俺と軌跡 電撃戦のオータムライブ 5 





長風呂して足温めたり、いろいろやりながら夜の時間を各々過ごす。たぶん伏見に必要な情報を渡すにはちょうどいい機会だと思っているので、俺は一人長風呂に興じる。いやーつむぎくんが来ない風呂場って超絶嬉しい!っていうと怒られるけどさ、一人の時間っていつも何してただろうね。ってなっちゃう。お湯につかりながらぼんやりと思考を巡らせる。あーもう卒業まであと半年ぐらいかーと思いつつ、そっちのほうに思考を寄せて長風呂をしつつ脳内で資料作成しつつ、茹りながら縁に身を任せながらあったけーと言いつつぷかぷか。ふーっと息つきつつ、明日からもがんばろーと適当に切り上げて風呂を済ませる。
脱衣所から出て、手近な椅子に腰を掛けるとポケットから携帯を取り出して開く。メールだったり広告だったり入ってるので順番に振り分けて、順番に目を通していく。今でも来る連絡に辟易しなながら、んーと思考をする。使っていいのかと思うと同時に、連絡取った後の未来を考えると胃が重たくなった。いやいや、あいつらのためにここまでやる必要ないか。

「あーいや、だめやめやめ。」

すくってやれねーし誰も救えねーっての。と呟くと首筋に冷たいものが走って、小さく奇声を上げて振り返るとペットボトルを持った伏見が立っていた。なかなかお戻りになられなかったので、うだってるのかと思って。と言われて、すまんと笑っておく。今明日からの事を考えてた。と告げると、明日から激務ですからね。と伏見が頷くので、とりあえず明日つむぎと一緒に動きながら地盤叩いて整えておくから、伏見明日ステージの業者くるからそっち対応してもらってい?と聞けば、伏見は了承してくれた。

「あんがとね。まー俺のお抱えだから設計図渡したら大体やってくれるから見ておくといいよ」
「作用でございますか」
「あんずに下げ渡す予定だからそれ以外の予定に使ってやってよ。」

ケラケラ笑いながら廊下を歩く。杖も軽くつきながら歩いていると、そういえばつむぎくんは?と聞くと、少々賑やかでしたので布団に沈めてきました。と物騒なこと言われたので、俺は天祥院に逆らってもこいつには逆らっちゃいけないと脳裏に叩き込んでおく。
そんな賑やかな夜を過ごした翌日。
三人で優雅に朝飯を食べて、俺のお抱え業者と伏見を引き合わせている間に『Trickstar』が先に入ったと連絡が来たので俺の顔に似た奴がくるのでと業者に伝達もしてから、俺はつむぎくんに迎えに来てもらって移動を開始する。彼らはひどく賑やかなのですぐに分かった。

「はーいつむぎくん彼ら止めてきてー」
「えぇっ!ゆらぎくんも一緒ですよ!」
「あーはい。そうですよねー、とりあえず俺の歩行スピードじゃないから追いかけて!」
「そうでしたねー!おーい!『Trickstar』のみんな〜」

駆けていくつむぎくんの後ろからぼちぼちと歩いていくと、俺にも気づいたようで明星が大きく手を振る。うるせーよ。とたしなめつつ、もうゆらぎくん言葉を選びましょうよーと言われても、そのままはいはいと返事する。

「青い先輩たち!?こんなところで何してるの?」
「ん?お前たちのサポート要員だよ。ほら、校外イベントだと佐賀美ちゃんとか来るだろ?」
「そういえば校外の仕事だと必ず誰か先生がついてきてるよね。【スターマイン】でも、ヌギヌギ先生が監督役なってたし。」

ヌギヌギ先生って呼ぶと、椚先生は怒るよ。と遊木が指摘するが、そんなに明星は気にせずに、笑っている。あんずがおろおろしているので、おちつけーと頭を撫でて、落ち着かせる。ほら息吸え―。はけーと深呼吸させておく。困惑してるのか、なれない環境なのかはわからないがたぶん、俺が踏ん張っておかないといけない気がした。

「普段は先生が一人つくだけなのに、今回は青葉先輩とお兄さんも?」
「そうですよ〜、『Adam』というか秀越学園からの提案で、希望する生徒は何人でも同伴していいって話になってるんです。まぁ、ゆらぎくんは元から呼ばれてたみたいですけどね。」
「お前たちのダンスレッスンに一枚かませてもらってるから俺はそっちにつられたけどなー」
「ゆらぎくーん?」
「いやー俺も最後だし踊りはじめなきゃいけないしなー。ほら、俺一人ソロライブとか計画してるしー。」

宙の言葉を借りながらHaHaHa〜とつむぎくんの視線から逃げながら、一週間後のライブは大規模になりそうだしねー。昨日からサポート陣営は前乗りして準備を始めてるから、お前達普通に踊って歌うことだけ考えてろよー。とへらへら笑っておく。

「俺、『Adam』の凪砂くんとは元『fine』で親しいですし、『Trickstar』のみんなには、【星霊祭】なんかでお世話になってますからね。何かお手伝いできたらって。勿論お邪魔にならない程度にしますけど、全力でサポートしますので気楽に頼ってくださいね」
「んーつむぎくんの全力は俺によって制御するから安心してねー。ほかにも伏見とか来てるし、荷物も旅館に運んでもらうように手配してるし、たぶんいまそっちは伏見が対応してるよー」

弓弦もきてるんスね。あいつだけ?と衣更に聞かれて、そだよーと返事をしておく。天祥院に何を頼まれたのかは俺も知らないし踏み込まないほうがいいだろう。ふんふん頷いていると、今旅館っていいました?俺らが止まるのはホテルでしょ?と言われて、うーん。ここで言えないんだよなーと思いつつ、ホテル側に多少の不備があったから天祥院の家が経営してる旅館にしてるよー。大きな風呂もあるし、飯もうまかったよ。と前乗りの話も含めておく。衣更なら察しがよさそうなので、ふわっと踏み込むなよと意思を込めて『天祥院の』と言ってるんだからな。

「なぜか伏見くんが駄目だしして、みんなの宿泊先を変更したらしいですよ」
「あー俺がおっきいおふろがいいって駄駄こねたけどな!きちんと風呂はいらねーと疲れ取れねーじゃん」
「えー青い先輩がそれやったの!?」
「ほらー湯治も興味あったしー。天祥院にもしばらくのかりを作っちゃったんだけどさ。」

てへてへとごまかしておく。つむぎくんから怪しげな目線をもらったけれど、それもぜーんぶ知らんぷり。天祥院先輩のーとか氷鷹がいうので、「英智くん、すっかり悪巧みするキャラとして認知されてるんですね」とつむぎくんが笑ってる。『Adam』と戦わなきゃいけないのに、英知くんのことまで警戒したら身がもたないと思いますけど。主役は君たちなのでお好きなように。今回も君たちらしい、とびっきりの軌跡を見せてくださいね!とつむぎくんが言い切るので、プレッシャーあたえなーい。と脳天チョップをかましておく。いたーいというつむぎくんに、痛くしてますーと唇を尖らしておく。



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