孤星、はろーはろーあんのうん。 2 






「で、守沢くーん。全部その賢いお口でぜーんぶ、後輩ちゃんに教えちゃってー。」
「青葉とライブができるのが嬉しくなって、だな。」
「ほーそれで。」
「お前を市中引き回しのようにだな」
「ほう。」
「ESビル内をほぼほぼ引きずりまわしました。」
「はい、正解。俺、始まる前からボロボロなんだけど?あぁ?」
「すまない、反省はしてる。」
「お前去年から変わってねぇよな。あぁ?」

しょっぱなから、ぶちぎれでお送りしてます。いん空中庭園。周りに流星隊の見物人を付けて、俺と守沢の対面ガチ説教。後ろでひそひそ言われてるけど、いいの。去年から俺も色々やらされてるんで!!

「はい、説教終わり。あー。奏汰と、ちびっこ。はい、おいでー。」
「ゆらぎーおひさしぶりです〜」
「はーい。一旦噴水ヘリでもいいから座らせて。」

いったん座って、全員に企画書を配る。全員がパラパラ目を通してる間に、概要をかいつまんで話をする。今回の企画の趣旨は民族での戦闘をメインとする。ついでに今俺もしゃべりながら考えてるから、多少話のつじつまがあわないかもしれないから、何かあったらその都度修正するから言って。そう言いながら、続ける。

「民族ダンスを主として、凸凹ペアコンビ動くからで色々と問題が発生するかもしれないけど、そこも手伝ってほしい。今日中に内容詰めて楽曲準備するから、明日レッスン室を借りようと思うので、またそこに集まってほしい。流星隊と仕事するの久々だから勝手が違うかもしれないけど、それは言ってくれたら修正するし、ほかなんか質問ある?」
「青葉先輩、って仕事大丈夫なんですか?事務所経営とかいろいろしてるって聞いたんっスけど。」
「んーまーP機関関連の仕事が一杯いっぱいで、アイドルはロクに動けてないし、最低限の仕事だけはしてるけどーってかんじ?」

ここしばらく働いた記憶は、裏方仕事ばかりで、新人Pたちの模擬授業模擬アイドルとして企画書で動く練習してたりとか、そんなかんじで動いてるのでまともにライブをした記憶は薄い。模擬でライブしてるからしてるんだけど、そうじゃないんだよなぁ。

「とりあえず、久々のライブなので俺がめちゃくちゃ本気出すから、先に謝っとく。ごめんな!」

ちょっと高峯、嫌そうな顔しないで。俺がへこむ。とか思いつつ、一旦踊り始めるけど誰か練習する?と問いかけると、仙石だけが手を挙げた。どうもそれぞれ用事があるらしい。明日の打ち合わせ時間を全員で共有して今日は解散することになった。
仙石と俺と残された二人で、だらだら歩きながら移動をする。

「ゆらぎ殿と一緒にライブができるなんて、あの病院のライブ依頼でござるな!!」
「そうだっけか。色々案件抱えすぎて俺もあんまりはっきり覚えてないんだよなぁ。音源聞いたら思い出すんだけどさぁ。」
「あまり外に出られない分、そういう喜びがひとしおでござろう」
「んだねー」

とか、そんな話をしながら練習部屋に入って二人で柔軟を行ってから踊り始める。久々に踊るが故か、楽しくていつもの基礎練習か二人でこなす。アクロバット慣れしてるのか、ぐるぐる回っても目を回さないのがさすがだなぁ。って思うと同時に、『Diana』の最初の頃を思い出した。鮮明に覚えてて楽しかったのに、あいつらにとっては苦痛だったのだろうな。とぼんやり思いながら情景を見つめる。軽口をたたきながらも、目を回したことを報告してみんなでゲラゲラ笑う。俺は昔からトランスやら儀式の舞踊で慣れてるので気にはしてなかったけれど。これがもう5年ほど前になるのかと考える。あいつらに嫌われてたけど、どうだったのかなぁとか思考を遠くに飛ばしていると、仙石の慌てた声が聞こえて視界が急にクリアになった。

