あー青葉って、え?」
「あぁえっと、図書委員の人です。」
「そー。俺の親の再婚相手の連れ子。俺が年上の兄ちゃんな!まぁ、そんなのも最近の話だけどさ。」

ちなみにどうでもいい話だけれど、俺の最近はさっきのことから産まれた時ぐらいまでにあたって幅広いから、つむぎ君には呆れられてるんだけどさ。

「うう。その声は、創くんとゆらぎくんですね?ちょっ、ちょっと手を貸してください!」
「手を貸してと言われても…えぇっと青葉先輩、本当にどこにいらっしゃるんですか?声は聞こえても姿が見えませんよ〜?」

高峯がこっちだと思う。とか指を刺す先に視線を向けると、本が散乱している。…さっきの悲鳴はこれか。と思った。本棚が倒れたようなひっくり返し方はつむぎの持っている運勢なのかもしれない。俺は本をよけながら杖を突っ込むと、ぐりっと本ではない感触があった。痛い。という声が聞こえたので、いたぞーと紫之と高峯を誘導する。
本を少し近くの机に置きなおすと本の中からつむぎの顔が見えた。高峯が「誰か死んでる。紫之くん見ちゃ駄目。」とか言ってるけど、残念生きてますー。と俺がからかいながらつむぎの動けるように本を避けていく。顔が出せるまで本を避けてやると、起きれるか。と問いかける。

「い、一応生きてはいますよ〜。ありがとう、ゆらぎくん。こんにちは創くんと…?」

つむぎの視線は高峯に向いた。どうやらつむぎは高峯と面識はなかったようだ。高峯は頭を軽く下げながら、軽く自己紹介を始めて、ついでにつむぎになにがあったのかと問いかけた。なんか変だな。と思いつつ俺はつむぎの話を聞きながら、首を傾げた。なにか足りない。メッシュか?いや、違うなー。と考える。

「見たまま素直に、倒れた本棚に押しつぶされてるんです〜!助けてください!」

何かドミノ倒しみたいに、次から次へと本棚が倒れてきて身動き取れなくなって!このまま生き埋めになって死ぬのかと、ちょっと悲観してました。あぁ不幸ですっ!ラッキーアイテムを零くんに貸したせいですかね?ゆらぎくん。
ちょっと涙目になって訴えかけてくる弟ちょっとかわいい。とか一瞬思ったのは内緒。わかったから、横にいてやるからおちつけ。とつむぎの横に腰を落ち着かせて、息吸え。深呼吸と言い聞かせながらつむぎから今朝渡された俺のラッキーアイテムのペットボトルのふた。というラッキーアイテムかわかんないやつをつむぎに手渡すと、半泣きのつむぎが俺の手をずっと握っていた。残念ならが俺に男が好きという趣味はない。…まぁ、弟だからいいんだけどさ。紫之と高峯にすまんが本棚起こしてくれないか?と指示を出しながら半泣きの弟をもう片方の手で頭を撫でておく。昔からこいつそうだなんだよなー。と思いつつ違和感の元を考えるのだった。


あっちの動かしましたよ!とかあといくつですよ。という返事を受けて、おお!ありがとう!と俺は礼を言いながらつむぎにがんばれよ。と声をかけてしばらく。つむぎがようやく動けるようになった。

「いやぁ、助かりました!持つべきものは優しい後輩と兄ですねっ!」
「俺、なんもしてないが?」
「ずっと横にいてくれたじゃないですか〜。」

はいはい。さいですか。とつむぎの手を借りて立ち上がり近くの椅子に腰かける。紫之と高峯にあとでお茶でも奢ってやろうと心に決める。

「御無事で何よりです〜。でも、青葉先輩、どうして本棚に押しつぶされてたんですか?」

高峯君が力持ちだったから大丈夫でしたけど、ゆらぎさんやぼくだけだったら救出もできませんでしたよ?よくわかんないですけど、気を付けてくださいね?と俺よりも兄らしいことしてるよな。うん、俺が兄ちゃんになったのって最近だもんな。なんて一人しみじみしながら頷く。兄弟って言いながらもさ、俺達別に気のいい友達みたいなところあるし。本人もちょっとへこんでるよね。

「俺も別に本棚に押しつぶされるのが趣味ってわけじゃないんですけど!」
「そんな趣味の奴いるかよ。」

ちょっと図書委員の仕事として、本棚の整理をしてたんですね。この時期って、雨のせいで古い本とかかびたりしやすいのでね。ほら、引きこもってたら、思考だって埃をかぶるんですよ。だから貴重な古書とかを、湿度などを調整した地下書庫に運んでしっかり保存処理したりするんです。代わりに空いた書架の隙間に地下書庫から運んできた本を差し込んだりもしますね。っていいながら、つむぎくんこっちをみないの。俺は脚のせいでひきこもってるだけだから!




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