孤星、はろーはろーあんのうん。 3 





踊る位置でさえ全部決めて、翌日。指定した場所に、守沢が先に柔軟をしていた。俺を見て、やぁ!と手を上げるので、俺も片手をあげてから、部屋に入る。部屋の隅に持ってきた荷物を置いて、俺も柔軟に入る。

「おはよう、青葉。」
「おはよう守沢。」
「昨日、練習が終わってから仙石からお前の様子がおかしいと聞いた。」
「刺された案件の話を思い出してだよ。気にすんな。」
「気になって出てきた口か?」
「そうだ。お前には誰もいないからな。」
「まぁね。その分。こうやって誰かと組んで、同座させてもらってるんだけどね。」

カラカラ笑って股関節を解いていると、守沢が背中を押すか?と聞いてくれたので、強めによろしくー。と伝えれば、ほんとマジ強い目に押してくれるから、痛気持ちいいぐらいの感じで守沢は押す。

「膝はどうだ。最近。」
「忙しさにかまけてリハビリしてねぇから、進んでねぇよ。でも、踊り続けるとはテレプシコーラに誓っちまって、赤い靴を履いてるからね。これからも踊り続けるよ。」
「……そうか。」
「いいんだよ。俺がそうしたいだけだから。」

俺が勝手に傷ついて、俺が勝手に治っていくだけだから。お前たちが気にするこたぁねえよ。そういうと、守沢はため息をついていたのを聞かなかったことにして、基礎練習始めようぜ!と流して二人で踊っていると、だんだんと人が集まってきたので、楽曲が終わると同時に流星隊との合同ライブの配置と振りを付け始める。

「今回、流星隊とやろうと思っているのは、戦闘だ。いや、戦争を模したショーだ。」
「戦争?」
「そうだねぇ。どっちかっていうと、戦争に旅立つ前にやる儀式めく方向だから、ハカとかそっちのほうっていうとイメージしやすいんじゃねえかな。」

民族的で鼓舞する演技なら、俺も、『流星隊』も問題なく進めれる内容じゃないか。そう提案すると、守沢は少し考えて、いいんじゃないかとゴーサインが出たので、進めようかと思考を巡らせ出すと、仙石が手を挙げた。

「なら、拙者たち『流星隊』がゆらぎ殿を応援するようにしたいでござる。その方が物語性も立つと思うのでござる。」
「うん。それで続けて。」
「『流星隊』は応援するのもユニットのカラーで、『HestiaCraft』のゆらぎ殿を応援するような構図もいいんじゃないかと思って……」
「へぇ。」

仙石の言い分を聞いて構図を浮かべてみる、方向的には会ってる気がするので、問題はない気がする。多少の配置や諸々を変える必要はあるけれども、問題はないし、戦闘の方向性を考えなくていい。シーンカットも思い浮かべて、それでいくか。問題はなさそうだ。

「なぁ、俺、応援されていいのか?」
「今回の企画書を見る限り、ちゃんとした『HestiaCraft』の支援計画とも読み取れるから、ありだと思うっスよ」
「……うん?そんなこと書いてたか?」
「かいてましたよ〜?」

うっそ、まじどこに。えっと、3ページ目の『スタプロ』から『ヘスクラ』へ。というところです。高峯に教えて貰って、見るといたずら書きのような付箋で書いていた。君もそろそろアイドルの道を歩きなさい一閥だろう?できるだろ。そんなニュアンスが読み取れる内容に、ちょっと頭を抱えたくなった。なんだよ、お前も素直にいえ。仕事減らせ。あと、こっちに仕事を回すなボス。言ってることとやってることが逆じゃねぇか。

「ゆらぎ?」
「もう、どいつもこいつも。仕方ねぇなぁ。仙石の提言通りにすすめっぞ。いいか、年下ども。」

俺がこうしてステージに立とうとするのも一種の復讐だって、天祥院は言いたいのかもしれないし、事実は違って単に俺に働けっていうのかもしれないけど、解釈なんて自由だろう。伸ばされてる手は拒否するつもりもない。
つむぎくんにだって、月永にだって、目の前にいる守沢や深海にだって手は伸ばされてたんだ。光はそばに、あったんだ。俺にもあったっておかしくねぇっていう話だろう?じゃないと俺の過去も浮かばれねえよな。

「仙石、お前が俺と一緒に踊ってくれよ。」
「拙者が!?」
「いいんだよ。お前がいい。」
「御意でござる!」
「ちょっと、仙石君をとられたみたい……」
「大丈夫、二年のガキども借りるから。」
「えぇっ、オレたちもっスか!?」
「身長差もいいかんじだしな。ほら、年長組は勝手にやってるだろうし。」
「じゃあ、ちあきとぼくでいっしょにやりますね〜」

驚く南雲の隣で、一緒にパフォーマンスするのが嬉しい深海が生き生きしてる。ほらな、と指させばちびっ子たちがドン引きしてた。拙者たち結構扱い軽い…?とか声が漏れてるけど……お前ら、人望なさ過ぎじゃね?俺が言えたことじゃないけどよ。






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