俺と軌跡 電撃戦のオータムライブ 9e 





伏見と俺とお抱え業者と打ち合わせをして、その場を伏見に任せると俺は携帯を開くと衣更です。とメッセージが飛んできてた。つむぎくん早いねぇ。仕事。ありがと。とつむぎくんに返事を打ってから、衣更にお前らタブレットあんまり使うな。使ってもいいが、全部たぶん筒抜けになってるぞ。と忠告をする。
筒抜けですか。と返事が帰ってくる。謀はお前が得意そうだから言ってみるけどさ。たぶん、ね。と俺も付け加えて送る。忠告はできたから、彼らはタブレットを使わずにスマホを使いだすだろう。とか思ってたら、タブレットが主張する。送ったのは衣更、今俺の話聞いてた?とか思いつつ開いてみると、おもいっきりアプリのスタンプ連打。柄もまちまちなので、なにかメッセージ性はありそうだが、俺はな国語も数学も苦手なの。まぁ、あいつらに連絡いってるならいいや。おもいつつタブレットをとじた。
そのまま俺は色々と書類仕事に追いかけられて、時間だけが過ぎてった。あんずが秀越の悪意を片っ端から片付けるために俺はひったすらあんずのぶんの書類も片っ端から片付ける。役割分担ケースバイケース。と言えば聞こえが良いけどそうじゃないんだって、な。昔に一気にやってたことを思い出すように、書類を片していると携帯がなる。もしもしと出れば焦ったあんずの声が耳に入る。

「ゆらぎ先輩、大変です!」
「どした?」
「グッズ売り場の売り子がまったく来ません!」

俺のお抱え私兵になにかあったんじゃないかと思って携帯に連絡を入れるから。とあんずと通話を切る。俺の電話のアドレス帳に売り子会社と書いてるアドレスを開くと、通話が切れた。俺は首をかしげてもう一度かけるとこの電話はーと機械音アナウンスで、ブチられたことを悟る。仕方ねえ。と判断してあんずに折り返しの電話を入れる。

「あんず、たぶんブチられた。倒産かなにかわかんねえけど、今から電話番号送るからかけてみてくれ。俺もそっちに向かうから。」

それだけ告げると、俺は電話番号をあんずの連絡先に送る。すぐに既読がついたのを確認して俺は人並みを縫いながら足を急げる。そろそろステージの幕が開こうとしているからか、人気はかなり多い、熱気が伝わってくる。人にぶつかりよろめいたりするが、それでも俺はあんずのもとに杖をつきながら歩く。杖なんてないぐらいに元気だったらと考えるが、たらればなんて考えるだけ熱量の無駄だと判断して移動に集中する。

「あんず。」
「先輩!」

どうだ?と聞くと、ダメでした。と返事を聞く限り、どうも夜逃げしたっぽい。もう、この野郎。とおもいつつ、俺はそこの従業員の一人を思い出した。この間のライブでやりとりした関係で電話番号を交換したのだった。ふと携帯のなかを探すと、目的の人物の電話番号をタップして耳に当てる。電話の短い音を聞きながら、あんずにポスターにナンバリングしてこい、最悪俺が売り子全部をうけもつ。と声を荒げていると、はい!と大きな声が聞こえる。電話口向こうでも大きな怒号が飛び交っている。

「もしもし、お久しぶりー青葉ですー」
「あ、青葉ちゃん!元気ー!」
「ね、そっちなにがあったの?」

なんかえげつない音がしてるけど?と問いかけると、夜逃げだよ、朝会社集合だったんだけど、だーれもいないの。でもぬけの殻。なーんもないの。だから、みんな怒ってるの!と言われて。それで来なかったわけだ。と一人納得する。やれやれと首をふって、ため息一つ。急に電話かけてきてどうしたの?と言われて、俺もそっちに依頼してたんだけど、時間になっても人が来ないからさ。と告げると向こうがカラカラ笑った。お互い様だな!俺たちこのまま社長の家に言ってみるって話出てるから、そっち言ってみるわ。おっけー、わかったら情報ちょうだい。他の会社紹介するする。まじーありがと!じゃ、返事待ってまーす。と軽いやりとりでやるのは、この電話先の相手が入社した頃からの顔見知りだからだ。おつおつ。と電話を切ると、どうするかと一瞬考える。

「ナンバリングしてきました!」
「よっしゃ、あんず、ナンバリング用の注文書大量に焼いてきて。それさえしてくれたら、残りは任せろ。」
「かなりの人数ですよ!本気で言ってます!?」

俺を何だと思ってんの?いままでのユニットの運営やら会計やらなにもかも一人でやった一閥だよ。一人で財閥だからね。俺にできないことなんてないよ。ほら、『Trickstar』の女神様は自分が庇護する戦士のもとにご加護を与えに行く時間だよ。まぁ、一閥の頃の俺と今の俺はつながってるんだもん。いけるって。ケラケラ笑って俺は戦場に身を投げた。

「ま、裏方仕事は慣れっこだし。相手の財布を狩るなら、慣れてるよね。」

衣更と話はしたかったが、今回それは出来そうにない。とりあえずあんずに一言伝えておけば良かったと俺は後悔するも俺の思考は目の前に持っていかれるのだった。まぁ、たぶん俺が投げれる言葉なんて明星がぜんぶ言っちゃうだろうし、つむぎくんが達観して注意するだろう。なんでもいいけど。俺もそこにいたかったよ。仕方ないけどさ。もっとステージに立ちたいなぁ、とか思いつつ俺は思考を切り替えるために一番近くの机に走る。「いらっしゃいませー、何番がいいですかー?」とか「いくらですー」とか移動しながら計算しつつ注文したものの金額を計算したり、だとか済ませる。こういう慣れてるし、そんなに金額がバラけたものでもないので、とりあえず金額だけをしっかりしておけば問題ない。
つむぎくんたちが気にはなるが、俺がこっちを任せろ!といった以上には三人分ぐらい対応しなければならないし、幕が上がる前に客席に誘導も促しておかないといけないなぁ。とか移動中に考える。
「まもなく公演が始まります、グッズ販売は休憩中や公演終了後も販売しておりますのでー」と声を出していると、そのまま人はまばらになって、公演の音が遠くで聞こえだす。それでも俺はひたすら、グッズ販売に精力を尽くす。忙しいの大好きではあるが、足が多少悪いので、移動の範囲内にグッズをほぼほぼ設置して俺の移動を最小限にとどめながら沢山の人をさばきつつ、笑顔も忘れずにやるというのはある意味ライブの本質に近い。人と触れるのは小さな頃からやってたので、このあたりは気にしない。『Diana』の青葉くん!とか言われたけど、まー今はグッズ売り子なのでそういう挨拶もそこそこにして、そんな客は終演後ね!と挨拶もしとく、タダで転ばない精神は小さい頃に培われたものだ。つむぎくんに会う前のね。

「今のおれの戦場はここだけど、もっと鋭いことはしてやるよ。」

にっこり笑って、お客さんにグッズと引き換えに代金を受けとる。ありがとございまーす。という張り上げた声が、遠くまで響いてった。
もうちょっとして様子を見に来たつむぎくんと阿吽の呼吸でグッズ販売をはじめる10分前のこと。



[*前] | Back | [次#]




×