俺と疲労と金色の風・励ましのウイッシングライブ。 2 





昼休み、あんずの噂がまことしやかにささやかれ出した頃。チャイムと同時に三毛縞に背負われて生徒会室に来ていた。おいあいつなんだよ、比較的軽い自覚はあるけど、軽々背負われるとか…背負われるとか…いや、いつもか。いつもそうしてもらってるのは、俺が足悪いからだからな!

「失礼しまぁぁあす!敬人さんはいるかあ?英智さんでもいいぞお?とにかく生徒会のメンバーに用がある!」
「三毛縞…貴様、声量を控え目にしろ、英智がいたら、心臓が止まっていたかもしれん。」

幸い、俺一人しかいないし、無用の説教かもしれんが気をつけてくれ。眼鏡を押し上げて俺と視線があった。青葉兄もいるのか、と言われて俺は笑うだけだった。平身低頭!敬人さん以外にも注意されたのは一度や二度じゃないんだけどなぁ。どうも俺は図体も声もでかくていかん!敬人さん、時間があるなら俺とゆらぎさんの話を聞いてほしい。なくても、時間を作ってくれるとありがたい!勿論割いてもらった時間はゆらぎさんが、穴埋めをする!力になろう。
なんて言い切るので、おい。と三毛縞の頭を叩く。俺は蓮巳とそんな話はしませーん!主張すると、「話を進めるな三毛縞」と、蓮巳は呆れたように首をふった。とりあえず【ハロウィンパーティ】が先日終わったばかりだからな。今は生徒会の仕事も多少落ち着いている。

【ハロウィンパーティ】の数日前は、生徒会が多忙を極めていて家にも帰らずに寝泊まりしていたものも多かったから、休める時に休まないと無理が祟って倒れる。どんなに能力値が高い人間でも疲労には勝てない。
言外にお前たちのことだといわんばかりに俺を見る。…ん?俺ってワーカーホリックだったか?踊るために仕事をしてるんだが?どうも多分俺に言われてるんだろうが、あまりピンと来ない。

「英智も【ハロウィンパーティ】の疲れでこのところ休みがちだ」
「ああ。、だから、生徒会には敬人さんしかいなかったんだなぁ」

でも、同じことは敬人さんにもいえるはずじゃないかあ?それとも、自分は大丈夫だと過信しているのかなあ?と追い討ちのように問いかけながら、三毛縞は俺を近くの椅子におろす。どうも話が長くなりそうな気がしてきた。

「心配無用、やることか終わったら早めに帰るりというか、お前たちが無遠慮に来なければ俺は片付けをして帰るところだったんだがな。」

間が悪い時に来てしまったな!申し訳ない!とか言う三毛縞に申し訳なさの欠片も感じない。じゃあ手短に話そう!敬人さんも知っていると思うが、あんずさんが過労で倒れて病院に運ばれてしまっただろう、どうもゆらぎさんたちに迷惑をかけてしまったと落ち込んでいるみたいでなあ。そこで、あんずさんを元気付ける目的でライブを開催したいんだが許可がほしい。

たかだか『プロデューサー』ひとりのために、とは言わんぞ、俺も報告を受けて何かしら出来ないか考えていた所だからな、お前たちの提案は有難い。とは言えライブを開催する場所や人員は…ユニットから一人が妥当性が。と蓮巳と三毛縞が話をし出す。うんうん、と頷いていたら蓮巳と視線がかち合った。

「青葉兄、お前は出るのか」
「もちろん、俺の好きなもんわかってんだろ。このライブの企画やらは全部発案に任せて、俺は振り付けと躍りだけをやるつもりだよ。」

ユニットの仕事を一旦止める。どうせ一人だし急いだ依頼もないからな。あんずの分もこっちに仕事を回してくれ。帰ってきたらしばらく休むまで三毛縞と条件つけているから、安心しろ生徒会。
そう言ってやると、仕事をどさっと渡された。おい、かなり増えたが?とか思いつつとりあえず時間を見つけて見舞いとちょっとの相談に行かねば。と算段つける。とりあえずしばらく俺の泊まりは決まった。すまんね、つむぎくん。お兄ちゃん、しばらくお家に帰んないから毎日ラッキーアイテム持ってきてね。んで、あんず。早く帰ってきてくれと心から願うが、アイツ。絶対に気にしてるから見舞いに行くべきなのか解らなくなってきた。想像したあんずがひたすら謝ってる未来と、俺が疲労で倒れる未来とどっちが早いか、解らなくなってきた。





