俺と軌跡 電撃戦のオータムライブ 6 





ここで油売っててもしかたないので、会話をそこそこに移動を再開していく。タブレットをもらって校内マップも持ちながら俺を先頭にして、後ろから飛んでくる会話に耳を傾ける。ふーん。と聞いてると、つむぎくんがふと「そもそも、今回の企画ってどんな感じの無いようなんですか?」と言った。明星が「あれ?青い先輩は詳しいことは知らずにノリで参加している感じ?」と投げられたので、あー昨日だいたいの調整したけどな。と思いつつ遊木の手を借りて校内を進む。

「その企画書の内容と、個人的に凪砂くんとやりとりしたりして得た情報が食い違ってるんですよね」
「…つむぎくんその情報いつのやつ?今朝なら俺も聞いてないけど?」
「あとで端末見せるんで―」
「おいー」

もーまた七種とバトる感じじゃん。とうなだれつつも、昨日話した内容の書類を鞄から取り出してほらよ。と衣更に渡しておく。あんずちゃんの企画書が夏の【サマーライブ】のリベンジ!みたいな方向性でしたけど。企画書の題名も【リベンジマッチ!】ってなってて、あんずちゃんやる気満々だ〜。って驚いちゃいましたから!普段の企画と比べて前のめりというかー。と言葉を選びつつ喋っているつむぎくんにふーんと返しながら、ゆらぎ先輩ここの角つぎ右です。と言われてそーだなーと確認をしながら、「言葉は選んでおけよー」と注意もしておく。「どちらかというと、『fine』よりも『五奇人』に近いメンタリティの持ち主です。人間社会の常識に従わないのに無意味に強いっていうか。」とお前も大概に失礼だよな。と思いつつ飲み込む。
渡した企画書を読みながら、誰が企画書を捻じ曲げたんだ?と頭を抱えてる、今の折衷案だから、まぁ明日にでもあんずと一緒に話し合いするけどな。と衣更をなだめていると、『Adam』専用ルームにたどり着いた。
わぁ!と歓声上げてはいる明星とそれをなだめつつちょっとわくわくしてる顔した氷鷹が続いて、もう。と言いながら衣更が入って、ちょっとビビりながら遊木が入る。四人で違う反応しながら入るのが面白くてそのままつむぎくんが入って俺が一番最後に入る。

「さっきから何度かダイヤルしてるんですけど、つながらないんですよ。」
「一応七種に連絡入れておくか。」

応接間セットに腰を掛けてタブレットを開く。わぁ!と言われたがそれを無視にして、ぼちぼちと連絡用アプリを開いていく。むむむーんと思いながら、七種と書かれている項目に連絡を入れれるページを見つけたので、業務連絡と書いて本題を入れておく。この部屋でいいんですよね。と言いつつGPSを添付しておく。
ふと視線を上げると、あんずが首を傾げているので、どーした?さっきの衣更から企画書きてねー?と言っていると、あんずのポケットの携帯が震えた。どうやら、校門前で待機していたらしいが俺の連絡が入って入れ違いに気づいて連絡を入れてるようだ。変にさわんなよーと明星に注意しつつ、一旦こちらまでもどれますか?と聞かれたそうで、返事を返したようだ。ちょっと仕様書を練るからお前ら行って来い。七種にはたぶん俺の場所は教えてるから、ほらいってこーい、と背を送り出す。タブレットで七種に連絡ページを開くと、慇懃無礼にひたすら持ち上げられていたが、俺はそれを華麗に切り替えし、そちらにあんずと『Trickstar』とつむぎくんを向かわせたと連絡を入れておく。すぐに既読的なのがついたので、俺はそのまま淡々と書類を処理し始める。舞台の発注書の原本を再度確認していると、伏見から電話が入るのでもしもーしと電話口に話しかける。

「あ?設営の業者が来ない?」
「えぇ。ゆらぎ様の後から来ると言われていた方々がいらっしゃらなくて。」
「一回調べなおすから、ちょっと待ってろ。伏見」

いつものかけ慣れた電話番号をタップして耳につける。探話音が鳴るのを耳でとらえる。受け取って、会社名が言われるので、俺は淡々と業務的に話をする。今日依頼をかけていた夢ノ咲の青葉ですが。と伝えると、あぁ担当者に変わりますね。と言われて保留音が鳴る。俺御用達でよく電話を掛けるので、取り次ぎもすーいすい。オモチャみたいなエリーゼのためにが流れてるが、ピロピロ流れてる音源に眉根を寄せる。思考書きなぐりようのノート鞄から取り出して、使い慣れたボールペンで眉間を抑えながら保留音が鳴りやむのを待つ。はいお電話変わりましたー。と言われて、いつもの担当者の声が聞こえたので、いつもお世話になってますーと営業用の声を作って、挨拶をする。

「本日こちらに作業員の手配をしていたと思うのですが…なにかありました?。」
「え?昨日の夕方にキャンセルの電話いただいたじゃないですかー。」
「ん?そんなこと言った覚えないですけど?」
「夕方ごろにゆらぎさんに言われて電話してますー。って…言われたのでキャンセル処理かけましたけども。」

