俺とスカウト!ビブリオ。 3 





「つまりまぁ。本の交換作業をするんです。図書委員会、人手不足だから大変ですよ。」
「あのー、その前に地下書庫ってなんですか?」
「ああ、何か地下にもう一つの図書室みたいなのがあるんですよ。」

俺も一年の頃に、ゆらぎくんとかに言われて初めて知ったんですけどね。それこそ、今は入手困難な古書とか、夏目くんがどっかから集めてきた禁書みたいなものとか、ゆらぎくんの内緒の本とかあって面白いですよ。…ってまって、つむぎくん?内緒の本はいっちゃだめなやつだからね!!

「内緒の本。」
「高峯、食いつくな?」
「興味があるならいつか案内してあげますね。」

こら!案内すんな。って釘を刺すと、そんなヤバいもの隠してるんすか?と言われて、ぎくっとする。いや、やばくないよ。部活で買った資料とかだからな!…いくらしたとかっていうと元メンバーに殺されそうだけど。

「今はちょっと、眼鏡がなくてあんまり何も見えなくて。歩くのにも難渋するので、無理ですけど。」
「あ。」

言われて、違和感について理解した。眼鏡がない。いつもの見慣れたフレームがない、つむぎぶじ?とか聞くと、あはは。と弟が笑う。紫之が、メガネかけてないですね。と言う。だいぶ印象が変わっちゃいます、なにか高学歴のエリートの人みたいですね。とちょっと嬉しそう。

「うちの兄貴に似てる」
「え、どんな感じに見えます?眼鏡をかけてない自分をしばらく鏡でも見てないので、いまいちおぼえてないです!」
「…っていうか、俺と顔にてるっていうの忘れてない?つむぎくん。」

背丈も似てるからってよく間違えられてるの俺だけなの?めがねあるつむぎとないゆらぎだよ、って昔クラスの子に言われたよ。っていうのが今思い出した。「メガネって人を変えますよね。」なんて高峯が言う。紫之は眼鏡がない方が素敵だと思いますよ!っていう。じゃあ俺がメガネかけてみようかな。とか思ったが、かけるとみえないんだよな。っていうかつむぎのメガネだからか。

「そうですか?いやぁ、若い子に褒められると照れちゃいますね!ゆらぎくん」
「俺より若いやつがいうなっての。」
「でも、メガネはラッキーアイテムなのであんまりはずしたくないんですよ〜?」
「昔ゆらぎくんがラッキーアイテムなので離れないでください。って言われたけど。」
「ゆらぎくんのいる方向がだいたいラッキーな方角なので。」

人をなんだとおもっているんだ。こいつ。とか思いつつ盛大にため息つく。そういえば昔からそうだったな。一時期べったりとかあったけど、まぁ、なんでもいいや。

「青葉先輩って、占いとかおまじないとか願掛けみたいなのも好きですよね。ブックカバーもなぜか曼荼羅の模様ですし」
「あれは昔友達にもらったんです。もうだいぶ痛んでるんですが、そういう思い出があるしなってなかなか捨てれませんよね。」

わかります〜。と言って、嬉しそうな顔をする紫之。うんうんと頷いて話すあたりはお兄ちゃんらしいよな。と思いつつ兄らしさってなんだろうね。って思う。いや、いいんだけどさ。よそはよそだし、うちはうちだから。一人うんうんと思考を深めていると高峯が話ずれてません?と路線を戻しだした。
あぁ、そうだったといわんばかりのつむぎは、本の整理をしてちょっと眼鏡を友達に貸しちゃったというか。半ば奪われるように持ち去られてしまったので…。よく見えなくてですね、事故っちゃったんですよね。こう、バランスを崩して脚立から本棚の方へ倒れこんでその衝撃でひっくり返っちゃった上に、本棚が『今度はこっちの番だ』とばかりに、押しつぶしてきて、も湯死ぬかと思いました。今日は大雨ですし、降りだした頃に校内にいればゆらぎくんは来るだろうと思ってましたけど。なかなか来ないですし。現世はあきらめて来世に幸せになる方向で考えようかと考え始めたぐらいです。でも生まれ変われる保証もありませんしね〜。転生して虫とかかもしれませんし。俺はたくさん罪を犯しちゃいましたからね。
最後まで聞ききった俺をほめてほしい。うちの弟の生活に必要なもんかってに奪ってて事故起こして死んじゃいました。とかになったら俺相手をぶち殺しに行くかもしれない。生きててよかったが…。

「つむぎ。それ、誰だ?。メガネをもってったやつ。って言って心当たりは三人ぐらいしか覚えないけど」

朔間兄弟か夏目だろ。って言うと、やだなぁ。ゆらぎくん物騒ですよ。とたしなめられてると、入り口のドアがガラガラと開いて、怒声が飛び込んできた。

「こらぁ!何の騒ぎだ!?」
「ひぎゃあ!?…おおおお驚かさないでください敬人くん!今ゆらぎくんが殺気立っちゃって!」
「つむぎ、さっさと答えろ。っていうかどうせ朔間だろ。兄の方だろ、」
「敬人くんですよね、よく見えなくてわかりません!この見なり様じゃないですよねっ。ごろごろピシャ〜ン!って爆音がしましたけど」

見えてないつむぎが音に驚いて飛び跳ねた。入り口には蓮巳が立っていて、二の腕組んで怪訝な顔をしていた。

「青葉、貴様メガネはどうした?」
「貸したっていうか奪われたっていうか…」
「朔間だな。兄の方だな。」
「あ!ちょっと違いますよ!零くんじゃないです!ゆらぎくん落ち着いてください!」

俺はひどく落ち着いているぞ?と言うと、お前は落ち着け。と蓮巳にたしなめられる。杖も持たんでどこに行こうとしている。ブラコン。これは回収だ。と蓮巳に杖を奪われたので朔間から眼鏡を奪い返す算段がすべてぶっ壊された。いや、杖なしでもいけるかもしれないが、長時間歩くのはいささか心もとない。ぶっすーと膨れて蓮巳をひたすら睨みつける。

「何か零くん、雨で暇だっていうから本でも借りたらどうですかって提案したんですけど」
「小さい文字が読みづらかったみたいで、俺の眼鏡をもってっちゃったんです。」

いやー敬人くんがゆらぎくんの杖をうばってくれたんで、助かりました。とかいうが、それは災難だな。あの吸血鬼、青葉兄の凶暴性を考えてなかったんだろうな。少しは周囲に気を配れるようになったのかと感心していたぐらいだったんだが。ここまで青葉兄を怒らせるとは。と蓮巳が頷いている。ほっとけ。

「まぁいい、ちょっと待っていろ。生徒会室に予備のメガネを常備してあるから持って来てやる。貴様、視力はいくつだ?」
「えぇっと、どうでしょう、しばらく検査してないのでわからないですけど。」

占いや霊媒師に怪しげな相談をしに行く暇があるなら、視力検査位しろ。まったくもって、度し難い。とかいうので、俺が盛大に噛みつくが、蓮巳には綺麗にスルーされて、兄の頭に上った血を下げて置けとつむぎに命令してどっかいった。だから生徒会は嫌いなんだよ。とぼやくと、高峯と紫之から慰めの言葉をもらって、なんとも言えない気持ちになった。年下から慰められるのしかも五つも下って…。いや、いろいろ言われてだいぶ落ち着いたけど。高峯のブラコンって言われたのが一番ダメージ来た。つむぎモンペって瀬名に言われたけど、お前に言われたくねえよ!!!!!





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