俺と疲労と金色の風・励ましのウイッシングライブ。 4 





汗を流して授業に望む。始業までを睡眠に当てて、授業中に考えるのは昼からの資料作成としばらくの仕事の配分について。あんずの仕事を徐々に返していこうと言う方向で進んでいるので、生徒会への書類を作らねばならない。その内容を練りながら板書をしていたノートのはしっこに書きたいことを書いていく。そうして時間を進めていくと、あっという間に昼休み。さくっと飯を済ませてから、あんずから引き継ぎを受けていた氷鷹たちの仕事のまとめを彼らに渡す。満面の笑みの明星に、お礼はあんずに言っておけと伝えて、俺は教室に戻って仕事を減らすための書類の作成に取りかかる。
新しい紙を出してまとめていると、三毛縞が俺の前に立った。

「ゆらぎさん、寝ているか?」
「まぁ、朝とレッスン前に二三時間ぐらいな。」

スポドリとエナドリ買いにいくし、平気だっての。去年寝れない日々が続いてたから、あれと比べたらよく寝てるよ。ははっと乾いた笑いを浮かべる。第二弾の放課後練習の後は俺のダンス練習に当ててるので、もしかすると言ったよりも寝てないかもしれないが、どうせ明日で終わりの話だ。目の前に餌となるダンスがあるのだから、寝ずになんていられない。

「ゆらぎさん?」
「三毛縞!今俺、とっても楽しいんだ」

起きたら目の前が踊れる環境で、振りやフォーメーションのこと考えてるがめちゃくちゃ楽しいんだ。あんずが倒れた今不謹慎だけどさ、倒れてくれてありがとうとか思ってはないけど、一つでも多く振りをつけたいし踊りたくて仕方ないんだ!昔に切れた赤い靴をはいた足が一周回って帰ってきたような、ずっと踊ってたくて仕方ないんだ。

「あんずが帰ってこない方がいいとは言わない。でも、この時間がとても愛しいから、しばらくは退院するまでは夢を見させてほしいんだ。三毛縞。」
「必ずあんずさんが帰ったら休むんだぞお」

わかったわかった。と返事して、春先の目処のやりたい予定のために動こうと思う。あんずにはあぁ言ったんだから、俺が動かなきゃ誰も動かない。俺のユニットだ、月永が裸の王様なら俺はひとりぼっちの王様だっての、美女と野獣。獣かよ。いや、野獣にだって従者はいたか…。ああやだやだと首を振って躍りと関係ないことは考えるべきでないと踏ん切って、再び書類に手をかけようと思ったら三毛縞が俺を呼んだ。んーなに?と顔をあげれば真面目な顔した三毛縞がそこにいた。さっきからいるけどな。

「ゆらぎさん、今回のソロの話なんだが」
「誰にするかまで考えてなかったが、放課後のレッスン次第かなと考えてるが?」

誰がいいかなぁ。と思い悩んでいた、結局誰がやってもってな感じだが。そっちも本気で考えないといけないんだが、と思考を走らせていると三毛縞が口を開いた。忍さんにソロをしてほしいと三毛縞が言う。話を聞く限り、どうもこちらもこちらであんず同様思い悩んでいるらしい。人見知りと聞いてるので、そこまで気にはしてなかったが、レッスン前の光景では後ろの方に居た気がする。

「全然問題ない。羽風以外の誰にするか悩んでいた所だし、今日の放課後の追加レッスンになるかもしれないが、まぁ大丈夫だろう。」

今回のメンバーは極めて優秀だもんな。と朝のレッスン光景を思い浮かべる。その話は三毛縞からしとけ。と夜のレッスンまでに変更かけてなんとかしてやるよ。任せろって。三毛縞頑張って口説いてこいよ。じゃなかったら俺の今度の依頼料二倍取ってやる。とからかい口調で言うと、彼はそれは大変だ!とカラカラ笑って飛んでった。あんずが帰ってきてしばらくしたら、俺はまた本当のアイドルに戻る。原案ばっかりじゃなくて、俺の作った躍りで俺が踊る。それだけが俺を動かしてくれる気がする。三毛縞もいなくなったことだし、と視線を書類に戻して、俺は作業を再開する。が、仙石のソロのことを思い浮かべて紙に書きなぐりかかろうとしたら、紙の上に袋が2つ。