「ゆらぎ殿、どうしたでござるか?膝?膝が痛むでござるか?」
「…はい?」
「様子がおかしくて、声を掛けたらゆらぎ殿が泣き始めて」
「俺が泣いてる?」

自分の頬を撫でて、汗とも似たような跡が二つ。泣いてたんだと他人事のようにとらえてしまう俺もいた。急に泣き出して反応無かったらそれはびびるよな。事実を認めて、さっさと涙をぬぐって、仙石に謝る。

「昔のメンバーとの情景を思い出してさ、泣きそうになったんだよ」
「『Diana』の?」
「そう。俺たちの基礎練ずっと横合わせの意味兼ねて、ピルエット回ってたんだけど。最初みんなで目を回して気持ち悪くなったりしてさ。楽しかったんだよなぁ。」

まぁお前らは俺と同じ道を歩かないだろうし。そう言いながら地べたに座る。杖がないので、単体で立ってるのが、まだまだしんどいのだ。リハビリそんなにしてないし!最近!

「将来、お前らが千秋や奏汰を故意的に事故に巻き込んだりしないだろ?」
「え?」
「はっきり明言は受けた記憶はないけどさ、お前聞いたことない?守沢とか奏汰から俺の膝の原因。」
「どんな事故だったかは聞いたことはあるけれども。」
「トップサスが落ちてきたんだ。それに巻き込まれてね。」
「ひっ。それは……」
「お前らは、守沢に腹立ったりしてもさ。そんなことしないだろ。」

幸せなことだよ。立派な絆があるだけ。幸せに見えるよ。お前らは、俺にないものを持ってるから羨ましいんだよね。そんなことも知らなかったから、たのしかったなぁ。
ピルエットで目が回ってしまったからどうする。何をすればましになるか。あれはどうだ、これはこうだった。そう色々やっていくのが楽しかったのに。一つこぼしたら、すべてが連鎖するように悲しい気持ちが沸き上がる。あの頃は、楽しかった。すべてが輝いて見えた。

「でもさ、もう泣いてらんないんだよ。前を見て歩いて行かなきゃ、やめてったあいつらの分までさ。仕方ないよな。これが俺なんだもん。」
「ゆらぎ殿。それは、なんだか違う気がするでござる。」
「そう?でもいいんだよ。俺は、自分の赤い靴を履いてなきゃ許しはしないんだよ。」

俺の罪はこんなだよ。すべてを踊りに優先したが故の孤独さ。結局一人なんだよな。だから、俺はずっとこの罪を背負うんだ。みんなで『Diana』を降りて、結局俺はアイドルすら辞めれずに踊る道を探してる。
また零れ落ちそうになる涙を無理に擦りとる。

「お前はこんな風になるなよ。仙石。こんな思いをするのは俺一人で十分だ。」
「違うでござる。困った人がいるなら、助けるのが我ら流星隊でござるからして。」
「いや、俺は困ってはない。すべてに諦めた人間だよ。」

最近忙しかったからかふと思い出してしまっただけだよ。悪かったな、仙石。このまま練習続けるけど、残るか?休憩しに外いくか?そう問いかけると、多少迷ってから仙石は頷いた。多少困惑した顔で目が泳いでいる。

「なら、残りの終わりまでよろしく。……あぁ、でもな。ソロでよかったとも思ってるから、さっきの話は忘れてくれ。それか、なんか教訓として胸に秘めてたら後世に伝えてくれたらいいし、気を取り直して踊ろうぜ。俺は踊ることしかできねぇからな!」

そう促して踊る。どうも仙石の顔は晴れてないので、残り時間まで使い切って俺と仙石は別れた。仙石が離れて、もう一度部屋を予約を改める。体は十二分にあったまったので、先ほどの記憶を追い払うように一心不乱に踊ることにした。
踊りまくった結果。民族と流星隊を混ぜるなら、きっと戦いの歌じゃないだろうか。そう行き着いた結論だった。



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