俺と最後の踏伐・夜の終演ライブ。 05 





ぎゃんぎゃん吠えるがしばらくお待ちください。の一点張りで伏見が歩く。俺もそれなりの体格と…いや確かにつむぎくんより軽いけど、そう軽々と持ち上げられると俺の面目もあるじゃん!男の子として!まぁ肉つけたくても食欲ねーんだから仕方ないじゃん。って言うとつむぎくんがめちゃくちゃ怒るんだけどさ。
俺の主張はお前の坊っちゃんより軽いから痛くも痒くもありませんって伏見はいつもどんだけ虐げられてんの?とか喉まででかかった。黙った、俺えらーい。戻りました。青葉様失礼します。とか伏見が言うんだけどあの部屋から引っ張ってこられたのがぜーんぶ失礼なんだよな。いや、しゃーないんだけど。俺が遅いし、いい足になれそうだよね。君は姫宮の所有物だけどさ。伏見が俺を椅子におろした。あんがとと礼を言うと、どういたしまして。と言って彼は離れる。周りを見るとドヤ顔の姫宮とその後ろに立つ伏見、書類をがりがりしてる衣更がこっちをみて驚いてた。そして俺の目の前には噂の生徒会長と副会長が立っていた。

「熱烈なお迎えあんがとよ、天祥院くんさんよぅ」
「ゆらぎは毎回逃げるからね」
「お前さんより働くよ」
「そうだな。こいつはなかなかくたばらん」
「蓮巳?!」

ひっでえ!と訴えるが「即死になるような事故を足一本の代償で終わるやつがくたばると思ってるのか?」と言われると俺もぐうの音が出ない。事実だし。
嫌いなのはどうしても避けたくなるよな。と喉から出かけたが、感づかれそうなので黙っておこうと決める。で、何の用事?と平然とした顔で問いかける。盛大に何かしようとしてるって聞いてね。ふっと笑った生徒会長はどうも嫌いだ。手元にいた親友という青い鳥さえも気づかずに買い殺していたのだからいい感情を持てというほうが正気か?と問いかけたくなる。

「君もまだ夢ノ咲の生徒だからね。何かしようとしてるなら手助けしたいからね」
「夢ノ咲の味方。じゃなくて大多数の味方、だろ?」

マイノリティには厳しい世界だと俺は笑う。そう、マイノリティで俺は倒されたのだから。大人数の不平を飲んで俺を物理でさばく。あれは采配のとられた事故だと俺は勝手に思ってる。天祥院がとったかあいつらがとったのかはわかんねえけどさ。

「俺はやりたいことのために正規ルートとおって小さなイベント起こそうとしてるだけだけど?」
「正規ルートならいいんだけどね。」

っていいつつ天祥院はゆらぎはやることが難しいからね。と言うがお前より扱いやすい人間だと思うよ?俺。とは思うが、君は思考が読めないから苦労するよ。手段が見えないから対策が打てないんだよ。と言うが打たれたら困るからそうしてるんだよ。解れよ。

「妙な動きさえしなければ俺たちは何もしない」
「妙じゃない動きって逆になんなんだ?俺は正当な書類を正当に出してるが?」
「噂では五奇人が動き出しているとかいうんだが?」
「知らねっての、お前の手下に五奇人いるだろが天祥院」

おめえのところのやつに聞けよ。と口を開くと、渉はそういうところは教えてくれないからね。と天祥院は肩をすくめる。五奇人の主な部分と俺は学年が違ったんだから顔合わせたら話すぐらいはするけどさ。それ以外はおろそかなの。俺が孤独な城の暴君だからね。

「正規ルートなのは問題ないけど、きみはどうやって舞台に立とうと思ってるんだい?」
「ルールの穴を突こうと思ってるよ。」

これ以上はいえないよ。俺もまだわかってないんだから。もしかしたら奇跡は起きるのかもね。と俺は嘲笑する。
いやぁ、それが『B1』か『S2』かすらも決めてないんだよなー。それ以外は俺が持ってきた企画書通りだよ。良くかけてるだろ音楽申請からきっちりそれでやるけど?俺のやりたいこと全部突っ込んでるから費用がヤバそうだけど、俺の残してた手切れ金を使うタイミングだと思ってるし、生徒会に奪われるようなことはしたくねえしな。ひらひらと手を振ってやると、まー来年度にはいなくなるユニットの最後の花道だよ。それに、お前たちが手を下したやつの最後の舞台だ。それ以外は俺に要らない。一閥はそこで華々しく散るんだよ。生徒会の横槍で月の女神が滅んでも、夜であることは変わらないよな。

「青葉、それで許されると思ってるのか?」
「だから、正規ルートの穴をついてるんだからグレーゾーンだろ、蓮巳。俺の力をなめてるンか?」

一閥だぞ?一人でなんでもやった暴君だよ。できるわけがないと思ってる?お前たちの知らない直属私兵の業者だってあんずに順番に手渡してやったりしてるんだぜ?そこ渡しても問題ない人脈だってあるっての。嘲笑ってやれば、姫宮が顔を真っ赤にして怒り散らすので俺ははいはい。と返事をしてのらりくらりと交わす。

「だーれも、俺を知らないんだ。そう、皇帝陛下も一人で城を築いた暴君も、新しくやってきた『プロデューサー』も。ほんと、だーれもね。」
「ゆらぎ、」
「俺どんだけ時間が過ぎても弟を潰しかけた奴は許さないよ。例えばそれの原因が俺だったとしてもね。」

まーやってもお前ら生徒会に迷惑かけねぇよ。そりゃあ一瞬いらっとさせるかもしんねーけどよ。最終的に段取りはそっちに今まで散々打たせてやっただろ。なら次は俺の首一つで勘弁してくれよ。どうせ次の年度には俺は焼かれ討たれるんだからさ?
お前は…。と蓮巳に呆れられたがこれが、俺。青葉ゆらぎなんだよな。俺はステージで、また散る。それだけだよ。薄く目を開いて、思考を巡らせる。朔間がなんかしてるのは知ってるが俺は聞かされてないんでね。言ってもないし、知らないよね。ただ踊っただけだからさ。
用件はこんだけだろ?俺は知らないし、五奇人はなにをしようとしてるか知らないけどさ、まー多目に見てよ。勝手に死に行く奴なんて放っておいてくれよな。
にっと笑って椅子を立つと伏見が杖を差し出してくれたので、遠慮なくそれを受け取って、俺は「んじゃあね。」と返事をして部屋を出る。さて、鳴上に貰った水を返しにいかねばな。





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