「ゆらぎくん。着替えとご飯持ってきましたよ〜、ちゃんと食べてますか?」
「ん?あ?つむぎくん?」
「はい、ゆらぎくんの弟つむぎです。」

連絡くれないんで生きてるか心配しましたよ。そういえば携帯を開いていないことを思い出した。ゆらぎくんただでさえご飯を食べないで躍り暮れるので、ちゃんとご飯食べてくださいね。食べ終わるまで見張ってこいって夏目くんに言われてますから〜。という宣告を聞いて、さっき飯食べた所なんだけどな。ただし、栄養補助食品。それを食べたことも蓮巳からのチクリでばれてるので、俺はつむぎの持ってきてくれた飯を吐きそうになりながら食べるのであった。チャイムが鳴るので食べきらないのは夕飯に回す。と告げて、つむぎを隣クラスに追い返す。守沢にのこりを押し付けて、授業中ながら俺は仙石のソロ用のアイディアをひたすらひねり出して、休み時間には俺とあんずが一週間決めなければいけない仕事やらを片付けきる。
あぁでもないこうでもないと紙に書き殴っていると瞬く間に放課後。放課後レッスンチームの前にソロ用の振りを作り上げる。寝不足でふらふらするが、楽しいのが勝って体は踊りたいと叫ぶ。それに従って振りを選んで、フォーメーションもそのタイミングで作り上げる。あんずの目が足りない!とか言わせたいぐらいに詰め込んでいく。
人がぼちぼち集まってきたので、思考を書きなぐった紙を見ながらソロ用振確認を始める。それに合わせたフォーメーションをテキパキと決めていく。ゴリゴリしているも時間が来たらしく放課後レッスンチームがやってくる。面子を確認して、レッスンを初めようと舵をきった時、『ユニット』が一つ分多いことに気がついた。

「おい、明星!」
「青い先輩のお兄さん!」

青い先輩のお兄さん!じゃねえよ!お前明日、別の仕事だろ!と言うと仕事も振りも覚える!というが、お前が最終的に渡した原案をトチったら俺の努力がなくなる。んなもん許せるか。と携帯で氷鷹に連絡をして回収を依頼する。だって〜とか言う心意気は好きだ。たがな、お前用のやつは準備してないんだってば。おいこら。
ごねまくる明星にとりあえず「お前の仕事を先にやれ。」そっちをトチんなきゃ後で教えてやるりと三毛縞が聞くと棄却されそうな提案をしてとりあえず明星を叩き出す。これが氷鷹だったりした可能性はあったが、まぁあそこの『ユニット』は比較的扱いやすい奴でよかった。扉の向こうでホッケーとか言う声が聞こえてドアを叩く音が2つしたときは頭を抱えたくなったが、「煩くしたら、教えるの半年先にするぞ。」と脅して黙らせた。
ドアの向こうの気配がなくなってから、内容を先に言う。そしてソロとフォーメーション以外の振りを叩き込んでいく。一通り教えて音楽に合わせて拍をを揃わせることを意識する。かなりの人数がいるので、ここが揃わなければカッコ悪く見えるものだと言いつつ、俺はひたすら笑え飛べと叫び踊る。朝と夜と踊ってるので、膝が笑い初めたが、まだまだ踊るのが楽しくて、口元が緩む。

放課後レッスンチームがある程度形になってきたところで、自主練の時間が来て朝練チームが顔を出す。蓮巳と葵が今回の衣装を運び込んできた。一人一人のデータやらは三毛縞がまとめていたらしく、天祥院の発注で今回用の衣装が俺の手に来た。衣装が嬉しくてニヤニヤしていると、仙石がもじもじと俺に声をかけた。

「青葉殿!」
「あ、仙石。話があるんだ」

今回のソロ誰にしようか悩んでたんだけどさ。仙石、今回発起人だろ?やらねえか?嫌ならいいんだけどさ。誰がやっても遺憾しかなさそうだし、発起人。っていう理由があるわけだし。ダメか?と追い討ちをかけるように問いかけると、仙石は目を輝かせて頷いた。じゃあ先に練習をするぞ。と小道具を取り出す。
道具を見て応援はチア。バトントワリングだと伝えると、不安そうな顔をしたが俺は大丈夫だと信じてる。
『流星隊』は昔から運動神経の塊ばかりが揃う『ユニット』だからな。




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