俺と疲労と金色の風・励ましのウイッシングライブ。 3 





あんずが倒れて二日目。
退院日が明日というので、とりあえずの昨日からの引き続き緊急性のあるあんずの仕事を片付けながら、音源を三毛縞から受けとる。楽曲は月永が書いたらしい。なんか沸いたんだろう。参加メンバーも蓮巳から連絡が来たので、俺は俺の仕事。もといライブ案の作成やらと生徒会に出す今回のイベント企画書を書き上げつつ、ライブと同時開催される氷鷹たちの仕事の模範回答の作り込み原案の作成。あとは手渡す程度の精度まであげていたら、気がつけば電車もない時間になっていた。帰宅はどうも出来ないので、つむぎくんに連絡をとりあえずいれて、最後にひとつ書類を片付けてから、ようやく俺はもっと大本命とも言える本格的な俺の仕事にとりかかるのだった。
今度のライブ用にかかれた月永の音を聞いて、違和感がないか等の確認のために踊り始める。最近『Diana』として動き出しているからか、歪だった足の動きは滑らかに感じる。やっぱり躍りは餌だと思う。餌を食って、そのまま自分に帰ってくるのだから、一通りを決めてそのまま振り付けの踊りやすさを考えながら体を動かす。踊っている最中にプレイヤーの命が切れたので時計を見ると、学業開始まであと3時間と時計が言う。朝集合がかかっていることを思い出して、のたのた動き出す。
やりすぎたとも思えたが、踊れたことの達成感がはんぱない。もっと踊りたいがこれ以上かけれる音もないので、とりあえずシャワーと栄養補給。さくっと済ませて朝レッスンが始まるまでに多少の時間があったので隙間時間を利用してレッスン室の隅っこを陣取ってジャージを頭に被って睡眠。起きたら三毛縞と情報を共有して、メンバー顔合わせと、レッスン開始。行き当たりばったりの人間だが、急な舵切りだけが得意になってきた気がする。
とりあえず手近な紙にレッスン開始まで起こさないでください。立て板もとい張り紙をして、そのままぐっすり。床は固いが目を閉じて横になるだけで、とか思った瞬間に意識は夢の中だったみたい。まるで10秒ぐらいだけ意識を飛ばしたとか思ってたけど、15分程度寝ていたらしい。いつのまにかそこそこの人の気配が増えてきて耳がさえる。

「ゆらぎ先輩、起きたのね」
「半端に寝ると絶妙に眠いな。」
「振り付けもお仕事もお疲れ様ね」

はいどーぞ。と差し出された水で思考を切り替える。今から、なんだったけ。とか眠たさで緩くなった思考をどうやって切り替えるかと、あくびを噛み殺していると三毛縞が叫びながら部屋に入ってきたので、思考なんてどっかにいってしまった。

「ママは元気が有り余っている感じねェ?」

アタシなんてー。という鳴上におう。と空返事しつつ辺りを見ると影片が今回のジャージやで。と上下の揃いを手渡してくれた。準備早いなぁ生徒会とか思いつつ、返事してさっさと着替える。といっても、俺は上だけだが。

「楽曲はレオさんの振りはゆらぎさんで。今の音源は仮録だから本番で歌うのが楽しみだあ」

そのまま三毛縞が今後のスケジュールを言うので、そのまま頭に叩き込む。あんずは明日の夕方退院。今日中に形にして明日最終調整だという。あんずを会場に連れ出すのは夏目がやるという。三毛縞がやる案だったらしいが、蓮巳に止められたらしい。そりゃそうだ。屈強な男がっていうか、三毛縞なら抱えあげていくだろうな。前科者。思考を飛ばしていると、夏目が会場は?という。その問は蓮巳が病院の中庭だと告げる。どうも天祥院がらみで以前なんかあったらしいし、天祥院が俺の企画書を使って業者発注だとさ。俺以外はそんなに悩む必要もないらしい。ええこった。参加希望の『ユニット』が多いので、蓮巳の手で第一弾と第二弾に分けてやる。と今聞いた。そりゃこの人数だと狭いわな。とりあえず俺は、ここのレッスンをして、放課後に再度レッスンを必要性があるらしい。まぁ、接触事故を危惧した結果だという。それは大事だと俺っていうか経験者は思う。っていうか。
これ以上事故なんておこされてたまるかっての。と一人呟いて、蓮巳の声を聞きながら、ぼんやりと回りを見回す。羽風がなんかいってるが、知らん。とりあえず聞こえてる分にあんずがどうこう。言ってるので、お前は俺の前。はしっこに設定しようと決定した。とりあえずレッスン始めるぞー。と俺の一声と仮録音の月永の音楽が同時に流れ出した。
一通り教え込んで一回流す。さすがアイドル。多少のずれはあれど、すぐさまに吸収していく光景はひどく面白い。間奏はソロとして扱うしそれ以外はフォーメーション移動にしてるので、本当に歌っているところのパフォーマンスをメインとして注力しつつ二三回音を回していると、隣の部屋に移動する時間が来た。
ふっと頭が揺れたが、ふんばって息を吐く。授業まであとすこし、蓮巳の一声に朝練が終了した。




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