俺と軌跡 電撃戦のオータムライブ 2 





揺さぶられて目を覚ますと車の中だった。
あー?とか唸りながら意識の覚醒に勤めていると、上から声が降る「おきてくださいまし、青葉様。」んー?とそちらを見ると伏見がドアを開けてたっていた。わめいても何にもならないので俺は伏見の手を借りて車から降りて、今の現状がおかしいことに気がついた。

「夢ノ咲じゃない?」
「明日以後『Trickstar』の宿泊するホテルの下見の後にご挨拶の予定ですが、いかがされました?」
「俺、保健室で携帯に土下座してた記憶は有るんだけどさ。」

頬をかきながら、記憶をたどると保健室までしかないんだけど。いつ車に乗った?と聞くと、食いぎみに「締めました」と伝えられた。締めました?閉める?えどこ、首?なんか首ぐらい叩かれた気がしてきたり手荒で申し訳ない。と謝られたが、まぁ問題ない。平気だと笑いとばして、杖を受けとる。あんがと。と礼を言うと、どういたしましてとか言い返されて、なんか調子狂うな。と思う。周りの個性が殴りあいしている環境にいるせいか、普通の会話というのがどこか座りが悪い。気がする。

「秀越学園が用意していただいたホテルですから。」
「さしずめ、全部伏魔殿ってかんじかな。」

まぁ、うちの皇帝様より戦いやすいといいんだけどなあ。と呟いたが、隣にいるやつが皇帝様のお膝元にいるやつだったのを、忘れてた。あ。とか思ったが、となりはそんなに気にしてないようだった。秀越ねぇ。と思いながら目の前のホテルを見てみる。きれいな高層ホテルだと思うよ。でもなんか変な感じがするな。と思ったのは10分ほど前だったような気がする。
つれられた部屋の先で俺は違和感の正体に気付く。テレビ台の上に置かれたメモと高級感漂うボールペン。俺の筆箱に入ってるものと同じやつ。持ち上げると、ちょっと重たいような感じがする。じっと見つめてから、俺は思い立ったようにすぐさま佐賀美ちゃんに『電話かけるけど変な音がしたらすぐに折り返し電話して。』と連絡アプリを立ち上げて送る。すぐに既読がついたので、 俺は迷いなく電話をかける。

「あ、もしもし佐賀美ちゃん?お仕事の話なんだけどさー。昨日言ってたのやつーあれの日程って変更されたんだっけ?そうそう明後日のやつ。」

置いてあったボールペンをつかんで書く動作をして電話口に寄せるとすぐに電話が切れた。もしもーし?と安い芝居をしながら、変だなぁ。と言いつつ伏見に目線を送る。筆圧の強い俺がばれないように一枚紙をひっぺがしてから書いた小さな文字は『盗聴』。ふと伏見の眉間に皺が寄った気がしたが、書いてる間に佐賀美ちゃんから電話がかかってきて、今確認したけど青葉お前それ再来週だぞ。と指摘を倉って、あーじゃあ戻ったら聞くわー佐賀美ちゃんごめーん!なんでもなーい仕事中だったんにごめんねー。と謝って、文字を書いた紙をポケットに突っ込んで、電話を切る。

「思い出したから電話かけたけど、ごめんな。急で」
「いえいえ、全然お気になさらず。」
「そういえばさー、ここの風呂小さい目だけどあいつら疲れとれんのかね。」
「そうですね、そこには些か不安がありますね。会長様に連絡を取って宿の変更でもしましょうか。」
「俺最近湯治に興味あるんだよなー。ラッキー!いやぁ家で長風呂すると30分に一回ゆだってませんか?ってつむぎくん来るからあんまり出来ないんだけどな。集中して本も読めないの。伏見、最近のお勧めの本とか参考資料とかない?」
「資料ですか?」

そっち手配できそうなら、秀越さんに言わなきゃなー。下見もだいぶやったし、ご挨拶にでもそろそろ行くか。俺の業者にも変更の話をしなきゃならねえしなぁ。手配だけでもやって明日朝からそっちに四苦八苦する感じになるかなぁ。と一人そっと計算する。盗聴機が出てくる辺り、まぁ、そういう座った肝のやつが狙ったのだろうか、っていうか俺あのボールペン持ってて良かったよな。大事に使おう。とひっそり心に決める。っていうかつむぎくんの誕生日プレゼントなんだけどさ!!いいだろ!つむぎくんの髪の色と一緒のボールペンだぞ!羨ましいだろー。ふふーん。どや。
ってまぁ、本人の前で言わないけどな。多分明日以後に伏見からばれるんだろうけどさ。まあいいやと思考して、

「迂闊なことしゃべれんな。ふーん。」

俺はどうもこういう雑務の星に産まれたのかもな。まぁ、やりなれてるし三年間ずっとやってたから、許可さえ降りたら俺専属お抱えの師団だって出せるし、オールマイティーなんでもできる駒になってやろうじゃん。と俺は一人満足げに頷く。

「伏見ちょっと役割分担しようぜ。お前の得意なこと教えてくれよ。」
「私、ですか?」

そう。多分うちの五奇人いや、朔間以上のやつがごろっごろていうか二人だけどさ。いるし、あーんなことしてるなら対策とりやすくするために連絡交換と、戦略と情報開示だよ。どうせあと半年でいなくなるし、俺の抱えてる師団はあんずに渡るし、困ることなんてねーの。天祥院みたいな奴だと情報はちょっと渋っちゃうけどお前ならいいよ。姫宮にしかつかわねえだろうし。佐賀美ちゃんに頼んでダンスレッスン見学も混ぜてくれてるから俺、べつになにやったって問題ないよ。今回あんずの下に俺がいてその部下として伏見やつむぎくんもが居る体制なので俺があんずを手繰りながら指揮するのが夢ノ咲の目的でもあるのだろう。と俺は勝手に思ってる。

「ま、あとでつむぎくんもあんずも来るし、それまでに動きやすい地盤でも整えてやろうかねぇ。伏見くんや。」

ちょっと朔間みたいな物真似をして、にっと笑う。他校のダンスレッスンが楽しみで仕方ないと顔に出てますよと伏見に言われて、俺顔に出るんだ。と新たな発見をした今日この頃。物真似は似てませんね、とか伏見に言われたけど、お前もしかしてこっちのが素だったりする?まなんでもいいけど。楽に構えてくれよ俺は身内に甘い人間なんだよ。青葉様は弟にとんでもなく甘いですからね、って言われたけど。ほっとけっての。最近兄になったばかりで身の振り方知らねえんだっての。っていうか、納得すんな伏見。ほっとけっての。何度も言うがほっとけっての。物真似を掘り返すな!伏見!うるさいぞ!



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