俺とスカウト エキセントリック 1 





学校終わりにちょっと繁華街をふらりと買い物に出る。シャーペンの芯とか新しい文具だとかだらーっと見てると、日々樹と斎宮に出会った。

「珍しいな、二人して並んでるの」
「博物館をめぐっていたら出会ったのですよ!。」
「ふーん。博物館ねぇ。いま面白いのやってたっけ?」

頭を捻れど、そんな対した目玉がなかったはずだ。さて、と考えども思い出せないのは年かな?とも思うが。まぁいいや。と俺は思考を諦める。博物館や美術館に行くのは良いが長時間立ちっぱなしだと俺が疲れる。主に足が。

「君には羞恥心というものが足りないのだよ。全く。馬鹿みたいな大声と派手な身振り手振りで耳目を引いて、一緒に歩くのも恥ずかしい」
「諦めろ、日々樹のそういうのは前からだよ」
「フフフ!その流れだと聖書をひもといてお説教を始めそうですね。もっと楽しい話をしませんか?ゆらぎも混ざって。」

差し出された手を出したいのは山々だが、片手に杖もう反対側には荷物を持っているので差し出す手がなかったので、そっと視線を反らした。つれないですねぇ、ゆらぎはと言うが、残念だが三本目の手は生やせないんだよな。とか思っていると、自分で聖書の言及をしだすから、おれの予想を遥かに超えていく。

「自分から聖書に言及するとはもうちょっと考えて文節を組みたまえよ。だいたいぼくは愛でパッケージすれば何でも赦されるみたいな風潮が嫌いでね。俗物どもが口にする愛などというものは、大抵陳腐な欲望を正当化するための安易ないいわけに過ぎない。愛とは、もっと高みにある揺るぎない真実であるべきなのだよ。」
「愛についてはなんともいえないけどさ。それには賛成だよ。居るかもわかんない神に祈るよりも、自分で動いた方が何十倍も早い。」

神の愛だのご加護だの、勝手にのたまわって、勝手に納得して勝手に解釈してろ。と悪態つくと、神の子の言葉ですねぇ。日々樹がしみじみと言う。ほっとけ、神だのなんだのはいねえの。いないの。ゆらぎや宗が『愛』とか言うとなんだか無性に愉快ですね!いやあなた方が『愛のひと』だというのは理解しているのですけど……。
斎宮のはそれでいいが俺もその箱に入れないでくれ。愛なんて、与えるだけ悲しくなる。愛は薬だとここしばらくの俺はそう思うようにしている。愛は与えすぎれば、毒となり足りなければ麻薬となる。適量が難しいのは薬と一緒だと俺は考える。杖に体重をかけていると、雪に持っていかれて、つるりと滑る。おっと!と声を上げつつ手近な日々樹をつかむと、おやおや。大丈夫ですか?と言われて抱え上げられる。

「ちょっと町中でこれは恥ずかしいからやめてくれ」
「遠慮することはありませんよ、私とゆらぎの仲ではないですか。」
「斎宮!へるぷ!」
「目立つからやめたまえ。渉、嫌がっているではないか。」

嫌ですか、嫌です。食いぎみで返答すると、渋々と言う感じで子ども抱きをやめてくれる。下ろしますよ。といいながら、俺は地面の感触を確かめることができた。三毛縞や守沢に運んでもらってはいるが、この日々樹を向かい合わせに抱き抱えられるのはちょっとやめてほしい。っていうか、男子高校生をかるがる担ぐのやめてくれ。俺が悲しい。斎宮に礼をいうと、どこからともなく声が聞こえた。

「わたる〜 しゅう〜 ゆらぎ〜」
「おやおやおや?どこからか懐かしき旧い友の声が聞こえますよ!声はすれども姿は見えずっ、どこですか〜?こちらですか〜?」

耳に手をあてて、耳を大きくする道具を使ったまま、そのまま手近なゴミ箱から段ボールから片っ端に覗いていく日々樹だが、お前そんなところにひとがいると思っているのか?ゴミ箱のなかに深海みたいな大きな奴いると思ってるのか?っていうかゴミ箱の中なんて居たくねぇだろ。