言われた瞬間に、ふと七種が頭に浮かんだ、昨日の打ち合わせの時にふと電話番号と投入人数を打ち合わせの時に書いたりして申請したのだが、ここで使われたか。と頭を抱える。明日朝からこれますー?というと、まぁ急遽穴が開いたので困ってたところですー問題ないですよ。と言われてほっと安心する。明日から申請していた住所に来てくださいーとたったか話を進めておく。じゃあ失礼しまーす。と電話を切って、一人であっちゃーと頭を抱える。

「とりあえず伏見に電話するか…。」

頭を抱えて机に置いた携帯の着信欄を開いて、伏見をタップする。はぁ。とため息つきながら伏見に連絡を取ると、すぐさまに伏見です。と返事が来たので、さっきの話手を打っておいたぞー。明日朝一で来てくれるように手配してるから、安心しろ―。と返事をする。細かな話は今晩でもしてやるから、安心しろ。と笑っておく。気をつけろよーと念を押すがその口調は軽い。伏見位の事務力があれば察することは容易いだろう。念を押せとノートの端に書いておく。

「あーやだやだ。本気でつぶすならやっぱ、過去の縁を出すべきか?いや、出さないよ。出したらしんどいもんなー」

そっと自分に言い聞かせて頭を抱える。やだやだ。と頭をふって、そういえばまだ通話の最中だと思い出す。通話口からゆらぎ様?と言われて、すまんすまんと俺が謝っておく。とりあえず、今晩詳しい話な。俺とつむぎと伏見で詰めようや。と言い切って電話を切る。三毛縞とか朔間ならなんとか…なにすんだろな?と首を傾げる。いや、俺に計略なんて無理。いきあたりばったり全部片づけるだけだけどさ。

「他はまだかよ。もう30分以上誰も来ねえんだけど?」

やだやだ。と首を振りつつ時計を見る。明星たちを送ってから長針はぐるっと一周してる。何かあったかと思いつつ、こっそりつむぎくんに連絡を入れると、今凪砂くんとお風呂にむかってますー。ときたので、そうかーと思いつつ閉じる。どう別れて行動してる様子だ。むーん、と考えていると、がちゃっと扉が開いた。

「…乱凪砂?」
「つむぎくんの兄さん?」

うん、まって。いや、その認識あってるけど。今回のライブの補助になったからよろしくなー。とひらひら手を振っておくとちょっと困った顔した乱凪砂が振り返してきた。いや、世間の垢にまみれてなさはちょっとかわいいねぇ。と思いつつ、俺の前に座って、気にしないでくれ。と言われるので、そっか。と言う。普通に書類を広げて作業していると、向かいの乱は手にしていた石のようなものを磨きだした。…いや、絶対に俺突っこまねえかんな。突っ込んだら負けな気がする。いや、負けじゃないかもしれないけどさ。気にせず再度明日からの業者の指定をし直しているとまた入り口からかちゃっとなった。

「お?衣更?」
「青葉先輩?」
「他の奴は?」
「ちょっと迷っちゃって、あんまりよく解ってないです。」
「そかそか。乱、一人目来たぞー」

え?乱?衣更が俺が声をかけたほうを見ると、声を上げずに驚いていた。一瞬ビビって後ずさったのを見たぞ。ちょっと面白いのでもう一回動いてくれねえかな。とか思ったが、無理だろうな。乱は、ちょっと頭に疑問符をつけながらこんにちは。と言う。声をかけられてちょっとうひっ。って声が漏れたのを俺は聞き逃さねえぞ。そこからぎこちない笑みを浮かべながら、こんにちは〜ッス。と頭を下げた。何か用?とつっけんどんに言うが、びびらせてんぞ。とそっとそうか?と首を傾げていた。…五奇人よりとかつむぎくんが言ってたけど、うん。似てるよな。と一人納得する。誰に似てると言うと誰にも似てないが。

「いや用ってわけじゃなくて、ちょっと迷子になっちゃって、そのう、俺らの事聞いてます?」
「……『Trickstar』の子だよね。」
「乱。こっち衣更。俺の後輩、衣更、あっち乱。元『fine』で今『Adam』のリーダー。俺、青葉って…いらねえな。」

ほらあいさつあいさつ。と俺は書類を書きながらせかしてやると、衣更は改まって頭を下げたし、乱はよろしくね。とちょっと考えてから口を開く。肩書がうっとおしいよね。と言うが、有って損はないと俺は思うけどな。と言っておくが、なんとなく求められているような気がして俺は昔から、そんなに見知った顔でもないけれど、乱と気軽に読んでいる。七種に会ったら改めると思うけどな。と口に出しておく。

「着替えて踊ろうか?一人来たし。つむぎくんの兄さんもやる?」
「そーだね。補助と指導用に覚えるつもりだからな。衣更やろーぜ。」
「青葉先輩!?ちょ、ま!」

屈託なく踊れる。という事実がうれしくて衣更の手を取って更衣室に飛び込むのだった。



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