とりあえずこっそり学校を抜け出して、あんずの病院に来てみた。いや、仕事の話をするわけではないがいや、するけどな。まぁ。あんずだけが知ってる案件とかあって漏れてたら大変だし。確認だけしたら帰る。ってか、うちの生徒が多いから多分連絡が行ってるはずだから、そろそろ蓮巳主導の生徒会から俺の捜索網が張られ出す頃だろう。時間は限りなく短い。会って確認してダッシュはできないが急いで帰る。そのつもりでいたのだが。受付であんずの部屋を聞いていると背中を叩かれた。

「ゆらぎにいさん。」
「あ…夏目か。一人か?」
「バルくんたちとさっき別れた所だヨ」

にいさんはどうして?と聞かれたので、取り残しがないかの確認だよ。と伝える。休めと言ってるのに、仕事のはなしをしに来てるから、都合がよろしくないんだよな。と空笑いを浮かべる。そういえば、センパイからにいさんが居なくなったって連絡が来たけド?と夏目が携帯の画面を差し出してくれたので、遠慮なく見るとどうやら生徒会の方が連絡をいれたのに見つからないから探してるんです。という内容に、げ、と声が出たが、断じて俺は悪くない。生徒会のことだから、GPSやら使い出すのももうすぐだろう、と判断する。

「そういえば、ゆらぎにいさんは、あれに出るんだろウ?」
「そういうのは俺の監修で、俺も踊るよ。」

ライブなんて俺の大好物からな、譲らないさ。と言うだけ言って、俺、あんずのところに行ってくる。と告げて夏目と別れる。先ほど聞いた部屋番号にたどり着いて、部屋にはいると。あんずが驚いた顔をしてこっちを見ていた。

「青葉先輩!」
「よ、過労だって聞いたけど、安心した。どーせお前のことだから早く帰しても家帰っても裁縫やらなんやら、してたんだろ?ま、いいけど、無理すんなよ。」

ベット横の椅子を引き出して、腰をかけるとあんずは申し訳なさそうな表情でこちらを見ていた。すいません、と微かに聞こえたので、気にすんな。と返しておく。帰ってきたらゆっくりおんなじ位の仕事量ふってやるよ。なんて加えると、そんなこというの先輩ぐらいですよ。とクスクス笑い彼女は言う。まぁ、ほかはあんまりなんもしてないもんな、だからそういえるんだって。俺はやっぱあんずが居ないとしんどいし、お前の場所ぐらいすぐに開けてやるって。俺は元来アイドルだし、成績のために補佐的なのやってるだけだしさ。帰ってきたら俺は一旦交代で休憩…いや、アイドル専念するから気にすんなよ。
軽口を叩いてると、あんずはでも、とか言い出す。から、説得材料として、俺が三年でユニットは俺一人なこと。俺はやりたいことがあるから、その準備もあることを説き伏せる。

「やりたいこと、ですか?」
「五奇人と一閥の俺で、一曲だけでもいい。生徒会っていう法の目をくぐってみんなで立ちたい。」

前に立とうな!って約束した矢先に事故にあってな。そっから皇帝様が動き出してしまったから、できなかったんだよ。ただ、俺のメンバーが見てみたいよな!って言ってたのを叶えてやりたいから、あいつらを特等席に置いて、俺はこんだけ踊れるようになったんだぞ?って、やりたいんだ、俺なりの返礼祭じゃねえけど。まぁそんときは俺もプロデュースしてくれよ。って今の全部は内緒な、あんずが帰ってきたら休憩するから!って三毛縞と話をしてるからばれたらやべーんだっての。と聞かせると任せてください。なんてあんずが笑う。
気を揉んでるかと思ったが、たぶんそう考えるのは明日以後だろう。と俺は自分の経験から判断する。2日3日となって自分の場所が不安になるのだから。ちらりと窓の外を見ると、車から守沢とか三毛縞とかが走って駆け込んでくるのが見えた。そのなかにつむぎも入っている。もうばれたか。と呟いて、さてと。と話を切り替えよう。

「お前が抱えていた仕事の話をしに来たんだが、追っ手が来ちまった。」
「もう先輩なにしてるんですか?」
「黙って学校から逃げてきたんだってば。教師や生徒会よりお前の仕事は俺が把握してるのは周知の事実だけどさ、お前の仕事を俺が知らないとかの漏れがないか確認しにきたんだよ。」

まぁ、ゆっくり休めって言われてんのに、仕事の話を持ってくるのは申し訳ないけど、漏れがあったら信用問題にもなるからな。悪いが三分ほどですます。俺も逃げなきゃならん。と言うと二人で手早く話をまとめる。まとめ終わる頃につむぎに見つかって、学校に強制送還を食らうのであった。…俺、前にセコムって言われたけど、今回はつむぎのほうがセコムじゃないか?そんで、だいたい横につむぎか三毛縞か守沢がつくから、ほんと動けないんすけど。とかいいつつトイレから脱走したりする。そして蓮巳にどやされる。んだかな。




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