「渉、君のその、耳をおっきくする芸は見飽きたのだよ。むしろ感心するけれど、いったいどれだけ手品の種を仕込んでいるのかね?」
「それはもう、煩悩と同じ数だけ!」
「108つしかないのか。もっとあると思ってた。」

ああだこうだ喋りながらも先ほどの声を頼りに歩いていると、にぎやかですねーあいかわらず。と言う声が聞こえて、日々樹がスタスタ歩いていく後を俺が追いかける。斎宮が俺を気遣ってか速度を合わせて大丈夫か?と声をかけてくるので、へーきへーき。と返事をしつつ、次の角を覗いてみると、そこに深海がへばってた。

「おぉ、発見!こんにちは奏汰。お外で会うのは珍しいですね。あなたの日々樹渉です!そしてあなたの斎宮宗とあなたの青葉ゆらぎもいますよ!」
「僕は誰の所有物でもないのだよ」
「まぁ、つむぎくんに所有されてるって言っても過言じゃないけどなぁ。セコムだし。」
「納得するな」

こつんと頭を叩かれて、俺はてへっと舌を出す。でも実際互いが互いのセコムみたいなものだしなぁ。と思いつつ、三人のやりとりを眺める。主に日々樹がしゃべって深海が返答して斎宮があきれてる図なのはいつものことだ。

「動けないなら、『おんぶ』して運びますよ。ゆらぎには断られましたが、腕力には自信あります!」
「渉、君は乱暴だから駄目なのだよ。僕が背負って運ぼう。奏汰。」
「うわぁ。うれしいですけど、ほんとに『だいじょうぶ』ですよー」
「もしかして深海、水分足りてるか?」
「からからに『ひからびそう』です。」

だから自販機の前でしゃがみこんでるのですか?飲み物を買おうとして、その寸前で力尽きたと。日々樹は顎に手をおいて考えるようなポーズで深海に問いかけるが、たぶんそれ俺の感覚じゃ違うと思うぞ。とか思った瞬間にアクアショップで散財した。と本人からの自己申告。その背後につまれている沢山の水槽が散財の量を物語っている。郵送すればいいと斎宮が言うが、すると没収されるから部室に運ぶつもりだったと。でも配送先に自分がいないから受け取れないですし、という深海に次から時間指定で運んでもらいなさい。と言うと、その手がありましたねー。と屈託なく彼は笑顔だ。そんな笑顔に当てられて俺は肩を落とす。羽風とか神崎つれてこいよ。と思いつつもその声を辛うじて飲み込む。斎宮が深海に後先考えろとか言っているのに追撃しても無駄というか
どうせ深海のことだから次の買うときにでもタイミングが合えば言おうと判断する。

「衝動買いは人生を豊かにします!」
「高いもの以外はな」

高額のものを衝動買いして、人生誤った奴なら五万と見てきた俺にとって、衝動買いは危険なものと認識しているので、斎宮の言うことには大賛成だ。それよりも奏太になにか飲み物を与えて上げよう。青葉も長いこと立っていると辛いだろう。と斎宮が言い出したので渡りに船だと思って俺は賛同する。立っているよりも座っている方が足の負担も少ない。

「そうですね!このまま奏汰が干物になってしまったら哀しいです!買いましょう買いましょう、奏太のために飲み物を、命の水を!ゆらぎのために、安らぎの場所を!」
「日々樹、うるさい。」
「奏太は熱いのは苦手でしたよね、ミネラルウォーターにしましょうか。」

日々樹が財布を開いて、時間樹に小銭をいれていく、ありがとうございますーといいつつぶっかけてください。という深海の声が聞こえて。俺はとっさに返金レバーを下げる。いやいや、こんな寒空で水を浴びたら風邪を引くし、下手し、氷点下近い気温のはずだ、ぶっかけろとはムチャを言うし、ぶっかけるためにみずを買うべきではない。どうしたのですか?と日々樹に問い詰められるが、俺の代わりに斎宮が深海を説き伏せている。

「とりあえずそこの茶店入ろう。」

俺の足がしびれ出してきた。ちょっとやばいと言うと、斎宮が俺を日々樹が深海と水槽を抱えて喫茶店に飛び込んで俺は喫茶店に叩き込まれた。お前ら以外といや五奇人だからっていうの踏まえないで、息ぴったりだな。とか思った感想は斎宮にねじ伏せられた。



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