俺と軌跡 電撃戦のオータムライブ 4 





つむぎくんと二人で部屋に戻ると伏見がお茶の支度をしていた。お前くつろぎすぎじゃね?お待ちしておりました、まもなく夕飯を運び入れてもらうようにしております。なんて言ってくれるので、遠慮なく俺は伏見の向かいに座り、情報を公開する。うっかりたまたま入れていたプレイヤーを再生する。
伏見の目つきが厳しくなったのを俺は見逃さないが、追及はしない。俺もなかなか複雑なものを持っているから触られたくない腹というのはそれぞれが持っているだろうし、まぁ、俺のつてを使えば。いや、使いたくないけどさ。
お茶を飲みながら俺と七種の会話を再生させる。俺の声はのんべんだらりとして指揮権を奪おうと会話を繰り広げている。七種は軽快に笑いながら俺を掌で転がそうとしている。黙々と俺は茶を啜り、三人で機械を囲む。男三人でテーブルの録音機を囲んで茶を啜る光景は、きっと異常なのだろうな、とか思っていると、七種に失礼すると俺の声を聴いて停止ボタンを押そうと手を伸ばす。青葉さん、と七種の声がして、伏見がそれを取り上げた。まだ終わりではないのでは?と伏見が言うが、終わりだよ。と俺は告げるが、そのまま七種が問いかけた。

「神はいると思いますか?」
「七種さんの心の中に居ると思いますよ、隣人を愛せと言いますからね。」

そこで俺は伏見から奪い返して命を落とす。つむぎくんがちょっと心配そうにこちらを見るが、ほっとけと視線を逸らした。まぁまぁ。と伏見が言うが、俺は気にせずこんなかんじだと告げる。あーつかれた。と声を出して机に伏せる。あいつ、ぜってーカメラ仕込んだ奴だって。とかいうと、賛同します。と伏見が言う、え?お前も?とか顔を上げると、えぇ、心当たりがありますので。と満面の笑みで言ってくる。…こいつも怖いなぁとか心の中で思う。

「物騒ですね〜。」
「まーたぶんこのタブレットも監視されてんだろな。」

ぼやくように吐き出して、机の上にタブレットを乗せる。対策案なんかねえかなぁ。んー。どこにカメラがあるかわからないからなんともなぁ、明星とか馬鹿だしなぁ。あー。とか唸っているとつむぎがタブレットを触ってるみたいで、自撮りアプリですって―。おもしろいですねーと伏見と二人で映っている。シャッターは切るなよー。と念押ししていると、推し測ったかのように部屋に料理が運ばれてくる。

「ゆらぎ様が打ち合わせ中に従業員を全員調べたので安心してくださいまし」
「お前の話はちょいちょい聞くけど、あんまり暴力的にすんなよ」
「勿論」

どっち否定か肯定してくれよ。と思いつつつむぎからタブレットを取り上げる。ネットワークにつながっている様子で、シャッター切ってないよな?と再度念を押してみる。勿論押してませんよ。って言うが中にデータ残ってるぞ!!!つむぎくんこのデータ音痴め。

「写真入ってるけどー消しとくぞ。」
「えぇ!?」
「ほんと機械音痴だよなつむぎくん。」

ケラケラ笑っていると、ふと気が付いた。そういえばさー伏見。と話しかけると、はいいかがしました?なんて言われたので、いやー個々の宿は明日から貸切って言ってたよなー?と確認をしておく。気を抜いたら七種の手下が宿の中にいたりしたら情報が筒抜けてしまうので、念のために聞いておく程度だ。

「えぇ、会長様のご厚意で本日のこの部屋と明日からライブの終了翌日まで全館を貸切にしてます。宿泊費なども気にしないでくださいとのことです。」
「また礼を言っとかなきゃいけねえな」

あーだのうーだのうだっていると、代わりにやっておきますよ。とかつむぎくんが言う。ほらまたダメ人間製造機と言うと、もう!とつむぎくんが頬を膨らませる。そうこうしてる間に料理は俺たちの眼前にそろっていく。おいしそうな料理だと思うと同時に伏見が小さく笑う。

「仲がよろしいですね」
「そうみえてるならいいよ」
「おや、案外よろしくない感じですか?」
「きちんと家族始めたのは最近だもんな。」

ほら、飯食うぞ。と手を合わせていただきます。と俺の声に従ってつむぎくんがいただきます。と手を合わせて言い出して、伏見が笑い出した。まぁ、高校生になってここまでやる家なんてないよな。と思うと同時に、これやっぱりちょっと恥ずかしいですね。とかつむぎくんがいう。待って、もっと恥ずかしいの号令取ってる俺!!19歳にもなってまだちょっと恥ずかしいことやってるのやなんだけど!いや、長々付いちゃった癖だよね。と俺は恥ずかしさを隠すように笑うのだった。



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