孤星、はろーはろーあんのうん。 1 






実に困った。我が事務所『HestiaCraft』はP機関支援を主としてる事務所なんだけど。っていうか、P機関に依頼の行く仕事を精査したりだとか依頼主の調査や優遇したり、新米Pたちの教育研修期間も兼ねてたりするのがこの事務所。ゆえに、新米Pの企画書を実行したりするアイドルが必要で、そのアイドルも俺一人。……ぶっちゃけ、体が足りてはない。事務員会計員も全部俺なわけだけど、まじで体が足りてない。
のだが、ボス天祥院英智から仕事しろって言われてる。研修と調査で体が開いてないんだけど、かれこれ【盂蘭盆会】【MDM】以後アイドル仕事してない。そろそろしたいのは本音。
P機関に回す仕事をボスから俺が一つちょろまかしてしまう許可をもらったので、さっさと行動を指定しまおう。俺一人でライブは無理。なので、さっさとライブを決めて協力者を募ろう。
依頼としてガンガンくるので、日夜届く企画書に目を通す。

「お、これいいんじゃない?」

依頼してる会社も問題なし、ESビルへの優良物件。少し変わり種のライブを持ってくるので、それはそれで見てるのが楽しい。が、今回は俺がやるやつだから、比較的膝へ優しい奴。そんな条件で選んだのは、六人で出るライブの物だった。六人で出たら一人づつの負担が減るからね。まぁ、負担感じないけど、腹刺されて以来腹筋が多少弱いんだよなぁ。ぼんやり考えてボスに提出しようと思ってエレベーターに乗ろうと思ったら、仙石がいた。

「ゆらぎ殿!」
「お、仙石じゃん。久しぶり。元気?」
「それはそれは、今日はどこに行くのでござるか?」
「俺のボスに用事、スタプロまで。」
「ボス……?」
「俺の事務所は四事務所の下に位置してるからね。」
「ゆらぎ殿って、いったい何の仕事をしてるのでござる?」

首をかしげるので、俺の概要を説明する。P機関の下請け事務所。ライブのイベントは俺が精査してP機関に通して、各事務所に振られる。俺はアイドルとP機関の下請けですからねー。ざっくり説明してると、そういえばゆらぎ殿の事務所は一人で運営してるのでは?と投げられて肯定すると、すごくビビられた。なんでかなぁ。そんなビビることねぇとは思うんだけど。俺の過去が特殊すぎるのかと納得して、なかったことにした。そうこう話してると、スタプロのフロアに到着する。仙石と別れて、奥の方に進むと天祥院の部屋の部屋をノックもそこそこに中に入る。

「天祥院いるー?」
「やぁ、ゆらぎ。あれ、持ってきたのかい?」
「そう。だから、ちょっと打合せしようぜ。」

持ってきた企画書を揺らしたが、天祥院は笑顔でこっちに出てくれ。と捨てられた。…うん、俺のちょろまかす権利は?と問いかけるが、そんなものあったか?としらばっくれられた。おい!天祥院。詰め寄るけど、事情が変わったんだよ。だから、これに出てくれと書類を突き付けられる。ざっと受け取って、近くの椅子に腰を掛けて、書類をめくる。
民族凸凹ライブって書いてるんだけど、おい、天祥院?疑問形で書類と天祥院を交互に見ると、いいでしょ?と言う。俺の膝に対しての嫌がらせかよ。だとか思う。

「ゆらぎもその膝じゃあしんどいから、『流星隊』と一緒にどう?」
「なんか、お前、俺にそういう厄介な手回しすんのどうなの?」
「ゆらぎは僕の手足だからね」
「うん、多分その認識改めたほうがいいぞ?俺は、踊れるならどこでもいいんだけど。」
「ならいいよね。」
「その人の話聞かないのどうかと思うぞ、お偉いさん。」
「千秋も呼んでるからもうすぐくるんじゃないかな?」

お前ほぼ確定じゃねえかよ。あきれていると、守沢がすっ飛んできた。

「天祥院!呼ばれたから来た!」
「おう、素直だな。」
「仕事の依頼だと聞いたからな。どんなヒーローショーだ?」

やめろ、俺の仕事をヒーローショーに変更するな。持ってた企画書を渡すと、なるほどなるほど。と頷きながら、守沢は企画書を見ている。一通り目を通し終えたのか、面白そうだなと声を落とした。

「凸凹と書いてるから、ペアなんだろう?」
「ゆらぎと一緒に出てほしいんだよ。千秋。」
「青葉とか?」
「民族のライブはゆらぎが一番精通しているからね。どうだい?」
「そうだなぁ。青葉がいるなら、かなり心強いな。民族系の見分はないに近いからなぁ。」
「話が長引いてくるから、守沢。座れ。」

ぽすぽすと俺の隣を叩いて促せば、すっと隣に腰を下ろした。天祥院は、どうかな?と首をかしげて問いかけと同時に、守沢が食いつく。圧が強い。近い。唾飛んできそうな勢いで、俺に寄ってくんな。

「青葉が頑張ろうとしているなら!俺も俺たちも手伝うぞ!」
「わかったから、ステイ!!ステイ!!近いぞ!」
「おお、すまない。青葉がライブに出ると聞いて感動したんだ。」
「うん?」
「わかった、さっそく練習のために打ち合わせをしよう!ちょうどみんな来ているんだ」
「どっからつっこんでいいんだ?人の話を聞いてくれ」

お前そういう事よくあるよな。前からか。守沢は俺の手を掴んで立ち上がらせて、さっさと出て行こうとする。まって、お前俺が膝悪いの去年から知ってるよな?人の話を聞け。俺の主張を聞いてからか、一瞬足を止めて思い出したと言わんばかりに手のひらを打ってから、俺を米俵を抱えるようにして飛び出そうとするので、天祥院が一瞬呼びかけた。天の助けかと思ったんだけど――

「――さっきの話は、千秋も出てくれるっていうことでいいんだよね?」
「勿論だ!青葉を借りていくぞ」
「ゆらぎもアイドルだから、しっかり舞台に出してあげてね」
「あぁ!」
「おい、天祥院油を注ぐな!」

――悪化した。守沢はウキウキともとれるぐらいに、加速して空中庭園へと走りだした。おいこら!!ちょっと待て、久々だから気持ち悪い!!うえっ。





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