俺と最後の踏伐・夜の終演ライブ。 16 





そのまま曲が終わると朔間のターン。そのまま下がってバックにつこうとしたら、ほれほれ。じじいはちと疲れた。とか言って、俺にも半分パートを譲ってくる。おい、俺らバトルしてなかったか?なんて思うが会場は沸いて、あいつらは朔間ばっかりみてるけど、会場が沸いてるなら文句はないらしい。朔間も俺を気づかってかそんなに踊らない曲にしてるのが、ちょっと残念だけど、このあとは思いっきりの戦闘になるので十二分にありがたかった。
歌いきると最後の集計に入るので、俺たちは繋ぎのMCにはいるんだが。

「なぁ、お前らいつそれ準備したの?」

そこまで予測してたの?と問えば、Amazingでしょう!なんて日々樹が胸を張る。つくったのは『しゅう』ですよ。と深海の援護射撃が入る。模倣は人間を堕落させる。芸術性がない。それは人間でない、ただの猿だ、かなり手を入れさせてもらっている。六人分もにいさんは準備したノ?。一晩あれば問題ない量だ。
五奇人がいろいろ話している間に、あれやこれやと回ってみたりいろいろしたが、そんなに差はないぞ?と怪しむ。表は変えては意味ないと斎宮が言うので俺は衣装の上着を脱いで見ると、明らかな違いがあった。

「裏地ついてる!!」

コスト面の問題で俺たちは安さを求めて裏地のないジャケットだったのに、そこに青い布で裏地が当てられている。お前らも?と聞くと、それぞれのユニットカラーの裏地に見えないような背中の切り返しに仮面だったりコウモリだったりと刺繍まで入れられている。俺のは?と思うと、裏地につむぎのマークの刺繍と、『Diana』の月と月桂樹が入れられている。
カメラさん見てみて!!と俺はカメラに近寄って刺繍を見せびらかす。あんだけ言い合いしたのに、やっぱりあのつむぎくんだよ!ってなって、カメラに向かってつむぎくんありがとう!!!!俺さーつむぎくんの作った服とんでもなく好き!もうこの辺りの切り返しとかねー俺の体型に有っててーとかどうでもよくない大事なこと言ってると、集計がでたかラと、ステージ中央に戻される。ステージのはしっこの子にファンサービスして戻ろうとしてると、一発殴られて引きずられる。夏目お前俺の扱いつむぎくんと一緒になってねえか?
俺と夏目が中央に戻ると朔間がすでに紙を開きかけてたが、俺がさっと奪って破り捨てる。もう勝ち負けなんて関係無いよ。みんなをハッピーにするんだからさ。

「いいよー放送委員、次の曲かけてー!『Diana』の十八番、ユニットソング!」

前奏がかかりかけた瞬間、スピーカーから俺のユニットソングが聞こえなくなった。ちらりと俺がアイツら見ると笑ってこっちを見ていた。一人たりてなかったのに、いつのまにか戻っている。観客がざわめきだしたので、俺は空気を変えるために勤めて明るい声を出す。

「あーそうだ、ごめーん!手順間違えてたわー。確認するけど、みんな聞こえてるよなー?」

聞こえてるなら白いペンライトふってー!はいぴょんぴょーん。
一戦目に説明用のペンライトを白にして、上に下にふってみると、観客は追従するようにリズムをあわして振ってくれる。遠くまで聞こえてるようで、放送席もおなじように上げ下げしている。

「問題ないよなー。おっけー!俺段取り間違えてごめんなー。三毛縞ー守沢ーベニヤと台もってきてー。放送委員会、俺のマイクブースト頑張ってかけてー。」

あれやこれやと指示を出せば、舞台袖から待ってましたといわんばかりの、三毛縞と守沢が現れた。準備よすぎとか思っていると俺の意図を察したのか彼らは、さっさと段取りよく台をおいて、ベニヤを広げる。ゆらぎくん、なにするんじゃ?とうすうすわかってきた朔間がわざとらしくアイツらを見ながら聞いてくれる。土台の準備ができたので、俺は土台のなかにマイクを入れて、ベニヤの上に乗る。怪訝な顔した夏目にこっちこいと手招きする。近くに寄ってきた夏目の腕をつかんで、夏目の持ってたマイクが音を拾うように俺が言う。

