俺とスカウト!ビブリオ。 1 





校舎から出ると鈍い色した空は涙を流したように雨がふりだした。但しギャン泣きレベル。いやー傘持ってきてなかったなー。杖つきながら傘ってなぁ。そういえば、つむぎくんは今日レッスン日じゃなかったはずだし、最悪つむぎくんにさしてもらおうか。と思って校舎に戻る。図書室のあるフロアに向かいながら階段を登ると、キュッと靴の鳴る音がした。躍りでもやってるのだろうか、と思って音の方に足を向けると、一年が二人。濡れた廊下を滑るようにあそんでいた。なんだ、躍りってないのか。つまんね。と素知らぬ顔してゆっくり方向転換を決めようとしたのだが、背の低い一年が俺に気付いて寄ってきた。

「あ、青葉先ぱ…?ごめんなさい!間違えました!」
「いや、俺は青葉だけど。つむぎと間違えたのかな?」

俺は『Diana』の青葉ゆらぎ。お前らは一年?と問いかけると、自己紹介をしてもらう。背の低いのが紫之、高いのが高峯だという。所属ユニットがRa*bitsと流星隊だと言うので、あー守沢と仁兎のとこの子か。と理解した。振り原案やったような気はするが、いまいち人を覚えれる自信はない。天祥院ですら4日かかったんだから。やだやだ。難しいよね。

「靴の鳴る音が聞こえたから来たんだけど、なにしてなんだ?お前らは。」
「雨で濡れた廊下を滑ると楽しくなってきて。つい」
「ま、蓮巳に見つかんないようにやれよ。」

あいつ怒ったらチョー怖いからな!声をちょっと似せてそう言うとちょっと面白くて一人でゲラゲラ笑うと、紫之と高峯が慌て出した瞬間に俺の脳天に星が散る。

「見つけたが、な。」
「いっ!!!!!!」
「ひぇっ!」

痛む頭を抱えてしゃがみこもうとしたのだが、具合のよろしくない足も悲鳴を上げだした。元気な右足だけ折り込み左足を伸ばして高峯のスラックスを掴む。大丈夫スか?とゆっくり俺を立ち上がらせてくれた。痛む頭と足を撫でながら、蓮巳に怒鳴る。

「一年をびびらせんなっての!んでお前ぜってー本の角と殴っただろ蓮巳!」
「本が痛むからするか。」

拳だ。と言うから余計にたち悪いっての!と言うと俺の似てない物真似で笑うからだろ、と言われるのでぐうの音も出ない。悔しいから、からかいがてらに「怖いねーけーちゃん。」と蓮巳に対して呼んだこともないあだ名を勝手につけてやる。天祥院とかが見てたら笑ってんじゃねーかな。とは思うけど。

「『流星隊』の高峯と『Ra*bits』の紫之か、こんな愚かな奴と付き合うとロクな事にならないぞ」
「ロクなことしてねーの、そっちじゃねーかよ」
「雨で滑りやすくなって転ぶぞ。特に青葉、お前は足の怪我またすることになるぞ」

まぁ。今回は校則違反してるわけでもなさそうだし、今回は見逃してやる。と蓮巳は眼鏡を押し上げながら、そういう。おい、人の頭殴っておいてそれかよ。まだ痛みますか?と紫之が心配そうに見るから多少平気な素振りをしつつケラケラ笑っておく。

「天気予報を見た限り、これからどんどん雨脚が激しくなる。寄り道せず真っ直ぐ帰れよ」
「あ、ウス。どうもすいません。」
「謝る必要はない。貴様らは何も悪いことをしていないのだろう。……堂々としていろ。度し難い」
「じゃあなんで、おれの頭と殴るんだよ。けーちゃん。」
「似てないからだ。早く帰るように」

俺の噛みつきが終らぬ間に蓮巳はさっさとどこかに消えてった。勝手なやつ。ちぇっ。と言うと高峯は、なんだったんだ?と首をかしげていた。

「ん?どした?」
「どうも普通に滑って転ばないように注意してくれてた。っていうか」
「あぁ。まー言い方が悪いがそんなやつだよ。気にすんなよ、紫之も高峯も」
「ごめんなさい青葉先輩。ぼくちょっと『紅月』の人苦手なんです」
「わかる。あの人たち怖いよね。上級生っていうだけで気後れする。」

守沢かアホなことしてたら、蓮巳が飛んでやってくる。とか顔会わせたら説教されそう。とか、高峯の身内に似てるからすくむとか、いろいろ言われてるが、あれもあれで言葉は足りてないがいいやつなんだよ。とか俺の口から絶対に言ってやんね。と決める。

「でも、青葉先輩ってそんなに怒らないし、先輩ぽくないっていうか。」
「ユニットも部活も後輩居ないから、そんなになんも気にしてないからじゃねーかな?」

普通に進級してきた奴らも雑に呼んでるしな。好きに呼んでほしいな!ほら、青葉は同じ学年に二人居るし。紫之も俺をつむぎくんと間違えただろ?。ほら、おにーちゃん。って呼んでも構わないよ!と伝えると紫之は「わぁ!ぼく長男だから、そんな!お兄ちゃんなんて!」と言った瞬間、つむぎくんの情けなさそうな悲鳴が耳に届いた。
いや、ほぎゃああああ!?って叫ぶのつむぎくん。くらいなんだよなぁ。

「はぅっ?!」
「な、何?今、変な声したよね?悲鳴?!」
「悲鳴だけじゃなくてゴロゴロガッシャンって物音しましたよね?何か重たいものが倒れる感じの。」
「つむぎくんになんかあったな?紫之も高峯も顔かしてくんない?」

つむぎくんが倒れてたりしたら俺、しゃがむのも大変だからさ。助けてくんないかな?そうやって問えば、ぼくたち元々図書室に行くつもりだったので、と言ってくれるので俺は紫之と高峯と…杖だから走れんから、先発隊として二人を送り俺は俺の急ぎ足で図書室に急いだ。




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