「朔間も人が悪いよねー。俺に次お前がタップで音だして朔間たち歌う予定だっただろ。放送委員ごめんなー。どっきりしたよなー!次のやつあれしたら虹色ふってー」

言ってくれよー。と告げながら俺は4カウント取ってから装飾音符をならして、ベースの音を刻む。
どっか異国の遠い人が言っただろ?音がなければ作ればいいじゃないって。え?パンだっけ?なんでもいいじゃん。俺が踊れてたらさ。
ダカダカ刻んで、朔間たちが歌うのは俺のユニットソング。
女の子がかわいいし、声をかけて遊んだけれど。全部俺の幻だった。っていう何とも今みたいなかんじの歌。いや俺の場合、女の子かわいいっていうより、ダンスめっちゃ良い曲だったけど何のタイトルだたか忘れた。みたいな歌だけどさ。
俺は歌いやすいように表のカウントだけを強く蹴りながら、他は軽い装飾でごまかしつつ二曲ほどやり過ごす。タップのせいで俺の降りぐちゃぐちゃだけどさ、ふとアイツらを見ると顔を真っ赤にするぐらい怒ってる。お前らが怒る理由なんてなんもないんじゃないの?と俺は余裕ぶった顔して、ひたすら。
俺はすました顔で本来の曲と同じエイトフォー数でソロを決めきって、カウント四つ入れてから後奇人のパフォーマンスしやすさを忘れない。なんだか気分は指揮者だけれどさ、こんなにうるさい指揮者もいないよな。と思う。
そのまま踊っていると後奏が近くなってきて、斎宮がやってきた。ニッと笑って俺にマイクを突き付ける。俺踊っててそんなところじゃないんだけど!最後に一言歌って最後にアタックで終わりだけど!?でもこれはやれと言うことだろうと思って喉を開く。

「すべては夢のせいさ!」

言いきると同時に着地。アタックをかけてベニヤは大きくダンとなった。おい、絶対にアイツらを煽るためにやってきただろ!マイクに入らない程度の声量で言ってやると、そのための選曲だろう。としたり顔。いや、違うけど。俺そんなつもりで入れたんじゃないけどな!深海から水を受け取って、ぐっとあおって放送席を見るとまだ赤く光を返してくれない。まだ治っていないのだろう。俺はそのまま4カウント叩いて、次の曲をせかす。次は俺の思い出の曲。っていうか事故起こした曲な。あ、物理的なやつ。それはいいけど、またね会おうね!月はみんなの近くにいてるよ。なんていう俺たち『Diana』のお約束曲。意味合いだけで言うと、俺らはここで踊ってるから待ってるよ!っていう、俺得なやつ。

「これが最後の曲だし、俺そこまで歌ってないけどーみんな楽しんでねー!!」

喉からの発生でマイクに拾われないこの声は、誰に届いてるんだろうな。それでもいいや、踊れて楽しくてお客さん楽しんでるんだもん。仕込むための俺の疲労なんて安いよ。それでかかってくれるなら全然問題ない。ちょっと膝が痛くなってきた気もするがあともうちょっとだと自分に言い聞かせて、踊る。
サビにはいると三毛縞と守沢、手招きして合図すると2人が顔を見合わせてから俺の横にならぶ。俺はアレンジをしながら、ほら右右、左左。声だしてやっていと2人は要領を得たのかラインダンスが揃う。間奏になると五奇人気づいて俺のソロとバックで7人でラインしたり、してた。めちゃくちゃ楽しくて、余分な装飾だって入れてしまう。俺のソロが終わると守沢やらがはけていく。要領わかってて俺は嬉しいぞー!守沢。奇声を上げて、五奇人の歌い出すタイミングを作るとそのまま加速させて会場を多いに沸かす。
盛り上がり加熱を続けて、俺が、最後に四分3連符を踏むと、会場は大きく沸いていた。膝がガクガクしてるけど、これでもまだ終わらないのだから怖い怖い。笑う膝を叩いて、舞台袖の三人を引っ張り出す。俺はーと遠慮するので、そのまま俺は三毛縞と守沢の手を引いて一緒に中央にもどる。いつのまにか日々樹が床に仕込んだマイクを回収して俺に手渡してくれるので、俺は遠慮なくマイクを受けとり叫ぶ。

「みんな、ほんとにありがとー!」





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